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2017年7月11日 ジャコメッティ キューブと顔
この本はパルコ出版で、1995年に発行されたものである。
著者は、ジョルジュ・ディディ=ユベルマン。 1953年生まれ。パリの社会科学高等研究院で「視覚世界の人類学」を担当された人物。
パリの現代美術館で開催のジャコメッティ展のために出版された書籍で、 それを、私の義理の弟である石井直志が翻訳を手がけた書籍。 しかし、その後、肝癌を患い、48歳という若さで亡くなってしまった。
ジャコメッティが今、再び注目され、エキシビジョンイヤーとして広がりを見せている中、 早稲田大学文学部でフランス文学の教授を務めていた彼が残した成果の一つと言える。
20世紀、フランスは芸術の階段を駆け上っていく時代。 重要なステップとして、キューブという概念をジャコメッティが作品の中で表現した。 球体に込められた哲学的思考は、シンボライゼーションとして思考のバックヤードが潜在化している。
彼を評価したのはジャン=ポール・サルトル。 芸術は本来、表現の構造を超え、その内面で何を伝えようとしているのかが、 ジャコメティが登場したあの時代の思想と哲学に対するプレゼンテーションとなった。
絵の上手い下手ではなく、そこに込められた価値に気づいて欲しい。
そのコアとなる思考を炙り出すためにジャコメティの翻訳を引き受け、 石井直志氏の翻訳にも、丁寧に思考された多面的な相互批評で成り立つ。 その幾何学的な思考の足跡は、ジャコメティ研究を立体化している。
石井直志氏は、政府交換留学生として、ソルボンヌに学び、 その結果、歴史と生活に匂いを持ち帰ったフランス文学者として何を紹介するかを私は注目していた。
真面目な男だった。 奥さんはフランス人で、彼女のサポートも非常に理解のあるものであり、 思い出を込めて、時代の流れがジャコメティに来ている今、身内の話であるが、皆さんに紹介できて嬉しい。
出版:パルコ出版 定価:3600円+税 |