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谷口正和 プロフィール

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2011年2月 7日

肉眼を超えた眼。

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京都の美術館「何必館」で、木村伊兵衛の写真展を観て来た。

木村伊兵衛はご存じの通り、戦前から戦後にわたって、

魂を揺さぶる写真を撮り続けてきた写真家である。

同時代を生きた土門拳とはリアリズム写真において双璧をなす。

木村伊兵衛の作品からは、モノクロ写真を通して、

大正、昭和の日本が豊かな空気感を持って立ち上ってくる。

ある意味、カラー写真より、はるかにリアリティがある。

 

なぜだろうか。多分そのさりげないが見事な構図の作り方と

日常のディテールを切り取ったモノクロであることによって、

想像力が刺激されるからだろう。

今の時代は、ほとんどのコミュニケーションが視覚に頼っており、

コミュニケーションの80%は視覚だと言われている。

3Dの登場などによって、

それはたぶん80%をはるかに超えているだろう。

その分、想像力が削り取られているとも言えるのだ。

想像力とは何かを、私たちは再度、

この木村伊兵衛の写真によって問いかけられる。

息を呑む秋田美人「大曲おばこ」、

太宰治の青春時代を彷彿とさせる「秋田市仁井田 青年」など、

ここには単なる懐かしさを超えた、

ある時代を生きた人々のこころ、精神が見事に切り取られている。

肉眼を超えた表現が確かにここにある。

 

この木村伊兵衛展は、3月6日まで、

京都の何必館・京都現代美術館で開かれている。


「何必館」の館長は梶川 芳友氏で、

木村伊兵衛をはじめ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、

ロベール・ドアノーなどの写真を蒐集してきた方である。

梶川氏もまた、蒐集という行為で、芸術に殉じている。

 

 

 

 

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