「作家が本を書くのは、
自分の考えや思想を後世の若い人に読んでもらい伝えたいから。
自分の本が売れてほしいのは、お金の問題ではなく、
1人でも多くの人にそれを読んでほしいということです。
私は小説一筋で90年生きてきましたが、
自分が好きなことを生涯できる幸せをあらためて感じており、感謝しています」
このほど開催された東京国際ブックフェアの基調講演
「『本』の送り手がいま考えるべきこと~変化を受け入れ新たな活力を!~」で、
作家・僧侶の瀬戸内寂聴さんが自らの人生を振り返りながらこのように語った。
瀬戸内さんは今年5月で90歳。
ただ、持ち前の新しもの好き気質は変わらずで、
このところは電子ブックに強い興味を持っており、自らも昨年『ふしだら』を発行している。
「いま世界は自然も社会も激変しており、これも印刷の歴史における革命。
すべては移り変わるというのが人生の基本で、
当然、本も変わるし、作家と編集者の関係も変わるもの」
そして、「電子ブックは、若者向けというよりもむしろ年寄りや病人向けだと思います。
軽いし、寝て読めるし、字も自由に大きくできる。
本には売れなくてもよいものがあるが、そういうものは残念ながら絶版になってしまう。
それを電子ブックでよみがえらせたいのです」
と電子ブックへの期待も語った。
また会場からの質問に答える形で、
「例えば、100年前の女性たちがいかにがんばり、
そうして得られた自由を今の女性がどう享受できているか、などをわかってほしい。
若者の特権は、“恋と革命”です。人は激しく生きなければつまらないと思う。
自分の人生は自分で守るもの。自分でつまらなくしてはなりません」とするとともに、
「人間は、自分の存在によって
自分以外を幸せにするために生まれてきました。
人は、殺してはいけないし、殺されてもいけない。
だから、戦争は許されないこと。
これを子供たちに伝えたい」と、作家としての強いメッセージを送った。