|
2017年10月31日 塑する思考
グラフィックデザイナーからスタートした佐藤卓さんが本を出した。 商品開発やビジュアルデザイン系の仕事をして、粘り腰で仕事してきた一人だと思っている。
今回、彼がデザインとは何かについて考え、なぜデザイナーになったのか、その日常のメモを集めて一冊の本にした。
デザインは、まだまだ理解されていない。 デザイナーに対して、デザイナー自身が考えること、表現すること、その立脚点を体質化できていないままだ。
「塑する思考」という少し難解なタイトルも、 彼の良さでありながら、コミュニケーターとしての力みがある気がする。
佐藤卓さんらしさがある、 デザイナーとして考え、デザイナーとしてメッセージし、デザイナーとしての生き方、 このような認識をきちんと整理し、彼自身の姿から読み取ってもらいたい気持ちに私はエールを送りたい。
デザインの本質に対して、常に希求する気持ちを忘れずにいたい。 デザインの世界では、思考が縮んでしまえば、受注する体質が身についてしまい、 表現するバラエティも格段に減っていくようになる。
「見られている」という感覚を彼は、もう一度、押し戻し、デザイナーのあるべき姿とは何かを真正面から問いかけ続けている。
わかりやすく語りかけてくる「塑する思考」は、 乖離した思想と表現を繋ぐ言葉として重たい。
デザイン教育までの流れを作り、自分のやってきたことを階段のように語り継がれたメッセージが、 手紙のように綴られた本書をここに紹介します。
出版社:新潮社 価 格:1900円+税 |