囲み枠(上)
谷口正和 プロフィール

RSS

2017年12月26日

歌集『海の石 鳴る』

 

20171225132642.png

先日、青戸紫枝さんと食事をした際にいただいた。

青戸紫枝さんは武蔵美術大学の後輩であり、私の父からフランス語の学んでいたメンバーの一人、弊社の優秀なクリエイター小沼亜美さんの母上でもある。
表紙の写真は同じ画家である、ご主人が撮られたもので、タイトル文字は日本を代表する詩人であり、彼女のご兄弟でもある大岡信さんが書かれた。 

青戸紫枝さんは4歳まで沼津の千本松原の近くにおり、当時住んでいた和洋折衷の家を細部まで覚えているという。
家の近くの海岸では、砂浜の石が波で洗いざらいしながら丸くなる。
その石たちが重なり合って音を鳴らす様を「海の石 鳴る」と表現した。 

青戸紫枝さんは画家でもあり、美術の教員も引き受けられていた。
生活の中の日々の思いを、画家であるがゆえに視覚言語を用いながら、私情豊かな風景を彷彿させるような語らいを表現する。
日本は万葉の世界から短文・短歌、風景を写し取る「思いの写生」という構造の中にあったが、歌集(和歌)はその表現の総合性を圧縮した姿でもある。 

今は亡き大岡信さんや、自分を慈しみ、支え育ててくれた方々にそっと捧げるように形になった本書。
歌はその人の等身大であり、その人自身でもある。
そのような作歌理念というのは本当に奥が深い。 

様々な思いと見えざる出会いの中で、歌は見えざる赤い糸を通じて行き来する一つのリズムのようにさえ思えた。
出版おめでとう。

 

『歌集 海の石 鳴る』

出版社:ながらみ書房
定 価:2,500円+税

 

2017年12月18日

ビジネスパーソンのための戦略思考の教科書 『世界の一流企業は「ゲーム理論」で決めている』

 

20181218.png

社会革新が大きく動き、市場構造が次のステージに乗り換える時、我々は「ゲームチェンジャー」として機能する戦略的認識が求められる。

 

地球社会がNOと突きつけた項目に固執するのではなく、優れた未来構想力の組み立てに対して果敢に絵を描き、その通りに行動する体質を身につけなければならない。
情報を提供するためには変化を受信するプラットフォームが重要になる。
得意技登録制度を軸足に、”最終商品と最終顧客はあなた自身”という筋道を選ぶことが、これからのゲーム理論で重要だ。
そういう流れの中で、メディアは魅力的なストーリーとニュースを発信し、圧縮・選別を繰り返す好循環を生み出している。

この本は代表的な4つの大学(ハーバード、スタンフォード、MIT、デューク)が中軸になって、今日話題になっているアップルやマイクロソフトの企業を分析している。
ゲームは単なる遊びではなく、物事の進め方、勝敗の決め方、好循環を速度を持って楽しみに変えることを意味する。
古い概念の中に自分を縛ってきた人は、その呪縛を解くインテリジェンス、すなわち知らないことにもっと貪欲になる必要があるだろう。
知っていたことを使って何かをするのではなく、知らなかったこと、今後知ることをどう使うか。
情報も使用価値、それがゲームチェンジャーにとって最も重要な認識なのである。

 

『世界の一流企業は「ゲーム理論」で決めている』

出版社:ダイヤモンド社
定 価:1,800円+税

2017年12月11日

これからのビジネスを創るITの基礎 『未来を味方にする技術』

 

2017.12.12.png

 

 

従来の価値構造を確定してきたビジネス構造の解散が命じられている。

今日、我々は成熟した国の中で「次が起こらない国」という指摘がされていることを危惧すべきだ。
過去を引きずっているようでは新しいものは始まらない。
この構造の中で、行動するというチャレンジャー気質がない、または従来に安住し、そこに満足を得てしまっているのであれば、我々はすでに後進国に習って、生まれ変わる必要がある。

 

著者の斎藤昌義さんは1995年に起業し、スタートアップのためのソリューションベンダーとして経営に勤しんでいる。
今一番重要なことは新たな事業モデルに対し、行動を起こし、その結果をフィードバックしながら上手く育て直していくことだ。
そして既存事業の中でも、新規事業開発のような企業の新しいスイッチを入れる牽引力が求められている。

 

旧ビジネス構造でいくら合理主義だとしても、人材コストをカットしても、大手メーカーや銀行などは赤字のまま。
それは新しい収益と創造、課題解決など、新しいソリューションに対するトライアルがないまま、同じことをしていればそういう結果になる。
それをデータが顕在化しているにもかかわらず、我々はベンチャースピリット&アクションに対して学習・練習をしてこなかった。
その体質を学習し、世界から来た人にそのプラットフォームを公開し、自在に活躍してもらうように、大きくスタンスを変えなくてはいけない。

 

今、未来を味方にする技術はスマホを代表とするITのウェアラビリティだが、技術は目標を解決するための道具の一つだ。
最もクリエイティビティ溢れる世紀に生きる我々は、そのことに対してもう一度、目を向ける必要がある。

 

『未来を味方にする技術』

出版社:技術評論社

価 格:1,580円+税

2017年12月 4日

コピーライターが意識すべき考え方「言葉の技術」

 

2017-12-04.png

 

電通が出版したコピーライターのためのレッスン本をいただいた。

 

コピーワークを中心に、マスに対する提供側でありながらも一人一人の琴線に触れ、新しい興味や納得をどう形成できるかをテーマとしている。

広告の軸足の中心にあるものは理解の促進であるが、実際コピーワークはシンキングワークである。

 

言葉を考えるのではなく、考えを言葉にすることを本書は繰り返し指摘している。

企業が提供者側の論理から顧客志向に転換する時代の中で、現場のクリエイター達も従来の反転軸の中にいる。

クリエイティブビジネスで活躍している人は、アイデアを創出し、予見をチャンスにする練習だと見切った時に、汎用性の高い能力を身につけることが勝負どころ。

 

考えを深め、表層的なものを超えて、中側からフックを形成する。そして回数化によって残留効果を定着させる。

考えと表現をリンクさせることは、昨今のコミュニケーションの中で、コンセプト&クリエイションを一つの認識の中に置くことが大切。

 

メディアリレーションシップに対するメッセージとして様々なヒントになりそうである。

 

『言葉の技術』

出版社:朝日新聞出版

価 格:1,500円+税

HOME