長寿の森Nexthink-今日の中に現れる
高齢社会に関する様々な情報を丹念に集め、
それらがどのように連鎖しているかを読み解き、
そこに価値の新たな潮流をキーワードへしていくメディアです。
毎月40~50に及ぶ事象を分析し、
次なる価値観の発見につなげていきます。
<情報分析 谷口正和>
■小さな存在証明
地域における挨拶や語らいが、高齢者自身の存在を確かめる大きな機会となります。
人は、「今、ここに自分が存在していること」をどんな形であっても、
気付いてもらいたいのです。一人で暮らす人が増え続ける中、誰かが自宅を訪れて、
いろいろと会話を交わした日は、穏やかな満足感が心に広がっていくはずです。
そういった意味では、じっくり人の話を聞くという“傾聴”という行為は、
非常に意味のあるものになってきたと言えます。
【Nexthink vol.37】で着目した「シニア文化アワード」が、
個人の存在を最も際立たせるものだとすれば、
笑顔で挨拶を交わし近況を語り合うことは、
日常の中で最も身近に感じられる存在証明でしょう。
以前は当たり前のように家族の中で行われていたことが、
次第に果たせなくなってきた今、
新聞を配達する人や火の用心にちょっと立ち寄る人との語らいが、
「小さな存在証明」となるのです。地域に住むシニアに対して、
“語らい”という時間を定期的にお届けすることは、
地域社会における見守りを引き受ける構造へとつながり、
地域家族の時代を前提とした新たなネットワークの形を実現するでしょう。
<事例①>介護施設に入居する高齢者の話を聞いて、孤立を防止
認知症などで引きこもりがちな高齢者の話を聞く
傾聴ボランティア団体「みんなの輪」が
三重県度会(わたらい)町に新たに設立された。
1月から介護施設などへ足を運び、趣味や家庭の話を親身になって聞く。
事務局の担当者は、「高齢者はゆっくり話しを聞いてもらえる機会が少ない。
たわいない話でも心を込めて聞けば孤立を防げる」と話す。
メンバーは伊勢市や鳥羽市に住む男女約20名。(毎日新聞 12/27)
<事例②>傾聴ボランティアを被災地へ派遣、近隣との関係作りに一役
栃木県茂木町の社会福祉協議会は、昨年11月末に
傾聴ボランティア12人を被災地へ派遣、支援にあたった。
仮設住宅は様々な地域から人が集まっているため、コミュニティ形成は不十分。
訪れた先では、帰り際まで話が尽きないお年寄りもいたという。
傾聴ボランティアの派遣は、がれき撤去終了した後の第二段階のサポートとして実施。
仮設住宅への入居が進むにつれて、
被災者が求める支援は心のケアへと変化していった。(下野新聞 1/11)
<事例③>地域見守りネットワークの構築で、
高齢者が安心して暮らせる仕組みを
石川県は、「地域見守りネットワーク」の骨子案をまとめ、
高齢者の孤立を防ぎ、地域で安心して暮らせるための施策を盛り込んだ。
その中で、お年寄りの話に耳を傾ける
「傾聴ボランティア」の派遣を従来よりも拡大。
災害時に援護が必要な人の避難支援プランづくりで市や町を支える。
その他、新聞や郵便などの企業と提携し、
配達員が一人暮らしのお年寄りらの異常を発見した際に
自治体へ連絡する仕組みも構築する。(北國新聞 1/18)。