2012.7.31更新


板橋区立美術館

2012イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

インタビュー


板橋区立美術館(以下板美)へ、2012イタリア・ボローニャ国際絵本原画展(以下ボローニャ展)の取材をしに行ってきました!
今回インタビューにお答えくださったのは、担当学芸員の高木佳子さんです。

 

poster_web.jpg

 

●イタリア・ボローニャ国際絵本原画展
会期 2012年6月30日(土)~8月12日(日)
開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日(但し7/16は祝日のため開館し、翌日休館)
観覧料 一般600円 高・大生400円 小・中学生150円
20名以上団体割引、65歳以上高齢者割引、身障者割引あり
毎週土曜日は、小・中・高校生は無料で観覧できます。
主催/板橋区立美術館、日本国際児童図書評議会(JBBY)

●板橋区立美術館
〒175-0092 東京都板橋区赤塚5-34-27
TEL: 03-3979-3251
展覧会テレホンサービス 03-3977-1000
公式ホームページ
http://www.itabashiartmuseum.jp/

昨年のボローニャ国際絵本原画展についての詳しい説明は、こちらの記事を。
今年の現地レポート(by 社外研究員の南さん)は、こちらの記事をご覧ください。 


CIMG2472_s.jpg


のぼりの文章も、昨年とは変わっていました!

ー今年のポスターの経緯を教えていただけますか?

高木:例年、ボローニャ展のポスターには入選作品を使用することが多かったです。紙面を大きく占めるメインビジュアルにしたり、コラージュのように集めて使用したり。ですが昨年のポスターは文字をメインに使ってみました。特に決まり事は無いので、面白そうなことを積極的に試していきたいと思っています。そして今回は今年の入選作家ではない方に依頼することにしました。

のだよしこさんは、2007年と2010年のボローニャ展に入選されている日本人のイラストレーターで、現在はボローニャ近郊にお住まいです。ボローニャの美術学校でイラストや版画を勉強した後、イタリアを拠点に活動されています。彼女はどんなものもさらさらと描いていく作家さんで、ボローニャ展のこともよくご存知ですので、ポスターのイラスト制作をお願いすることにしました。

その原画も展示室で見ることが出来ます。A3の大きさの紙に、お気に入りの日本のボールペンで、枠や文字、イラストを描いていただきました。下描きはせず、修正もほとんどありません。どこにも活字の無い、いつもとはだいぶ変わったポスターになったと思います。

2枚のイラストを描いていただきましたが、1枚はポスター、もう1枚はチケットと板美前に設置したゲートに使用しました。
また、出来上がったポスターとチケットには地の何カ所かに色をのせてありますが、こちらはデザイナーさんにお願いしました。白黒でも十分素敵ですが、色がのるとより人の目を引きます。
チケットの形もデザイナーさんの提案です。簡単な加工で平面が立体のように見えるしかけを作っていただきました。
このチケットとポスターは板美のみで使用しています。図録は共通ですが、巡回する会場ごとにポスターのデザインは異なります。


ー今年のポスターの経緯を教えていただけますか?

高木:例年、ボローニャ展のポスターには入選作品を使用することが多かったです。
紙面を大きく占めるメインビジュアルにしたり、
コラージュのように集めて使用したり。
ですが昨年のポスターは文字をメインに使ってみました。
特に決まり事は無いので、面白そうなことを積極的に試していきたいと思っています。
そして今回は今年の入選作家ではない方に依頼することにしました。

のだよしこさんは、2007年と2010年のボローニャ展に入選されている
日本人のイラストレーターで、現在はボローニャ近郊にお住まいです。
ボローニャの美術学校でイラストや版画を勉強した後、
イタリアを拠点に活動されています。
彼女はどんなものもさらさらと描いていく作家さんで、
ボローニャ展のこともよくご存知ですので、
ポスターのイラスト制作をお願いすることにしました。

その原画も展示室で見ることが出来ます。A3の大きさの紙に、
お気に入りの日本のボールペンで、枠や文字、イラストを描いていただきました。
下描きはせず、修正もほとんどありません。
どこにも活字の無い、いつもとはだいぶ変わったポスターになったと思います。

2枚のイラストを描いていただきましたが、1枚はポスター、
もう1枚はチケットと板美前に設置したゲートに使用しました。

また、出来上がったポスターとチケットには地の何カ所かに色をのせてありますが、
こちらはデザイナーさんにお願いしました。
白黒でも十分素敵ですが、色がのるとより人の目を引きます。

チケットの形もデザイナーさんの提案です。
簡単な加工で平面が立体のように見えるしかけを作っていただきました。

このチケットとポスターは板美のみで使用しています。
図録は共通ですが、巡回する会場ごとにポスターのデザインは異なります。

 

CIMG2476_s.jpg

板美入り口前のゲートです。楽しげでステキ!

ticketclose.gif

チケットです。これを開くと……

ticketopen.gif

箱を開けたようなかたちになり、すっごくかわいいです。

 

ー今年の作品には何か特徴がありましたか?

高木:毎年、送られてくる作品も、審査員も違うので、何らかの変化は出てきます。
なのでぜひ毎年ボローニャ展を見に来ていただきたいと思います。
選考は展覧会としてのまとまりを考えた上で行われているので、
極端な偏りはありません。
入選作品を見ても、絵本らしさが感じられる作品もあれば、
アート寄りの作品もあります。
技法も絵の具や版画からCGまで様々です。
この多様性こそがボローニャ展では重要です。

審査員によって審査基準も違うために、満場一致で入選作品が決まることは少なく、
審査員同士での議論と説得が行われた上で入選作品が決まります。

審査員は5人いて、今年は日本から荒井良二さんが参加しています。
展示室では審査の様子が分かるドキュメンタリー映像も上映しているので
ご覧いただければ分かりますが、彼は積極的に議論を起こしています。
絵本の既成概念をときほぐしたいという強い思いがあるからでしょう。

今までのボローニャ展とは変えていかなければならない、
新しいものを取り入れていかなければならないという考えをお持ちでした。
でなければまた似たような作品が送られ、
似たような作品が入選することになってしまい、
ボローニャ展自体が停滞してしまうので。

ボローニャ展では入選した作品しか見ることが出来ませんが、
入選しなかったから悪いということでもありませんし、
入選したから必ず絵本として出版されるということでもありません。

ボローニャ展には、絵本の可能性を探り、
絵本の間口をもっと広げていきたいという狙いもあるので、
作品を展示する前の入選作品を決めるプロセスから既に始まっています。
毎年ドキュメンタリー映像を制作して上映しているのは、
そのことを伝えるためでもあります。
この映像は日本国内のボローニャ展と一緒に巡回していきます。
 

CIMG2501_s.jpg

審査の様子をかいま見られる、貴重な映像です!


ー韓国の勢いがすごかったと聞きましたが?

高木:ここ数年、韓国は各出版社同士が協力して
世界に向けて発信していこうという傾向があります。
韓国の学校も若い作家を送りこむことに一生懸命です。
ボローニャ・ブックフェアでも、韓国ブースは人気がありました。
はじめから世界を狙ってアピールしているのではないでしょうか。
韓国外の作家の作品でも積極的に出版したいという姿勢もうかがえます。

今年の図録の表紙を描いているチョ・ウンヨンさんは、
ボローニャ・ブックフェアの韓国ブースにダミー本を出品したことがきっかけで
フランスから絵本を出版しました。
また彼女は昨年のブラティスラヴァ世界絵本原画展でグランプリを取っています。

ボローニャ展の図録の表紙絵は、ブラティスラヴァ世界絵本原画展(※1)で
グランプリを取った作家と、国際アンデルセン賞画家賞(※2)を受賞した作家に
交互に依頼することになっています。

※1ブラティスラヴァ世界絵本原画展:隔年開催の国際的な絵本原画展。
※2国際アンデルセン賞:子どもの本に貢献してきた作家・画家に与えられる国際的な賞。


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図録の表紙絵は、チョ・ウンヨンさんの描き下ろしです。

 

ー今年の日本人入選者はどうですか?

高木:7人中5人が初入選です。今井彩乃さんは今までにも何度も入選し、
国内外でも絵本を多く出版しています。

2回目の入選になったスズキサトルさんはノンフィクションの作品を描かれています。
しっかりとものごとを説明しながらも、イラストレーションとしての個性もあり、
バランスが保たれています。
ご本人がアウトドアが好きだということも伝わってくる作品です。

ノンフィクションはすごく面白い分野ですし、
ノンフィクションとフィクションの中間部分の表現方法にも可能性があると思います。
ストーリー性の強い作品や、アート性の強い作品の応募数が多く、
ノンフィクションの応募が少ないので、
もっとノンフィクションの面白い作品が増えてほしいと思います。

 

スズキサトル(日本)「アウトドアブックス」

 

ー他に今年のボローニャ展で、印象に残ったことはありますか?

高木:アジア勢の勢いが年々増しています。
特別展示のペイジ・チューさんも台湾人です。
彼は自らをイラストレーターとは限定せずに幅広く活動するアーティストです。
「絵本はこういうもの」という概念に縛られていない絵本は面白いと思います。

それから、審査員の荒井さんには板美でもイラストレーター向けのワークショップを
行っていただきましたが、ワークショップで何をするのかを
参加者と一緒に作り上げていました。
ワークショップの目的は絵本を完成させることではなく、
色々な寄り道をしてから最終的に絵本の入り口に立てれば良い、というものでした。
荒井さんはご自身を講師としてとらえるのではなく、
参加者と同じ地平にたって、みんなと一緒に考えていくという
スタンスをとっていました。
結果的に出来上がったものが絵本の形にならなくても、
何か面白いことが出来たらそれで良いのではという考えだったのでしょう。
このやり方はとても荒井さんらしいものだったと思います。
“ワークショップ”とは何なのか、ということについても考えさせてくれるものでした。

 

pagetsou.jpg

ペイジ・チュー「鉛の兵隊」 


高木さん、ありがとうございました!
来年はどんな作品が入選するのか、とても楽しみになりました。 

 

CIMG2491_s.jpgのサムネール画像

カフェ・ボローニャのパンです!すっごくおいしかったです。
絵本売り場も充実していたのでおすすめです!。

 

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