2013.4.11

『いるの いないの』

制作の裏側にインタビュー!

第4回目

 

『いるのいないの』インタビューをご紹介して、本日で第4回目!そして最終回!
それではまいりましょ〜。

 

 

IMG_5336_s.jpg

トビラのラフです。

 

第4回 「怪談えほんはだれのため?」


―怪談えほんを出したいと言ったとき、周りはどんな反応でしたか? 

S:会社にとっては、多少の抵抗があったようです。
絵本とは子どもに夢を与えるものという意見もありましたし、
企画後すぐに起きた震災の影響もありましたから。
それでもいいものができると信じて進めていきました。 

K:こっそりプロモーション活動をしたりして。

S:インターネットの果たした役割は大きかったですね。

H:岩崎書店のツイッターの中の人がKなんです。
昼夜問わず怪談えほんの情報を発信し続けてくれました。

K:作家さんが著名な方ばかりということで
興味を持ってくださった読者さんもいらっしゃいました。
それに、怖いものって人に話したくなるんですよね。
読者さんの口コミによる力が大きかったです。
発売当初の話ですが、絵本コーナーに並べたところ、
怪談えほんを読んだ子どもが泣き出してしまい、
美術書コーナーに移動した書店さんもありました。
「見ちゃいけません」って子どもに言う保護者もいたようです。

S:一方で、すごく気に入ったから率先して棚に並べていきたいという
児童書専門店もありました。
「こういうのを待ってました」と言ってくださった方もいます。
賛否両論ではありましたが、肯定してくださる方が増えたのは、
ネットの力が大きいと思います。

 

 

IMG_5344_s.jpg

黄色い付箋に再と書いてあります。再校(色校の2回目)のことです。
輪ゴムで紙を束ねているだけで、冊子にはなっていません。
『いるの いないの』は3回色校を出しているとのこと、
町田さんや編集の方々で色やゴミの確認をしてから
赤字で直したいところを校正紙に書き込み、印刷所に依頼します。
それから3校(色校の3回目)が出てくるのです。

 


―読者さんが味方ですね。 

S:読者さんが良いとおっしゃってくださるなら、それでいいと思います。

H:近くの児童館で時々読み聞かせをするのですが、
怪談えほんを読むと、子どもたちに喜んでもらえるんです。
「楽しい絵本と怖い絵本、どっち読む?」って聞くと、
「怖い絵本ー!」と大声で返ってきます。

S:読み終わったときは「全然怖くない!」って言ってくるんですけどね。

K:家に帰ってから絵本の内容を思い出して、
「お母さん、一緒に寝ない?」みたいに言うんでしょうね、きっと。

 

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東さんによる絵本のオビ文章です。
怪談えほんは子どものために。

 

―子どものために作った絵本なのですね。

H:それしか考えていませんでした。

S:京極さんもおっしゃってましたが、大人のことは二の次です。

K:「怖い」ということだけに反応する子もいますが、
「怖い」と思うよりもまず自分なりの解釈をしている子も多いと思います。

H:この絵本を作ったときは、「子どものうちに怖い思いをした方がいい」って
思っていたのですよ。
何も怖い思いをしないで大人になったら、怖いことがあったら
どう対処すれば良いか分からなくなってしまう。
いろんな感情を養っていった方が、豊かに成長していくと考えています。

M:子ども向けの絵本というと、楽しいとかやさしいとか愛されてるとか、
そういう柔らかいものが多いですよね。
だから怪談えほんの話を聞いた時、そういうやさしく守られている子どもたちに向けて、
ちょっと皮肉をこめた絵本だと思ったのです。
ところが、Hさんは「この絵本はやさしさです」っておっしゃっいました。
そのときには、まだピンときていませんでした。

でも描いているうちに、Hさんとは違う解釈ですけど、
この絵本はやさしいと思うようになりました。
男の子が「いるよ」って主張した時、
おばあさんが「見たんなら、いるね」って肯定してますよね。
子どものとき、「あそこにおばけがいるよ!」っていうと、
親に「いない」って言われませんでしたか?
そうすると子どもは、信じてもらえない辛さと、
「いる」おばけと、たった1人で戦わなくてはいけません。
でも、このおばあさんは「見たならいる」と認めてくれるんですよね。
さらに、この絵本のオチは、実際「いる」んですよ。
ほっとするというか、安心しますよね。
「見間違いじゃなかったんだ。やっぱりいるんだ」って。
そういう意味では「やさしい」絵本だな、と

H:私の言っている意味とは違いますけどね。でも、どんな意味でもいいんですよね。

M:「おばあさん!いないって言ってくれよ」という感想を見かけると、
否定して欲しい人にとっては「怖い」絵本なんだと思います。
子どものころ、「いる」って言って欲しかった人にとっては、
やさしい絵本だと思います。


H:そうして見ると、宮部さんの『悪い本』もやさしさですね。
自分の中の「悪」を肯定してくれるので。
「子どもの時にこの絵本があったら良かったのに」という大人もいました。
小さいとき、「人を恨んではいけない」って言われますよね。
でも、絶対に人を恨むときはきます。
「その気持ちはあなただけの悪いことではなくて、
みんながあたりまえに持ってる気持ちなんだよ」って肯定してくれる
やさしい絵本なんです。

S:宮部さんの愛情です。

H:人を憎めって言ってる訳じゃない。
「これは自然な感情なんだよ」って教えてくれています。
決して押し付けるのではなくて。


―皆さんにとって絵本とは何ですか?絵本にはどんな力があると思いますか?

S:自分の外にあることを知ることが出来るもの、でしょうか。
外の世界を知ることで、自分の内面に気付く……なんて言っても、
後付けのように聞こえてしまうかもしれませんが

H:怖い絵本は、子どもにとって未知のものなので、
すごく興味を引くものだったと思います。
絵本自体に未知なものへの扉を開かせる、という役割はあります。
現実を知るというより、未知なるものへの興味を抱かせるものとしては、
すごく意味があります。

 

 

IMG_5305_s.jpg

本棚に1セット、怪談えほん!
(ボックスもかわいいですよ♪) 

 

 

子どものために愛を込めて怖く作った絵本……ステキです!
怪談えほんを読んだことのある人は、また違った読み方ができるでしょうし
読んだことの無い人は、読みたくなってきませんか?
ぜひぜひ!何度でも読み返して、新しい発見をしてくださいね。


町田尚子さん、Hさん、Sさん、Kさん、ありがとうございました!! 

ところで、後日メルマガにてインタビューこぼれ話をご紹介します。
ぜひぜひ、ぜひぜひ!メルマガ会員に登録してみてくださいね♪ 

さて……実は、あと1日続きます……明日にもご期待ください!

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