2012.3.13更新

板橋区立美術館

「安野光雅の絵本展」

インタビュー

 

 

「安野光雅の絵本展」に関して、学芸員の高木佳子さんにインタビューを行いました。
安野展をもう見た方も、まだ見ていない方も、是非ご一読ください! 
安野展の紹介記事はこちらをご覧ください。

 

 

IMG_4142.jpgのサムネール画像

おもちゃのようにかわいい展示会場です。

安野光雅の絵本展(以下安野展)を企画することになった理由を教えてください。

高木:板橋区立美術館(以下板美)では毎年ボローニャ国際絵本原画展
詳しくはこちらの記事をご覧ください)を行っていますが、
それとは別に、著名な絵本作家の全貌に迫る展覧会にも取り組んでいます。
安野展もその一環です。
安野さんの仕事の全体像を把握出来るように、初期から近作までの
幅広い作品を展示しています。
安野さんの仕事は絵本だけでは語れない部分もあると思いますが、
絵本作家活動を軸にして見ていくと、絵本以外の活動や
幅広い関心を知ることが出来ます。
図録にも詳しい説明を掲載していますので、
安野展とあわせて楽しんで頂きたいと思います。

 

 

 

『バーゼルより』加工.jpgのサムネール画像

『バーゼルより 子どもと本を結ぶ人たちへ』2003 美智子 すえもりブックス
こちらの表紙原画とともに
『どうぶつたち』1992年 まど・みちお/美智子 選・訳 すえもりブックス
『橋をかける 子供時代の読書の思い出』1998 美智子 すえもりブックス 
の表紙原画が特別展示されています 


皇后陛下のご著書の表紙原画も特別に展示されていますが、何故でしょうか?

高木:安野さんは国際児童図書評議会(子どもの本をとおして国際理解をすすめることなどを目標にしているNPO団体)(以下IBBY)と関係があります。
皇后陛下はIBBYの国際大会でご講演を行うなどの活動にご熱心でいらっしゃいます。
そして安野さんが皇后陛下のご著書の表紙絵を描かれているという
つながりがあったため、今回特別にコーナーを設けて紹介しています。
安野展は全国の美術館を巡回していますが、
皇后陛下のご著書の表紙原画3点は板美だけで
特別に展示しています。
(※表紙原画は図録に掲載されていません)

 

 

IMG_4162.jpgのサムネール画像

台の上で絵本を広げられる、ちょっとしたくつろぎスペースがあります。 


コーナーごとに置いてある台には、
内側に絵本を置くことの出来る棚が付いてますよね? 

高木:原画と絵本を一緒に見ることが出来るようにするための工夫です。
安野展の展示什器はデザイナーの小泉誠さんに作って頂いたのですが、
良いものを作ってもらえて大変うれしく思っています。


 

IMG_4146.jpgのサムネール画像

この像はどこにあるでしょう?答えは安野展で確かめてくださいね! 
 

「旅の絵本」のコーナーに、三角帽子の旅人の像がありましたが…… 

高木:あの旅人の像は、安野展にいらした方がハッと気付くしかけを作りたいという
私たちの思いに応えて、
小泉さんが提案してくれたものなのです。
『旅の絵本』という作品は、何かを強く主張する作品ではないとは思いますが、
ふと気付くようなしかけが隠されている絵本なので、
展示にもそういったしかけを施したいと思ったのです。
ちなみに、三角帽子をかぶったキャラクターは安野さんの
デビュー作『ふしぎなえ』から既に登場しています。
「ふしぎ・ABC」のコーナーにあるオブジェもご覧になりましたか?
こちらも小泉さんに作って頂きました。

 

 

IMG_4149.jpgのサムネール画像

 しゃがんだり、見上げたりすると……
 

見る角度によって、オブジェが
それぞれアルファベットやひらがなに見えました。

高木:立体のことをよくご存知である小泉さんにおまかせしたからこそ
生まれたオブジェだと思っています。 

 

 

もりのえほん加工.jpgのサムネール画像

『もりのえほん』1997 安野光雅 福音館書店


安野さんの作品のお話に戻りますが、作品を見ると、
複雑な内容でも分かりやすく説明されていると思いました。

高木:絵本作家としてのデビューは遅いのですが、デビューまでの様々な経験は
全て絵本に集約されています。
安野さんは小学校の先生でありながら、画家として制作しながら、
装丁の仕事もしていた……という、
二足も三足もわらじを履いている時期が長かったのです。
子どもにどうやって説明すれば理解してもらえるか、どうやったら読者に伝わるのか、
その方法を安野さんがよく理解していることを彼の作品から読み取ることが出来ます。
絵本の内容が難しくても、描写を工夫することで
読者が内容を理解出来るようにしている点は、安野さんの魅力のひとつだと思います。 
『もりのえほん』という作品は、森にどうぶつが隠れているという
だまし絵の絵本ですが、
この作品は子どもの方が楽しみ方を知っています。
大人は意外と隠れているどうぶつに気付かないものです。  
 

 

 

旅の絵本V加工.jpgのサムネール画像

『旅の絵本V2003 安野光雅 福音館書店
 

ひとりより、大勢で読む方が楽しめる絵本でしょうか? 

高木:そうだと思います。何かが隠れていることに気付くと、
そのことを誰かに言いたくなりますから。
他の人ともコミュニケーションをとることが出来る絵本だと思います。
『旅の絵本』も、子どもが読むと、旅人がいる場所を一生懸命に探していました。
大人が読むと、絵画や物語の一場面が所々に描かれているということに
気付くと思います。
きれいな風景が続いていくだけでも、外国好きな読者には喜んでもらえるでしょう。
子どもにも大人にも読み応えのある絵本です。

いろいろな読者がそれぞれの楽しみ方が出来るのは、
安野さんの作品の強い魅力です。

 

 

おおきなもののすきなおうさまのはなし加工.jpgのサムネール画像

 『おおきなもののすきなおうさま』1976 安野光雅 講談社


『おおきなもののすきなおうさま』という作品の終わり方には、
何と言ったら良いのか分かりませんが、胸に詰まるものがありました。

高木:この絵本は、安野さんが伝えたいメッセージも面白いものなのですが、
メッセージに至るまでのプロセスも手を抜かずに
ユーモアたっぷり描いているところも
魅力的です。
作品の終わり方は切なくもあり、愛おしくもあります。
ポスターでも、一枚絵ですごくユーモラスに表現されていたりと、
安野さんは作品中に遊び心を入れずにはいられない方なのでしょうね。
読者を驚かせたいという気持ちを昔から今まで変わらずにお持ちなのだと思います。
安野さんの絵本はまだ多くがロングセラーとして書店で売られてます。
40
年以上前の絵本も絶版にならずに売られているということは、
それだけ長く楽しまれている証拠ですよね。
安野展の会期の間は板美の売店でも安野さんの絵本を販売しています。

  

安野展を行ってから、印象に残った出来事はありますか?  

高木:安野展を始める前から予想の付いていたことですが、
安野展にいらっしゃる方は中高年の方が多いです。
ですが、小学生が鑑賞教室のために安野展に来た時には、
奪い合うようにして安野さんの絵本を読んでいる子どもたちの姿を
目の当たりにしました。
その様子に驚くと同時にとても感動しました。

名作絵本なので子どものファンがいるのはもちろんのことだと思いますが、
安野さんの絵本が長い間読者に親しまれ続けている意味がよくわかりました。
これは安野展がオープンしてから改めて実感したことです。


絵本を眺めるだけでも楽しいけれど、原画を見て、展示のこだわりを知ることで、
もっと安野さんの作品を楽しめるようになりました。
高木さん、どうもありがとうございました! (サイトウ)

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