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2017年7月28日

プラチナ社会への挑戦 小宮山宏

 


 

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長く続いた食べるために労働する以外生きるすべのなかった時代を克服し、豊かな社会を実現した人類は今、「自由であるからこそ叶えられる心も豊かな暮らし」を希求することができるようになりました。心もモノも豊かな暮らしの具体的な姿を見出すことが、先進国の目標なのではないかと考えています。

私は人が心の豊かさを感じ取る基盤は、社会の絆にあると信じています。絆のある社会に生活し育まれ豊かさを実感する、そんな社会を私は「プラチナ社会」と名づけ、プラチナ構想ネットワークを立ち上げ、6年目を迎えました。

世界的には「絆」が強いと言われている日本の社会ですが、昨今、それが失われつつあります。古代から続く稲作を基盤とした地域社会や、工業化を担い終身雇用に支えられた企業社会の復活に「絆」の再生を求めることは困難でしょう。「絆」を生み出すための参加型社会を新たに構築していかねばなりません。参加型社会の目標として、私はプラチナ社会を提案しています。その主役を担うのは、他の誰でもない私たち自身ですから、歩みを止めることなく進み続けていければと考えています。

[2016年4月1日発行『構想の庭』第2号  再録]

世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

 

小宮山宏(こみやまひろし)

1944年栃木県生まれ。東京大学工学部卒。東京大学総長退任後、2009年4月から三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問に就任。プラチナ構想ネットワーク会長を務める。専門は化学システム工学、地球環境工学、知識の構造化。著書に『低炭素社会』(幻冬舎)、『「課題先進国」日本』(中央公論新社)など多数。

 

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