2012.4.27更新


トムズボックス 土井章史さんに

おすすめの絵本について

うかがいました

 

トムズボックスオーナー土井章史さんのインタビューでは、
子どもの部分が残った”上等なおとな”の目線で、
おすすめの絵本も3冊ご紹介いただきました。
3冊ともトムズボックス(土井さん)による編集。
不思議、ナンセンス、なんじゃらほい、
そして「乾いた笑い」の意味が
とてもよくわかるような気がしました。

 

 

ぎゅうぎゅうどうぶつえん★.jpg

『ぎゅうぎゅうどうぶつえん』
井上洋介/えとぶん 芸術新聞社/刊

 

1冊目は土井さんに”追っかけ”をさせて今に至らせた
ひとり、井上洋介さんの『
ぎゅうぎゅうどうぶつえん』です。
ただ単に「ボクのへや」に次々といろんな動物が
入って来るだけのお話なんですが、
読み進むうちにだんだんエキサイティングな気分に
なってくるから不思議。
キリンが入ってきて、バッファローが入ってきて、
カバ、セミ、カブトムシ、ゾウ、ワニ、クジャク、ゾウガメ、
フクロー、モグラ、ヤマアラシ、バクと続き、

「それで ぼくの へやは
ぎゅうぎゅうどうぶつえん」
とついにクライマックスを迎えるのです。

バッファローやゾウとセミ、カブトムシが
同じ大きさなのですが、「ボクのへやに入ってきた!」という1点で
嬉しさは同じ。だから大きさも同じ、ダイナミックに描かれています。
この展開を楽しめるかどうかが勝負だ、と土井さん。
そしてどこのページにも
いる「狂った時計」が最高です。
「けんだま」もどういうわけかいるのです。
同じ部屋なのに時計のかたちが変わってます。
これぞナンセンスの真骨頂!

 

ぎゅうぎゅうどうぶつえんゾウ★.jpg

『ぎゅうぎゅうどうぶつえん』中面より。
動物たちが入ってくる向き、「ボク」が迎える顔の向きは
どのページも同じです。
左ページに「狂った時計」、右ページに「けんだま」
があるのも同じ。でも色やかたちは同じ部屋なのに
なぜか変わっちゃうんです!
「狂った時計」の振り子と「けんだま」のひもが
どんどんどんどん動きが激しくなり、
クライマックスに向けて盛り上がっていきます!

 

これにはまるかはまらないかというところで
子どもの心を持っているかどうか分かれるんだそうです。
はまってくれると面白いなあ、と土井さん。
文字はすべて井上洋介さんの手描き文字。
これまた味があります。

本気で絵本を出そうと思うと、こういう方向は危ないそうですが、
学生にはこういう思い切ったやつをどんどん描けと言うそうです。
一方ワークショップに来るプロを目指している人、
ちゃんと絵本を学ぼうと思う人には、
こういう絵本は難しいだろうな、とおっしゃっていました。
 

 

さるのせんせい.jpg

『さるのせんせいとへびのかんごふさん』
穂高順也/ぶん 荒井良二/え
ビリケン出版/刊

 

2冊目は『さるのせんせいとへびのかんごふさん』です。
この絵本は子どもに相当うけていて、
1999年初版、現在29刷になってます。
読み聞かせをすると子どもたちは最高に面白がるので
ぜひ読み聞かせてあげてほしい絵本だそうです。

「ナンセンスとまでは言わないけれど乾いた感じ」と土井さん。
この絵本の特長は、リズムがすごくいいところと
へびのかんごふさんの使い方がすごいところです。
試験管になったり注射になったりはかりになったり
電車ごっこのつなにもなります。
ストーリーの本筋とは関係のないところでの
荒井良二さんの芸の細かさも特筆ものです。

 

さるのせんせいくま1.jpg

『さるのせんせいとへびのかんごふさん』中面より。
ふたごのくまが健康診断にやってきます。
めもりが付いてはかりになったへびのかんごふさんに
こどもたちは身長をははかってもらおうとしています。
読者の目線がすっかりへびのかんごふさんと
ふたごのくまたちに行っているその横で
たいへん! おかあさんぐまは
ひそかにハチにさされてます!
 

 

さるのせんせいくま2.jpg

『さるのせんせいとへびのかんごふさん』中面より。
次のページをめくると、へびのかんごふさんは
頭まわり、胸まわりをはかってくれて
さらに電車ごっこのつなにもなってくれてます。
ここでも読者の目が彼らにくぎづけになっているその横で
おかあさんぐまは、さるのせんせいに
ひそかに治療してもらってるのです!

 

「この絵本は子どものエンターテイメントになりきっている」
と土井さん。
なんのメッセージもないけれども、
展開の面白さ、ことばのリズムの良さが
際立っているのです。
とくに穂高順也さんの文章が効いています。
穂高順也さんは、ご自身ですごく味のある絵コンテを
描かれるそうです。
土井さんに言わせると
「偏屈なやつで独身でもてない男だけど考えることは面白い。
おとなになりきれていない42歳」なんだそうです! 
これって、絵本を作る人にとっては
まあ、褒め言葉ですよね? ね?!

 

 じょうろさん.jpg

『じょうろさん』
おおのやよい/作 偕成社/刊

 

3冊目はおおのやよいさんの『じょうろさん』です。
おおのやよいさんは土井さんの絵本ワークショップに
来ていた人で、ふだんは園芸家でありイラストレーターです。
この絵本は『にわのともだち』に続く2冊目だそうです。

 

 じょうろさん中.jpg

『じょうろさん』中面より。
主人公は年寄りのじょうろさん。
でも、じいさんだから水がもれるようになっちゃって
庭のともだちの葉っぱたちが穴を埋めようと
葉っぱを落としてくれたりするのですが
新しいじょうろを買ってこられちゃった・・・。
哀愁漂うじょうろさん。じょうろさんピンチ! 
どうなる、じょうろさん?!

 

この絵本は、無機質なモノに表情を付けた
「アニミズム」で、長新太さんお得意の分野です。
モノにも表情があって感情がある。
園芸家ならではの目線で、ちゃんと植物を描きながら、
身近なところに面白いお話があるという提案をしています。
子どもは生きているもの死んでいるものいっしょに考えるので
「アニミズム」を素直に受け取れるのだそうです。
「じょうろさん」と、「さん」が付くことで
なんだかとてもいとおしく感じられますね。
この感覚、私たちも大事にしたいと思いました。

 

 

トムズボックス 023.jpg

トムズボックスオーナーの土井章史さん。
おすすめ絵本を選んでいただく際に、
1冊1冊、土井さんに解説しながら
「読み聞かせ」をしていただけて、とてもラッキー!
どの絵本も最高に面白かったです。
土井さん、素敵な絵本をご紹介いただき、
本当にありがとうございました。(ミヤタ)

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