2012.9.18更新
サントリー美術館
「お伽草子(おとぎぞうし)
この国は物語にあふれている」
内覧会に行ってきました!
「お伽草子 この国は物語にあふれている」展
会期/2012年9月19日(水)~11月4日(日)
休館日/火曜日
開館時間/10時~18時
ただし金・土、および10月7日(日)は20時まで
いずれも入館は閉館の30分前まで
入場料/一般1300円 大学・高校生/1000円 中学生以下/無料
場所/サントリー美術館
住所/東京都港区赤坂9-7-4 六本木・東京ミッドタウン ガレリア3階
Tel.03(3479)8600 http://suntory.jp/SMA/
東京・六本木のサントリー美術館で
明日から開催される「お伽草子」展。
絵本の研究プロジェクトとして
日本の絵本の原点を再確認したいと思い、
本日、ひと足早く内覧会に行ってきました。
絵と文字で物語を楽しむ文化は
平安時代に始まったそうです。
とりわけ室町時代から江戸初期にあたる
14世紀から17世紀にかけては、
新しい物語が次々に生まれ、
絵巻や絵本のかたちで広く親しまれたのです。
それらを称して「お伽草子」と呼びます。
その総数は400種を超えるとか。
その中には、私たちがよく知っている
『一寸法師』や『浦島太郎』などもあります。
図録の表紙見開きです。
絵柄は「百鬼夜行絵巻(ひゃっきやぎょうえまき)」。
室町時代(16世紀)の京都・真珠庵の作品。
重要文化財。
長年、人間に奉仕してきたさまざまな道具たちが
用済みとなり捨てられたのを恨んで
妖怪に化けて練り歩く。
人気の絵巻だったらしく、室町時代から江戸時代にかけて
60作品以上が作られたそうです。
道具が妖怪になるという奇想天外なストーリー、
大胆な構図、要所要所で目をひく着彩など
今見てもとても新鮮で迫力のある作品です。
「お伽草子展」ポスター裏面より。
右上の絵は、「浦島絵巻」。
16世紀の作品です。
「浦島絵巻」の部分を拡大してみました。
浦島太郎が玉手箱をあけた瞬間、
煙がでてきて老人に変身してしまうシーン。
当時は上記のような、白い弓なりの線による表現が
せいいっぱいだったとの解説がありました。
なお、「浦島太郎」という名前になったのは後世になってから。
この絵が描かれていた16世紀には、
「浦島子(うらしまこ)」という名前でした。
図録に掲載されていた解説文によると
お伽草子は次の6種類に分類されるそうです。
①公家物語
②僧侶・宗教物語
③武家物語
④庶民物語
⑤異国・異郷物語
⑥異類物語
この中でとくに注目したいのが⑥の異類物語。
これは、動植物や器物を主人公とする作品群で、
昔の文化人たちの自由奔放なイマジネーション炸裂!
といった感じでとても楽しいのです。
その代表的な作品が絵本となって
ミュージアム・ショップで販売されていました。
サントリー美術館 絵本シリーズ第一弾
『鼠草子(ねずみのそうし)』
編集・発行/サントリー美術館
裏の帯には、「絵巻に書かれた言葉を現代語訳して
昔の人の絵巻の楽しみ方を再現しました。
絵巻を読むように、絵本を楽しんでください。」
と書かれています。
オリジナルの『鼠草子絵巻』は
室町~桃山時代(16世紀)の作品。
畜生道を断ち切ろうと、人間の姫との結婚を企てた
ねずみの権頭(ごんのかみ)の物語。
展示会場では音声ガイドプログラムを搭載した機材の
貸し出しもあり、音声ガイドマークのある作品のところで
簡単な操作をすると、ヘッドホンを通して物語のあらすじや
時代背景などの解説が流れてきます。
要所要所、全部で20作品の解説が聞けるので分かりやすく、
また、前述の分類とは別に
「お伽草子にはなぜ清水寺がよく登場するのか」
といった興味深いお話も聞けたりして、絶対におすすめです♪
そして、全体を通して印象的だった2点について。
まず一つ目は、主人公が夢に破れ、恋に破れ
大いなる挫折を味わったり反省したりすると、
最後ほとんどが「出家」して終わるところ。
もうちょっと「現世」でがんばってほしいな!
なんて思うのは私だけでしょうか!?
あまりにも「出家しました」で終わるのが続いて、
昔はそれが唯一の救いの道だったとはいえ
あまりにも切なく衝撃的でした。
二つ目は、『しぐれ絵巻』という
女流絵師の描いた1513年の作品。
この作品では、左大臣の息子・中将さねあきらをはじめ
身分の高い男性たちはみな
二重まぶたに描かれていたこと!
(女性たちは、いわゆる平安の美人顔の一重まぶたなのに!)
まるで現代の少女漫画と同じ感覚です。
”イケメン”だと、当時でも二重だったんだ~!
と、これまた目ウロコ的発見でした。
『しぐれ絵巻』に登場するやんごとなき男衆の
二重まぶたに注目!
(図録より抜粋)
いずれにしても、ふだんとは違った視点から
絵本の楽しさを感じた展覧会でした。
お伽草子の世界から、
文化の秋をいちはやく味わってみませんか?! (ミヤタ)