2013.5.28

さいとうれいこさん

『おしゃれっぽきつねのミサミック』

制作裏話 ②

 

前回に続き、さいとうれいこさんと編集の安藤さんによる裏話をご紹介♪
絵本の文章の書き方やキャラクター作りについて教えていただきました!


IMG_5393_s.jpgこちらはさいとうれいこさんの絵本原画展の様子です。
ナチュラルカフェ コンポステラ にて展示されていました。



第2回「絵本の文章、絵本のキャラクター」

 

―文章はどのように書いていきましたか?

さいとうれいこ(以下S):私はことばを詰め込んでしまうタイプなのですが、
詰め込みすぎても読者の方はついていけません。
今井教授は
「児童文学を書く勢いで、いったん長文を吐き出してみたら?」
とアドバイスをくださいました。
なので、何万字か書いてから、やっと短くしています。
短くするときは、Aさんに客観的に見てもらいます。
絵を見ればわかるので省ける部分を指摘して削ってくださるんです。
まずはたくさん書いて気持ちが盛り上がって、
一人よがりになりがちな部分まですべて吐き出すことができてから、
やっと一歩引いて見られるのです。
ただ、次の作品では違うやり方を試してみたいと思っています。
長文ではなく、脚本というかト書きのようなものというか、
そこから書き始めてみようと。

安藤康史(以下A):映画で言う絵コンテのようなものと言えばいいでしょうか。
ただし、そういった物語の流れとは別に、
「こういう絵が描きたい」という場面がもしあったら、
それはそれで書き留めておいてくださいとも言っています。
細かい話は決まっていなくても、ある場面が描きたいと思い浮かんだなら、
それを中心にして考えていくことがあってもいいと考えています。
文章と絵を別々の人が分担して絵本を作る場合、
普通は文章が先に来て、それに合わせて絵を描きますが、
もともとさいとうさんは絵の比重が大きいので、こういうやり方もありだと思います。
必ずしも絵が文章に従属するものでなくてもいいと思いますね。


―制作中の印象深いできごとはありますか?

S:冒頭と終わりに入れている
「るーらららー」ということばに関してです。
インパクトのある始め方をしたかったので、当初は冒頭に入れていたんですが、
Aさんの指摘で、物語の進行上、後ろに持って行かざるを得ないことになりました。
理由は確かに納得できました。
論理的に構築するなら、途中の文章に入れた方がいい、と。
でも、心の中ではずっと引っかかっていました。
ところが、印刷所に入稿する直前に、Aさんが
「最後を『るーらららー』で締めよう、そうしたら冒頭にも入れるべきだろう」
と、最初の案に戻すことを提案してくれたんです。

A:いろいろ悩みつつ変更してきた文章なので、
最後の最後で変えちゃうのはどうなんだろうという心配はあったのですが……。

S:Aさんは私が嫌がらないかと気にかけて聞いてくださったんです。が、私は
「それ、それなんです!」
って言って、変更することにしました。
求めていた答えを見つけてくれて、すごくうれしかったです。
絵本って読み聞かせなどで声に出して読むものなので、
一番最初にどんなことばを発せられるかって、すごく大切なことだと思うんです。
いきなりナレーションの地の声よりも、
遊びがあった方が子どもの心に入ってくるんじゃないかな、と。
それに、「るーらららー」って、
私が接してきた子どもたちに受けのいいことばだったんです。

A:絵本には算数と違って正解がありません。
何を優先するかによって、この冒頭の描写は変わってくると思います。
もしわかりやすさを優先したなら、
たとえば主人公の説明から入ったかもしれません。

S:そういえば、最後の文章は10か月くらいペンディング(保留)になっていました。
期間を置くことで、よりよい案が思い浮かんだりします。



―きつねの名前は、どうして「ミサミック」なんですか? 

S:めいの名前を組み合わせました。
未来(みらい)ちゃんと美咲(みさき)ちゃん。
未来を「みっく」と呼んでいたんです。
自分の絵本に出てくるキャラクターのちょっとした動きなんかは、
よく見ていた身近な子どもたちの実際の動きを参考にしています。
単体では珍しくない名前ですが、2人の名前をくっつけることで、
奇抜すぎず、でもちょっと珍しい名前になりました。
 

A:初期の設定での名前は「ルウ」でしたが、わりとよくある名前なんですよね。 

S:少し珍しい名前にしたかったんです。
何十通りも考えて、最終的に「ミサミック」になりました。
「ムウムさん」は羊の柔らかいイメージを名前に反映させたかったので、
初期の設定のままです。

 

―その他、初期の段階から大きく変えたことはありますか? 

S:名前の出てこないサブキャラクターも、設定を全部作り直しました。
それも今井教授のアドバイスです。
初めはそんなに性格を描き分けていなかったんですが、
それだと描いていても活き活きしてこないんです。
みんなが地面を歩いている場面も、キャラ設定をしっかり作り込んでいれば、
体重が重い子は沈むし、軽い子は浮いてくるし、と描き分けられます。
キャラを決めることで自然にポーズも決まってきて、すごく描きやすくなりました。

 

 

IMG_5382_s.jpg

こちらがキャラ設定のシートです。
体重の違いだって、立派な個性! 

 

 

A:体重の話は初めて聞きました(笑)。
私は、それぞれ人間だったら何歳か、性別や性格も決めておくと、
次回作を作るときにキャラが活きてくると思っていました。
 

S:キャラ設定に時間はかかりませんでした。
おいっこなど、身近な人を思い浮かべて、
そのキャラの中心になる人格をぼんやりと決めました。
そのままの性格を入れ込んだり、2〜3人の性格を組み合わせたら、
あっという間にできました。
 

A:ミサミックとムウムの2人については、台詞も自然に決めやすくなりました。
私とさいとうさんとで共通認識ができていると、
「こういうときは、そんなふうに言わないよね」
と決まってくるので、やりやすくなりました。

 

 

③に続きます。お楽しみに!

2013.5.27

さいとうれいこさん

『おしゃれっぽきつねのミサミック』

制作裏話 ①

 

こちらの記事でご紹介した絵本、『おしゃれっぽきつねのミサミック』。
出版されるまでに、どんなことがあったのか?
制作時は、どんなことを考えているのか?
絵本作家のさいとうれいこさんと、担当編集者の安藤康史さんに
制作の裏側を教えていただきました。

 

絵本好きな人はもちろん、絵本作家を目指す人必見のインタビューを
4回にわけてご紹介します! 


IMG_5385_s.jpgさいとうれいこさん(右)、安藤康史さん(左)です。


第1回「絵本の持ち込みから出版まで」

 

―出版に到った経緯を教えてください。

さいとうれいこ(以下S):3年をかけて3冊のダミー絵本を作りました。
それを持って絵本の出版社を直接訪ねるつもりでした。
ただ、絵本を編集者の方に直接見ていただく機会がなかなかないのです。
郵送だけの受付が多くて困っていました。
ふと自室の本棚にある、母に昔買ってもらった絵本の奥付を見たら、
その出版社が草土文化でした。
試しに電話をかけたら、編集の方に取り次いでいただいて。
「持ち込み、OKです。ただ出版化できるかどうかはわかりませんよ」
とおっしゃったので、
「出版することにならなくてもいいです、ただ見ていただきたいだけです」
と正直にお話ししました。
それで初めて絵本を持ち込むことになりました。

安藤康史(以下A):見せていただいたのは、
そのまま出版できそうなくらい完成度の高いダミーでした。
原画も何枚か見せていただいたのですが、特に色が美しいと感じました。
色彩設計もきちんと考えられていて、
ここまでの完成度で持ち込みをされる方は初めてでした。

S: 知り合いの絵本作家さんから、
「原画を描いても、出版する際に必ず描き直しになる。
原画は参考程度に何枚か描けば、ダミー絵本をたくさん描く時間が作れるよ」
とアドバイスをいただいて、色鉛筆でダミー絵本を作りました。
その時点で、使った色鉛筆の名前はすべて書き出しておきました。

A:ちょうど新しい企画を立てたいと思っていたときだったので、
すぐに絵本の企画書を作り、企画会議を通しました。

 

 

IMG_5378_s.jpg

こちらがダミー絵本です。驚きの完成度!
色鉛筆で描かれています。 

 


―3冊のダミー絵本のうち、1冊の出版が実現したのですね。

S:「絵本を持ち込みに行くとき、1つだけじゃなくていくつも持って行った方が、
相手も選びやすくなるよ」
とアドバイスがあって。
複数持って行きたい、でも私は多作のタイプじゃない。
なので、昔作った話を作り直してダミー絵本にしたんです。
当時は人間の出てくる話ばかり描いていて、
唯一動物を主人公にしたのが『おしゃれっぽきつねのミサミック』だったのですが、
人間を描くということにこだわりがあったのでしまいこんでいて。
ただ、学生時代に武蔵野美術大学の今井良朗教授に
「しゃべる動物を描くということは、動物を通して人間を描いているだけなんだよ」
と言われたことを思い出して、人間にこだわるのをやめました。
そうして、きつねの女の子を主人公にして作ったダミー絵本が
『おしゃれっぽきつねのミサミック』でした。



―絵本を出版に向けて制作するにあたって、意見がぶつかることはありましたか?

S:まったくありませんでした。すごくスムーズに話が決まっていきました。
A
さんが私のことを尊重してくださったということもありますが、
私の絵を気に入ってくださったり、私の考えと重なる部分があったのだと思います。
Aさんに指摘されたことで、納得できなかったことはほぼありません。
絵本を作った後に、ほかの作家さんや関係者さんとお話ししたとき、まず
「編集とのやりとりは大丈夫だった?」
と心配されました。
ですが、私は編集者の方についてもらったのは初めてだったので
(Aさんのように)話が合うのがあたりまえだと思っていました。

A:普通、細かい部分まで気になってくることが多いのですが、
そういうことはありませんでした。
文章を練るときは何度も話し合いましたが、
2
人で納得したうえで決まっていきました。
どちらかが折れたことはありません。
私が、その文章で伝えたい意図を説明し、
実際に絵本に使う言葉はさいとうさんに決めてもらいました。

S:Aさんの使われる言葉は、少々難しいことが多いのですが、
ニュアンスは納得できるので、簡易化した言葉を私が考えます。
意図を明確にしていただくことで、どうしたらよいのか浮かびやすくなりました。
ぶつかってやりとりをして決めていく、という方法もありだと思うんですけど、
私の場合はスムーズにやりとりできる方が、気持ちよく作れたし、
発想も広がりました。

A:2人の性格は正反対ですが、
絵と言葉について考える方向性は似ているんです。
だからこそ、ダミー絵本を見たときに、出版したいと思ったのかもしれません。

S:いくつか印象に残ったことがあります。
「おひさまのはなが咲いたみたいだ」と、ジャケットを表現した言葉があります。
Aさんから、
「花と太陽の色がいっしょであることと、そこからインスピレーションを受けて
ジャケットができたということが、もっとわかるように」
とすごく難しいご指摘を受けました。
そしたら、「おひさまのはな」という言葉がぽんと出てきたんです。

A:世界観を伝わりやすくするために、
よりよい言葉を探しながら少しいじるだけ、ということがほとんどでした。

S:Aさんは論理的思考を優先されるので、
理屈さえ通れば、あとは自分で言葉を選べる、というところがやりやすかったです。



―ほかにもアドバイスを受けることはありましたか?

S:奥付のクレジットにも掲載してありますが、
今井教授にアドバイスをいただきました。
絵本としての見せ方ですね、角度を変えるなど。
「ムウムさんが描いた絵を読者に見せたいなら、
いま斜め横になっている角度を、正面に直した方がいい」
と教えていただいたり、
私の表現したい感情をくみとってもらって、意見をいただいたりしました。
今井教授にアドバイスをいただくことで、それをほかの部分にも応用して、
自分から思いつけるようになりました。
初期の段階では、ミサミックがムウムさんの絵を見る場面には、
ミサミックのスカートの赤が入っていたんです。
でも、赤は楽しいイメージなので、
泣いているシーンなのに赤を入れるのはおかしいと思って。
スカートが画面に入らないように位置を調整しました。
誰かが教えてくれると、独力では気づけなかったところも気づけるというのは、
1人で作っているときとの大きな違いです。

 

 

IMG_5377_s.jpg

ダミー絵本をもとに絵の具で彩色されたのがこちら。
実際の絵本ではキャンバスの向きやミサミックの位置が変更されています。
絵本と見比べてみてくださいね♪ 

 


A:ミサミックが怒ってしまう場面も、今井教授とやりとりしたうえで
変わった画面でしたよね。

S:はい、今井教授と、Aさんとのやりとりを経て変更しました。
初期の段階では、怒った場面の次のページでミサミックが機嫌を直していたんです。
ところが、
「あんなに怒っていたのにもう機嫌を直すのか、早すぎはしないか」
とAさんに指摘されました。
それじゃ、まだまだ怒らせていようと思って、構図をいろいろ考えているときに、
「怒っているのに画面の枠に向かっていく構図はありえない」
と今井教授に指摘をいただいて。
それなら画面のどこに置くのが正解なんだろうと、自分でいろいろ考えて決めました。
背中を向けているのも、怒っていることを伝えるためです。


―怒っているということがしぐさから見えてきます。

S:自分1人で制作しているときには、顔の表情だけで表現することが多かったので、
からだでも怒りが表現できるなんて、と目からうろこでした。

 

 

②に続きます。お楽しみに!

2013.5.24

絵本紹介&

オフ会のご案内

『もう ママったら!』

 

本日ご紹介する絵本は
ちょっとお疲れ気味の子育てママさんにぜひ読んでいただきたい絵本です♪

 

moumama_shoei.jpg

『もう ママったら!』
寺島ゆか 作 文溪堂 


★あらすじ
ジャックラッセルテリアのママは、娘の「あたし」に

早くブロッコリーを食べなさい!と朝から怒ってばかり。
「あたし」はブロッコリーを隠して、食べたよと嘘をついたら
その嘘はママにバレてしまい、ママはもっと怒ります。
だから、つい「あたし」も、「ママのばーか!」って怒ってしまって……。

 

おそらく、だれもが経験したことのある親子のケンカ。
登場人物もとい登場犬の表情と動きがコミカルで、楽しく笑える絵本です♪


moumama_naka.jpg

 「ママなんか、もう やめちゃうもんねーだ」
子どもみたいにひっくり返って駄々をこねるママと
それを呆れたように見つめる「あたし」……。 


小さなお子さまをお持ちの方は、一緒に読んで笑い飛ばしても楽しいだろうし
「昔、こんなことあったよね」と、子どもから母親へのプレゼントにしてみるのも
喜んでもらえるのではないでしょうか……!


絵本って、読む人それぞれで好きな理由も魅力的なところも違いますよね。
そこで!絵本のチカラプロジェクトでオフ会を開きたいと思います!
皆さんで絵本を持ちよって、その魅力を語りあいませんか?

ゲストには、『もう ママったら!』 の作者の
寺島ゆかさんをお招きします♪

 

■絵本のチカラプロジェクト オフ会

テーマ:犬が主人公の絵本

絵本好きの皆さまで、お茶を飲みながら絵本について語るオフ会です。
ゲストの寺島ゆかさんに、絵本のストーリーの作り方や、作画について
お話しいただきます。
また、ご参加の皆さまで犬が主人公の絵本を持ち寄って、
それぞれの絵本の魅力をご紹介いただきます。
 

開催日時  :6月22日(土) 11:00 〜 13:00
開催場所  :株式会社 ジャパンライフデザインシステムズ 会議室
             東京都渋谷区南平台町15-13 帝都渋谷ビル7F
             http://www.jlds.co.jp/profile.html

定  員    :20名(最低人数6名)
          ※満たない場合は中止とさせていただく場合がございます。
          また定員を超えた場合は先着順とさせていただきます。
参  加  費 :2,800円(『もう ママったら!』著者サイン本、お茶、お弁当)
持  ち  物 :犬が主人公の絵本、あるいは犬が活躍する絵本 1人1冊以上

応募方法  :①お名前
             ②三つのうち当てはまる番号をお答え下さい。
          1会員登録済み 2非会員 3会員登録する 
             ③メールアドレス
             ④電話番号(日中にご連絡可能な番号をお願いします)
             ⑤参加人数
             ※ご同伴者のお名前をご明記ください。 

             上記項目にお答えのうえ、
             ehon_no_chikara@jlds.co.jp までお送り下さい。

締め切り   :6月17日(月)正午まで

 

皆さまのご参加を、心よりお待ちしております!

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