2011.6.8更新 

「世界中で愛される

リンドグレーンの絵本」展

 

子どものころ、何度も何度も夢中になって読んだ『長くつ下の
ピッピ』。その展覧会が東京・世田谷文学館で開催中であることを
『ティールグリーンインシードヴィレッジ』の種村由美子さんから
教えていただいたので、ワクワクしながら行ってきました。

 

 ピッピポスター.jpg

 「世界中で愛されるリンドグレーンの絵本」展
2011年4月16(土)~2011年6月26日(日)
世田谷文学館
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山1-10-10
(京王線「芦花公園」駅南口より徒歩5分)
TEL.03-5374-9111 http://www.setabun.or.jp/

 

ピッピは強い。力もハートもすこぶる強い女の子。なんたって岩波
の表紙絵の中にまで「世界一つよい女の子」の文字が躍ってます
から。小学生の頃、ピッピは憧れの女の子でした。社会のルール
やマナー、価値観を超越した自由奔放なピッピのことを、とても
羨ましく思ったものです。それでいてあっという間にピクニック用に
おいしいランチを作れる。あるいは世界中から集めた珍しい宝物
を思いがけないところからひょいと差し出すこともできる。
とにかく一緒にいて飽きない不思議な女の子です。
「女の子なんだから」とか「おねえさんなんだから」といった
”世間”の妙な縛りに窮屈な思いをしがちな女子にピッピファンが
多いのも頷けます。逆に大多数の男子にとってはピッピのような
女の子は御しがたくやっかい極まりないので、敬遠する傾向が
強いのかもしれません。
そんなピッピの展覧会、小学生の子どもの頃に戻った気分。
というか、長い間はなれていた友と再会するようななんとも懐かし
く嬉しい気持ちで訪れました。 

 DSC_5940.JPGのサムネール画像

 正面のモダンな建物が世田谷文学館 

 

 DSC_5953.JPGのサムネール画像

ピッピシリーズの原画を展示してある展示室 

 

 リンドグレーン 001.jpgのサムネール画像のサムネール画像

主任学芸員の佐野晃一郎さん。館内をご案内
くださり、この展覧会だけでなく常設展や
世田谷文学館の活動までとても丁寧にご紹介
くださいました。

  

この展覧会は今から約65年ほど前にスウェーデンで誕生した
『長くつ下のピッピ』の原作者アストリッド・リンドグレーンの世界
を第1部、第2部に分けて展示しています。
さらに3つの特設コーナーが設けられ、館全体でリンドグレーン
が生涯にわたって書き続けた「子どもの憧れる生活」、「子ども
ならではの時代を謳歌する子どもたちの姿」を堪能できる構成
となっています。 

 


 

画像②ビヨーン・ベリイ画《アストリッド・リンドグレーン》制作年不詳 ©Bjӧrn Berg 使用後要削除.jpgのサムネール画像

 ビヨーン・ベリイ画(アストリッド・リンドグレーン)制作年不詳ⓒBjorn Berg

 

●ピッピの生みの親、アストリッド・リンドグレーンについて

1907年、スウェーデンの南東部ヴィンメルビー生まれ。
兄1人、妹2人の4人兄弟の長女。小さな牧場で家族と共に
過ごした子ども時代の経験が作品の下敷きになっている。
17歳で地元の新聞社の編集部にアルバイトとして携わり、
19歳でストックホルムに移り、秘書養成学校に通う。その頃、
当時ではまだ珍しかった未婚の母となり、長男ラーシュを産む。
スウェーデンでは戸籍を入れない出産は認められていなかった
ため、デンマークで出産。そのまま長男をコペンハーゲンの里親
に預ける。帰国後、24歳でステューレ・リンドグレーンと結婚し、
長男を引き取る。
1941年34歳のとき、長女が肺炎になり、病床の娘のために
『長くつ下のピッピ』のお話を思いつく。3年後、今度はアストリッド
本人が足首を捻挫。療養中にお話を書き上げ、長女の10歳の
誕生日プレゼントとして手作りの絵本にして贈った。
翌45年、その写しをラーベン&ショーグレン社の児童文学懸賞
に応募し、第1位を獲得、出版される。たちまちスウェーデン国内
で評判となり、『長くつ下のピッピ』は「子ども部屋に革命を起こした
作品」だといわれてきた。
やがて日本を含む外国でも翻訳が出版されるようになり、
今では70以上の言語、120以上の国で読まれ、1億3000万部
以上を売った。

リンドグレーンは子どもの権利や動物の権利の擁護者
としても知られ、あらゆる虐待に反対の立場を表明していた。
2002年にスウェーデン政府が彼女を記念して、児童青少年文学
賞である「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を創設。
05年に絵本作家の荒井良二氏が日本人初の受賞となった。

 

★展覧会の内容については
「世界中で愛されるリンドグレーンの絵本」展②に続けます。
(ミヤタ) 

2011.6.2更新

ゆうききよみ作 刺繍絵本

『どうして? どうして?』

  

刺繍絵本アーティストのゆうききよみさんが新潟から上京、
当プロジェクトを訪ねて渋谷の街まで来てくださいました。
そこで「きょうの絵本」はゆうきさんのほのぼのとしたなつかしさを
感じる作品をご紹介します。
 

『どうして?どうして?表紙』 01.jpgのサムネール画像          
『どうして? どうして?』
ゆうききよみ/作

 ★この絵本は新潟エリアでの委託販売となっています。
購入ご希望の方は、当ブログ宛てにご連絡ください。

 

「どうして あたしだけ おねえちゃんたちより
ちいさいんだろう。」という言葉で始まるこの絵本は、ゆうきさん
ご本人のお話です。
3人姉妹の末っ子だった「あたし」は、ふたりのおねえさんよりも
自分が小さいことが、いつもいつも不満でした。
3人で窓から外をながめようとしても、「あたし」だけ背がとどか
ないし、あかりをつけようとしても、「あたし」では電球のヒモに手が
とどかないし、きわめつけはおねえちゃんたちはランドセルを
しょってがっこうに行くのに、「あたし」だけようちえん。 

 

3人姉妹.jpg

 

うらやましくてくやしくてかなしくて。とうとうおかあさんに直訴
しました。
「ねえおかあさん どうしてあたしだけ おねえちゃんたちより 
おおきくならないの?」
するとおかあさんは、「すこしづつ おおきくなるんだから 
だいじょうぶ」と言って、柱の前につれていってくれました。
「ほら、すこし おおきくなってるよ」。
「ほんとだ」。きずの位置が前のよりすこし上になってました。

年下の小さい子どもが感じる、小さいことの不条理、不満。
背が大きくなることへの無邪気なまでの憧れを、手縫いのステッチ
でしみじみと描いています。とくに注目したいのが、
「あたし」の足
元。どのシーンでも、くすぶっている感情が見事に表現
されていて
思わず微笑んでしまいます。
少女が抱えるたわいもない不満ですが、あまりにも真剣なので
くすっとさせられながらもいつのまにか共感を覚え、
ああ、そういえば昔、自分にも似たようなことがあったなあと
なつかしくなりました。
おかあさんが面倒がらずにちゃんと向き合って解決策として背を
はかってくれるところがいいですね。

手書きの文字による「あたし」の短いつぶやきでお話は
進んでいくのですが、それがまた小さい女の子の心情にぴったり
はまってます。
絵はひと針ひと針、普通の縫い糸を使って描いています。
ポイントだけ違う糸をさし色として使っているので、繊細なステッチ
ワークが映えていて、いっそう豊かな表情が出せているのだと
思いました。

絵本の表現の可能性の一つを見せてくれた刺繍と手書き文字に
よる絵本。日常のひとこまをステッチで描く。針を進めるごとに、
遠い記憶がかたちになって残っていきます。
ゆうきさんは現在、新作の刺繍絵本を製作中。
次の作品もとても楽しみです。(ミヤタ) 

 

見開き絵本とゆうきさん 02.jpg

 

 

 

★ゆうきさんのインタビュー記事は
近日中にアップいたします。お楽しみに! 

 

 

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