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2016年9月28日 The Little Mermaidニューヨークでは美術館も移動・再編をし、パーソナルミュージアムと呼べるような小規模なものに至るまで、多彩にその頭角を現し存在証明も重ねつつ新しい街角と潮流を作り、街そのものをミュージアムに変えている。 あちこちでアーティスティックポジションに手を挙げ、未来に向けて変革と創造を断行するアーティストやミュージアムの存在が、ニューヨークという街の変化の特徴だと言える。 パーソナルセレクションを軸足としたミュージアムの中で、この草間彌生の『The Little Mermaid』という絵本を見つけた。
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの原作に基づき、イラストレーションは彼女のセンス高い解釈でオールモノクロームで構成され、アンデルセンと草間彌生の共作による新たなビジュアルブックという印象を受けた。
童話の人魚姫は、自らのことであると見切って自分自身の自画像に引き寄せ、そこで見つかる時代の感受性を再発見している。 なかなか見つけられない絵本に遭遇できた幸運に感謝している。 2016年9月21日 文化と芸術の経済学この度、新書谷口正和著『文化と芸術の経済学』(ライフデザインブックス刊 700円)を上梓しました。
同質類似から脱却をして次のシナリオを示すための軸足がタイトルに込められています。 暮らし方や生き方をも含めて、生活者それぞれが自分らしく生きるという社会に、全体としてパラダイムシフトしていく段階にある。価値観もそれに合わせて次のステージへと展開していく。 例えばファッションが不振だが、トレンドというものは時代の変化を追いかけ、その雰囲気の中で去年との違いを見出すものであり、自分らしく生きるということを踏まえればトレンドにこだわり過ぎるのはそれに振り回されているに過ぎないという見方もできる。 一人ひとりが自分らしさに気付き、それぞれのシナリオの主人公となり、価値の中軸を定めた人々は、自分自身がブランドであり商品だ。 一朝一夕にしてならずの個性や特徴を磨けば、高感度な美学や中長期を睨んだ思想哲学となっていくだろう。 こういう流れの中で独自性への認識を深めれば、個性がアートそのものとなる。あなた自身の固有と特徴の中にある価値観が共感連鎖する社会において、生活者はショッピングをするショッパーではなく、自己表現をかけて奥行きと高みに投資するインベスター、自己投資家ということになる。 今、エンドユーザーは消費から自己生産へと梶を切りつつある。その転換が地産地消やハンドメイドに対する要求も生み出し、自分の人生は自分で作るという生涯現役の認識とも繫がっている。 今ビジネスの価値フレームワークの中で問われているのは、標準化された個性ではなく、突き抜けた独自性である。2020プログラムもそれに重なり、自分の努力と圧倒的な時間を投資していくアスリートとしてプロフェッショナルサポートを受け、競争力を含めての覚悟は輝きを放つ。 どのようなビジネスにおいても時代が求める認識を本書では展開している。 2016年9月12日 「昭和という時代 木村伊兵衛展」何必館・京都現代美術館で10月30日まで開催されている「昭和という時代 木村伊兵衛展」。
昭和の時代風景と生活風景を作為ないシャッターチャンスで拾い上げた類稀なる詩人的美意識を併せ持ったのが木村伊兵衛その人である。 写真がアートの新しい領域の中で重要なポジションを占めている今日という時代の検証、その隙間に見えざる空気を読む。 木村伊兵衛はその最も優れたリポートプレゼンテーター。時代の写真家が引き受けるべきものは何かという課題を、高度な感性で使命に昇華させた人だと思う。 是非ご高覧あれ。 2016年9月 5日 THE PANCAKE KING
ブルックリンの街角で個人セレクトショップ店に立ち寄った時、 シーモア・クワストがイラストを手がけた絵本を見つけました。
彼は、ビジュアルグラフィックデザインのリーダーだったミルトングレーサーがプッシュピンスタジオを主催していた時のナンバー2として活躍されていました。
アメリカのビジュアルデザインの表現力の高さに感銘を受け、東急本店で開催したミルトングレーサーの展覧会のポスターを手がけさせていただいたこともあります。
アートと現代美術を掛け合わされたシーモア・クワストのイラストはリラックスしたカラーリングでコーディネートされ、当時、われわれの世代のイラストレーターの多くは影響を受けたのではないでしょうか。
懐かしくも、いまだなお、鮮度の高い絵本。 彼にパンケーキを焼かせたら、右に出るものはいない。
ニューヨークのお土産話として、お受け取りください。 |