ヘルシーデザインクラブ(HDC)では、
健康や高齢社会の分野等に関するメディア情報を多角的に分析し、
その潮流を1つのキーワードにまとめ上げ、定期的に提示しています。
第18回目となったメディア分析会議“CANALYZE”より抽出された
メインキーワードは、「生き方が美学になった日」です。
世界最長寿である日本では、90歳、100歳を超えた人を
学びの対象として間近に見ることができるようになりました。
「素敵な生き方だ」と感じさせる高齢者は、
私たちに何を伝えようとしているのでしょうか。
そこには「意志を持って生きなさい」「楽しみの中に人生をおきなさい」
というメッセージがこめられているのです。
自分の意志と表現によって社会に優れた誉を形成するような生き方。
そんな生き方を貫けることの素敵さを、日々噛みしめながら過ごしているのです。
自らの意志のあるところを目指して、日々様々なことを磨き続けていることが、
美学といえるのではないでしょうか。
美学とは、洗練された姿を指します。
人生の美しさそのものが生きる上での課題になってくることを、
高齢社会が私たちに教えてくれようとしています。
どう生きるか、どう死ぬかは静かに連鎖しています。
生まれるときに美学を発揮することは叶いませんが、
人生の幕引きにおいては、その人自身の意志のあり方が、
美学となって表れてくるのです。
今回の分析対象となったメディアの中から、
いくつかの事例をご紹介します。
「106歳のスキップ 私は96歳まで、ひとのために生きてきた」
(昇地三郎著 亜紀書房)。
元福岡学芸大学教授の昇地三郎氏は教育者・学者の道を歩み、
障害時のための施設を運営してきましたが、
子ども、妻を相次いで亡くし96歳で独り身に。
そこからの人生が実にエネルギーにあふれていました。
年に1度の世界旅行と訪問先での講演活動をスタート。
2012年には、世界最高齢の世界一周を達成。
100歳を超えた人間がはるばるやってきて元気な姿で講演する姿が
多くの人の心をとらえたのでした。
「趣味は?」の問いに、笑顔で「人をびっくりさせること」と。
「医者が考える「見事」な老い方」(保阪隆著 角川oneテーマ21)。
アメリカの作家メイ・サートンは、「老いるとはすばらしいことだ。
若い時よりずっと自分自身であり得る」と語っています。
老後は人生の終盤に与えられるもっとも恵まれた時期であり、
人生の黄金期なのです。
ビジョンを具体的に描き、ひとつずつ意志的に行動へ移していくことで、
自分らしい生き方の実現に繋がると指摘しています。
これまでの経験という最高の人生知を生かせば、まだまだ花を咲かせられるのです。
「考える人」(新潮社)の特集・日本の「はたらく」では、
江戸川区一之江で居酒屋を営む名物女将・浅野静子(94歳)の生き方を紹介しています。
午後4時半、店のカウンターの中で煮込みが湯気をたてる大鍋の前が、女将さんの定位置。
戦中、戦後と70年以上、店を切り盛り。
女手ひとつで、年より2人と子どもを抱えて商売をしてきた静子さん。
「働き通しだけど、働き過ぎて死ぬってことはないのよ」と笑うのでした。
これらの事例を読み解く中から、強い意志を持って、
美しく人生を送ろうとする姿に、生きる意志や生き方そのものが
美学になりつつあるのだという点に着目。
キーワードとして「生き方が美学になった日」が生まれました。