2011.8.29更新



うらわ美術館
 
「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」②

 

うらわ美術館では学芸員の滝口明子さんから、ブラティスラヴァ
世界絵本原画展の成り立ちや特徴、日本人作家の応募・入選状況、
さらにはチェコ・スロヴァキアという土地について丁寧に解説して
いただけましたのでご紹介します。

 

ブラティスラヴァ図録.jpg第22回ブラティスラヴァ世界絵本原画展の図録
表紙を飾る絵はグランプリ受賞作品である
タシエス(スペイン)の「まいごの幼子」の一場面が
使われています

 

—日本の巡回展は、いつから、どのようなタイミングで
開催されているのですか?

滝口: ブラティスラヴァ世界絵本原画展(以下BIB)は1967年の
第1回展以来、チェコとスロヴァキアの分離で揺れた1993年を除き、
2年に1度スロヴァキア共和国の首都ブラティスラヴァで開催されています。
日本では2000年以降巡回展が開催されるようになり、現地開催の
翌年に1年間かけて日本各地を巡回します。
現在うらわ美術館で開催しているのは22回目のBIB2009の巡回展で
受賞者11名(うち1名は日本人作家)と出品した日本人作家8名の
原画作品、そして各国の出品絵本を展示しています。
ここで開催される前に2010年の夏から平塚市美術館、千葉市美術館、
飯田市美術博物館と飯田市川本喜八郎人形美術館(同時開催)、
足利市立美術館の4カ所を回り、うらわ美術館が最後になります。
次のBIB2011は今年9月1日あたりから現地での開催がスタートし、
日本には来年の夏にまたやって来ます。来年はうらわ美術館が
立ち上がり館となっているので続けて1年後の開催となりますが、
原則としては2年に1度の開催です。

 

—開催される美術館は毎回、同じところですか?

滝口: 中核となる美術館を除くとその時々によって違います。
うらわ美術館では2002年からずっと開催しています。

 

—BIBの審査基準は、すでに出版されている絵本であることと、
1作家につき原画10点だとうかがいましたが、展示も10点されるのですか?

滝口: 現地では、2×1メートルの決められたスペース内に展示
するという制約があります。たとえば今回、金牌賞を受賞された
智内兄助さんの作品は各1点が大きいものでしたので、展示が
難しかったそうです。

 

—賞の形態はどのようになっていますか?

滝口: 1位が「グランプリ」で1名、2位が「金のりんご賞」で5名、
3位が「金牌賞」で5名となっています。

 

—日本での国内選考の際、出版社からの強力なプッシュ
いったような影響が及ぶことはありますか?

滝口: それはまったくありません。あくまでも、(社)日本国際児童
図書評議会(JBBY)の呼びかけによって、各出版社から様々な
作品が寄せられたものの中から、5名の選考委員が国内選考を
行います。1国あたり15名までが応募可能ですが、今回日本からは
作家9名の作品が選ばれました。ちなみに今年4月にうらわ美術館で
展覧会を行った堀内誠一さんも審査員をなさっていました。

  滝口明子さん.jpg

 学芸員の滝口明子さん
北欧の絵本に出てくる妖精のようなチャーミングな方で
あまりにも”ブラティスラヴァ”に似つかわしくて
嬉しくなってしまいました♪

 

—ところで滝口さんご自身はこれまで絵本とは
どのような関わりをもってこられたのですか?

滝口: うらわ美術館の学芸員として5年ほどやっています。
実は専門は絵画修復で、以前は修復の仕事をしていました。
美術史の分野ではイタリア美術です。私がうらわ美術館に
入った年の夏に、美術館がBIB展を開催していましたので、
それ以来、本当に少しずつですが絵本のことを勉強してきました。

 

—ずっと絵画に携わってこられたのでしたら、
絵本もすぐに馴染めたのではないですか?

滝口: それがまったく違ったんですね。普通の絵ですと平面に
描いて様になればいいですし、サイズも制限がありません。
ところが絵本は見開きで1枚の絵を見せると、センターラインが
出来てしまう。また本を開くときの角度によって見え方が違って
きてしまう。絵画と同じように平面で見ていいなと思っても、
絵本になると残念に見えてしまうことがあって、難しいなと思います。

 

—印刷したときに発色が違ってしまうこともありますよね

滝口: 日本やアメリカ、イギリスなど印刷技術が発達している
国ならいいのですが、そうでない国もあるので、BIBでは各国の
印刷技術の格差を考慮して、絵本ではなく、原画による審査に
なっています。そのことによってより多くの国の参加や受賞の
可能性が広がるのです。

 

—そのための原画10点による審査というわけですね?

滝口: それと原語によるテキストの問題もあります。今回出品した
37カ国の作品それぞれの絵本には原語による文字が付いている
わけです。ところが本選では37カ国すべての原語を審査員たちが
読めるわけではありません。翻訳されたテキストは付いていますが、
やはり原語で読んでこその魅力、味というものがあるので、言葉の
壁を取り払うためにも原画に特化した審査になっているのです。
それでも審査上の課題はまだまだ残されています。絵本コンクールで、
絵本でこそ活かされる絵は評価されていないといったことなどに
ついては、苦心しているようですが残された課題です。

 

—そもそもBIBが始まったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

滝口: BIBが始まった1967年というのは、まだ東西冷戦構造が
あった時代です。そんな状況の下、世界平和のために、そして
次世代を担う子どもたちが読む、絵本の発展のために始まりました。
BIBにはとても熱い思いが根底にあるのです。

 

—ボローニャ展との比較になりますが、あちらは個人が直接応募できる
ことからも、クリエイターと版元とのトレードの場といった色合いが濃いと
思います。対してすでに出版化されている作品で国内審査を経てきた
ものを審査するBIBの最大の目的は何になるのでしょうか?

滝口: BIBに入選することでそれぞれの国でその絵本に興味を
持つ人が増えると思うのです。つまり自国の絵本をとりまく状況の
アップにつながっているのではないでしょうか。
チェコ・スロヴァキアという土地は昔から他国の支配を受けて
自国の民族性や母国語を否定されていた時期が長かったのです。
そうした中で起きた民族運動で自国の文化を子どもたちにいかに
伝えるかということで絵本は深く関わってきました。ですからBIBは、
平和への願いとともに各国の子どもたちに自国の文化や言葉を
正しく伝えるということを重要視しているように思います。
文化としての絵本を大事にするということをひしひしと感じますね。

 

—今回で22回目ということですが、受賞作、出品作の特徴や
傾向などでお気づきになったことはありますか?

滝口: 毎回感じていることは、重厚な作品が選ばれているという
ことです。海外の作家さんは自分の技術をスマートに表現される
方が多い。一見してその技術力がわかる絵が多く、そういった絵が
また好まれる。一方、日本の場合はもうちょっと子どもの目線に
下りよう下りようとしている、言ってみれば“へたうま”の絵を描く人が
多いように思います。

 

—長新太さんあたりからその傾向はありますね。

滝口: その通りですね。最近の日本の絵本は、長新太さんの系譜が
好まれているようですが、BIBでは受賞が厳しいのです。ただ、
“へたうま”というのは上手くなければ“へたうま”ではないんですよ。
その“うま”の部分がなかなか伝わりにくい。それで毎回、悔しい
思いをしているんです。たとえばささめやゆきさんの絵ですが、
海外の人にはこの絵の良さが伝わりにくい。でも、絵本の原画
として評価するべき点が多いと思うのです。
どういうことかというと、自転車がカーブを曲がる場面の絵を絵本
にして見ると、角度が付いてカーブが急カーブになってスピードが
加速されているかのように見ることができます。また映画館の場面
では、見開きで展開することによって、映画館の広さが強調される
という効果が生まれます。こういった平面だけでは分からない工夫が
なされているということで、秀逸な作品だと私は思うわけです。

 

 ささめやゆき.jpg日本からの出品作の一つ、ささめやゆきさんの「だんまり」。
絵本になったとき、このカーブはさらに鋭角になり
ものすごいスピードで通り抜ける絵が生まれます
ⓒささめやゆき

 

—たしかに原画だけでは分からない絵のチカラが存在しますね。

滝口: そうなんです。だからうらわ美術館では、必ず原画の近くに
絵本を置いておくんです。BIBの展示スタイルは、各美術館に
任されていますので、すべての美術館がそのスタイルとは限らない
のですが、少なくともうらわ美術館では絵本を見ていただかなくては
本当の良さが伝わらないと考え、そのスタイルでやっています。

 

 智内兄助.jpg

金牌賞を受賞した 智内兄助さんの
「ぼくがうまれた音」。絵本の文章は近藤等則さん。
瀬戸内、来島海峡の渦潮を聞きながら
生まれ育った
世界的なジャズ・ミュージシャンの文と画家の絵。
同級生だった二人の芸術家にとって処女作の絵本だそうです
ⓒ智内兄助

 

—今回受賞された智内兄助さんの作品は
そういう意味では海外の審査員にもわかりやすかったと言えますね。

滝口: 昭和の香りが色濃く、とても日本的であるし、海外の重厚な
作品にひけをとらない厚みがありますね。それでも国内選考で、
海外の基準に合わせて作品を選ぶ必要はないと思うのです。
今、日本の絵本で評価されていることを基準に選ぶということで
いいと思います。そしてそれこそがBIBの精神に沿うわけですから。

 

—今の日本の子どもたちが好きな絵本、大人が子どもに与えたい絵本、
それらが国内選考に残っていることが大事ですね。

滝口: 賞がすべてではない、文化としての絵本、ということに
尽きるのではないでしょうか。

 

★BIB2009その他日本からの出品作 

 あべ弘士.jpgあべ弘士「ねこのおいしゃさん」
ⓒあべ弘士

  

 

荒井良二.jpg荒井良二「えほんのこども」
ⓒ荒井良二

 

 

こしだミカ.jpgこしだミカ「ほなまた」
ⓒこしだミカ

 

  

スズキコージ.jpgスズキコージ「とんがとぴんがのプレゼント」
ⓒスズキコージ

 

 

 
高畠純.jpg

 高畠純「どうするどうするあなのなか」
ⓒ高畠純

 

  

つかさおさむ.jpgつかさおさむ「おばあのものがたり」
ⓒつかさおさむ

 

 山口マオ.jpg山口マオ「わにわにのおでかけ」
ⓒ山口マオ

 

 

うらわ美術館でのBIB2009年展は8月31日まで。日本の絵本と
世界の絵本、原画と絵本、それぞれを比較できる楽しい展示会です。
残り日数はあとわずか。ご都合の良い方はぜひ行ってみてください!(ミヤタ)

 

 

2011.8.19更新


うらわ美術館

 「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」①

 

こんにちは!私、インターンシップでお世話になっている
昭和女子大学3年のアキモトと申します。
絵本のチカラプロジェクトに参加させていただき、
ブラティスラヴァ世界絵本原画展の取材に同行してまいりました!

 

ポスター.jpg

「ブラティスラヴァ世界絵本原画展~世界の絵本がやってきた」
期間/8月31日(水)まで 場所/うらわ美術館
住所/さいたま市浦和区仲町2-5-1浦和センチュリーシティ3F
開館時間/10時~17時(入場は閉館30分前まで)
観覧料/一般 600円 大高生 400円 中小生 無料
休館日/月曜日 TEL/048-827-3215
http://www.uam.urawa.saitama.jp/

  

 CIMG1344.JPGうらわ美術館はJR浦和駅西口を降りて、徒歩7分
センチュリーシティビルの3階にあります  

 

 CIMG1345.JPG   木目を基調とした温かみのある受付エリア 

 

今回で22回目。
世界最大規模の絵本原画展
 

ブラティスラヴァ世界絵本原画展は、年に一度スロヴァキア共和国の首都
ブラティスラヴァで行われる世界最大規模の絵本原画展です。
今回は2009年に行われた第22回展に出品された作品が展示されています。
日本からは1967年の第1回展以来、1993年を除き継続して出品しています。
日本国内の巡回展は2000年からはじまり、うらわ美術館で最初に展示を
行ったのは2002年です。国内審査は各出版社から寄せられた作品を、
(社)日本国際児童図書評議会(JBBY)が選考委員5名によって出品作を
絞ります。選ばれた作品は原画がブラティスラヴァへ送られ、4日間にわたる
国際審査にかけられます。
出品条件は絵本がすでに出版されていること。1作家につき10点の原画と
その絵本(2冊まで)が審査の対象となります。2009年展では世界37ヶ国
から344名の絵本作家の原画作品2437点が出品されています。
その中から日本の智内兄助さんが金牌賞を受賞しました!  
 

 

 

 

 ★グランプリ(1名)
 タシエス画像.JPG 「まいごの幼子」  タシエス(スペイン) ⓒTássies
 鉛筆でのスケッチ画が展示されていました。
モノクロのスケッチ画は他の原画とも違った雰囲気でした
 

 

★金のりんご賞(5名)
 ピート・グロブラー画像.JPGのサムネール画像

   「色!いろいろ!」 ピート・グロブラー(南アフリカ共和国)
ⓒPiet Grobler
絵本には英語とスペイン語の2ヶ国語で「色」を賛歌する詩が
書かれています。水彩の色使いがきれい♪

 

 

 ★金牌賞(5名)
  智内兄助画像.JPGのサムネール画像

「ぼくが生まれた音」 智内兄助(日本) ⓒ智内兄助
 昭和の香りのする絵にあたたかみと
どこか懐かしい雰囲気を感じました 
 

 

CIMG1347.JPGのサムネール画像

第1部では受賞者11名の作品が展示されています。
壁面にはその原画が飾られています

 

 CIMG1353.JPGのサムネール画像

原画の近くには座って受賞作の絵本を手に取れるテーブル。
原画と絵本の違いを感じることができます。
原画には原画の、絵本には絵本の良さがあって
交互に見比べていると時間を忘れてしまいます

 

 CIMG1361.JPGのサムネール画像

 第2部では37ヶ国の出品国から1冊ずつの絵本と
国内選考を通った9名の日本人作家の
原画と絵本が展示されています

 

 

CIMG1381.JPGのサムネール画像

さらに特別展示として第3部では
スロヴァキアの隣国チェコ共和国の
家庭用あやつり人形を紹介されています

 

 

他国から支配を受けていた時代があるチェコの人々にとって、
自分たちの伝統、言語を次世代に伝える人形劇は、単なる
おもちゃではなく文化のひとつといえるでしょう。
また、うらわ美術館では、8月30日までの毎週火曜日・金曜日の
午前11時~11時30分の間、絵本の読み聞かせ会を行って
います。(自由参加、無料)
 

 うらわ美術館 046.jpgのサムネール画像のサムネール画像

   子供たちも興味津々♪

 

絵本の読み聞かせ会の時間を除いた8月31日までの午前10時~午後5時は、
創作コーナー「絵本の世界であそんじゃおう!」を行っています。(自由参加、無料)
自由に工作したり、絵を書いたりできるコーナーとなっていて
出来上がった作品は展示することも持ち帰ることもできます。
ブラティスラヴァ世界絵本原画は8月31日まで!
夏休みの時間を使ってぜひチェックしてみてください♪ (文・写真/アキモト)


★次回は学芸員の滝口明子さんにうかがったお話をご紹介します。
お楽しみに!
  

2011.8.13

板橋区立美術館

 「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」

に行ってきました④
 

 

前回に引き続きまして、最後の記事では
板橋区立美術館の成り立ちについてのご紹介です。
 

   

板橋美術館 014.jpg8/14までのボローニャ展! 

  

地域と世界をつなぐ板橋区立美術館

 

—板橋美術館はどのような経緯で設立されたのでしょうか?

松岡:1979(昭和54)年の5月20日に、東京都23区内初の
区立美術館として誕生しました。現在の板橋区立美術館は
「世界の美術館と張り合える楽しい美術館を作りたい」という
気持ちから活動しています。  
  

 

 遠くてゴメンのぼり.jpg

 私はこちらののぼりがとても大好きです♪ 

 


なぜ「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」を始めたのでしょうか?

松岡:板橋区立美術館では、開館当初から他の美術館で
扱われにくいテーマで企画を作って展覧会を行ってきました。
その一つが絵本です。
板橋区立美術が絵本の企画展を始めた当時、
東京の公立美術館で絵本を取り上げているところは
一館も無かったようです。
 

 

板橋美術館 014.jpg 今でこそ当たり前に絵本展覧会を見ていますが、実は…!?

 

—絵本を扱っている美術館が無かったなんて驚きです。 

松岡:絵本の原画を美術品として扱い、一般の大人が見ると
いうことは、実は意外に新しい習慣だと思います。
日本で初めてボローニャ展を開催したのは
兵庫県の西宮市大谷記念美術館でした。
当時、板橋区立美術館の学芸員が訪ねたときに紹介され、
1981年からボローニャ展を始めました。
絵本原画展自体が新鮮なものでしたし、珍しい東欧の絵本原画が
見られるということで注目を集めました。
東欧の絵本は面白い物が多いのですが、東西の対立の時代で
あったために当時は見る機会がありませんでしたから。
1989年に西宮市大谷記念美術館が3年ほど工事のため
休館することになったので、板橋区立美術館がボローニャ展の
開催準備の業務を引き取ることになりました。
その時から私が担当学芸員となり、ボローニャで直接交渉する
など積極的に関わるようになりました。 

 

—板橋区立美術館では、展覧会を行う他にどんなことをされて
いますか?

松岡:様々なイベントを企画しています。
その一つに「夏のアトリエ」という、作家を育てることを目標とした
ワークショップがあります。毎年講師を世界各地から招き
皆で一週間かけてじっくり作品を制作します。
日本各地から参加応募はたくさんありますが、
参加できるのは20人前後になります。
参加者には出版歴のある人たちもたくさんいます。
ボローニャ展に入選した人もいます。
美術館での教育普及事業で、専門家育成とはっきり打ち出して
いるのは珍しいと思います。
初めの年はスロヴァキアのドゥシャン・カーライさん※が来てくれ
ました。作品に対する姿勢がすばらしい方です。
「夏のアトリエ」という名前もつけてくださり、
ワークショップのすすめ方も決めてくださいました。
今でもそれを踏襲しています。講師になるアーティストによって
多少の変化はありますが軸の部分は変わっていません。
 

※ドゥシャン・カーライ…東欧を代表する絵本作家。

2009年、板橋区立美術館で
「開館30周年記念 幻惑の東欧絵本
ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラティスラヴァの作家たち」
が行われている。

http://www.itabashiartmuseum.jp/art/schedule/e2009-05.html

 

 

 

IMG_0030トリミング.jpg

真剣な語り声が聞こえてきそう……。

 

—特に積極的に行っていることはありますか?

松岡:絵本というものを通して様々なことが起きる出会いの場を
作るために、情報をどんどん出していこうと考えています。
ツイッターも始めました。絵本作家を目指しているのに子どもと
ふれあう機会の無いイラストレーターには、子ども向けのワーク
ショップの講師をしてもらいます。お互いに良い経験になります
から。

 

—来館者は区内の方が多いのでしょうか?

松岡:区内の小中学生全員に招待券を配布していますが、
小さい
お子さんがいる人にもゆっくり展覧会を見ていただくために
一時保育を行う日も設けています。一時保育を美術館で一番最初
に行ったのは板橋区立美術館です。
未就学児、小学生、中高生、大人までそれぞれを対象にした
イベントを行ってきましたし、今年は翻訳講座も始めました。
絵本には様々な要素があるので、人によってつきあい方も変わり
ます。だからこそ絵本は一言で説明出来るものではないのです。
ボローニャ展という軸を大切にしつつ、出来ることを考えていくこと
で、板橋区を世界とつなぐ役割を担っていると思っています。
講師も受講生も世界中からやってくるので、身近なところから
国際的なつながりを実感できる機会だと思っています。 

 

IMG_2910.JPGのサムネール画像

確かにボローニャ展へ行くと、
外国の方を見かけることが多いです。
美術作品への情熱って、いつの時代も熱いですね! 

 

板橋区立美術館の特徴はありますか?

松岡:板橋区立美術館は東京にあるということなどが関係して、
出版社の方やイラストレーターさんなどの絵本関係者が
非常に多く訪れます。
ボローニャ展の開催期間内限定でオープンする絵本のショップには、
国内で探してもここにしかない絵本がたくさんあります。
それを目当てに来館する方もいらっしゃいます。
ここにくれば何かがあると思っている人たちに対しては、
こちらもできるだけ求められているものをお渡ししたいと思っています。
とてもありがたいことに、小さいときに板橋区立美術館で遊んで
いた子どもが、母親になって遊びにくることもあります。
小さな建物ですが、美術館ということで、
地域に密着しているところに意味があるのでしょう。
実は来館者は区外の方も多いのです。
あるとき韓国の方が団体旅行で来館されたことがあります。
「イタリアは遠いから、日本にボローニャ展を見に来た」と
言っていました。見たい展示があれば外国まで行くことのできる
時代になったと思っています。 

 

美術館はただ美術作品の展示を行う建物ではなく、
地域に密着しながら様々なイベントや学びの場を作っているから
こそ、すてきな交流が生まれる場になるのだろうな、
とお話を伺いながら思いました。
松岡さん、すてきなお話をありがとうございました!(サイトウ)

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