2008.11.26更新
"主人公がセクシーなのは確信犯"
ここ最近の人気絵本といえば"かわいらしい"主人公が
でてくるものが多い中、田中清代さん作の「トマトさん」。
どこか人間っぽく、セクシーさ漂う”熟したトマト”が主人公。
インパクトあるキャラクターは子どもから大人まで
幅広い年齢層に愛されています。
第1回目は今人気の若手絵本作家 田中清代さんに
「トマトさん」の創作童話をお聞きしました。
ミナミ:清代さんの代表作「トマトさん」が
生まれたきっかけは?
清代さん:単純なことですが、"こどものとも"で
初めて描かせていただいた作品が「みつこととかげ」
という作品で、"と" と "かげ" でお話を進めて行くという
ストーリーなのですが・・・
ミナミ:”と”と"かげ"ですか?
清代:はい。(笑)主人公のみつこが"とかげの国"に
行く途中、不思議なトンネルを通ると体がとかげのサイズになり、
その不思議な世界で"と"がつくものと"かげ"が
つくものに出会うというお話です。
ミナミ:なるほど!
そこで"と"がつく、トマトさんが登場?
清代:そうなんです。そのトマトがなぜかとても好評で、
トマトで絵本はつくれないか?というお話をいただいた
のがきっかけで。
ありのままの自分でいいじゃない!
ミナミ:トマトさんは絵本のキャラクターにしては
かわいいというより、セクシーというか・・・。
何故熟したトマトなのでしょうか?
清代:中学時代に母を亡くしたせいか
熟女への憧れがあるのかも。寂しくて。
男性が持っているマザコンのようなものに
似ているかな。セクシーの中に自分が求めている
中年女性「お母さん」の姿がある。
現代の絵本に描かれているお母さんは
30代くらいのイケてるお母さんを書くことが多いけど、
私はスーパーに行きそうな本当のお母さんを描きたかった。
清代:自分の感情、経験が全て作品に入っているかも。
自分を投影する前に、つくり物くさいような
キャラクターにはしたくなくて。
自分のイメージだけでなく、自分の体も含めてすべて自分。
否定しがちな自分、肉体的・精神的なことも
そこは価値として認めてあげたい。
そこを表現していくことに意味がある。
結果的には子どもウケと自己表現がミックスしているような感じ・・・
それから"スマートなものへの反発"もあるかな。
ミナミ:スマートなものへの反発というと?
清代:実は肉体的なコンプレックスをずっと抱えていて・・・
中学時代に器械体操をやっていたんだけど、
辞めてから20代前半までずっと太っていて、
そのコンプレックスで自己否定感がすごくて。
ミナミ:今はとてもそうは見えないですが。(痩せてます。)
清代:自分の身体が嫌い!克服したい!
・・・その気持ちを絵本で表現することによって
自分と向き合っていたのかも。
心のバランスを整えるというか。
"ありのままの自分でいいじゃない!
という思いが強く作品に込められているかな。
清代:それからキャラクターをセクシーに
描いているのは確信犯。
どこまでみんなが気がつかずに行くか?
芸術ってセクシーであることを肯定する人もいれば
否定する人もいる
・・・どのくらい表現できるか挑戦しているかも。
清代:ある昔の映画でヌードモデルがでてくるけど、
そこにはモザイクがかかっていて、逆にいやらしい。
いいではないか、エロくても!っと私は思う。(笑)
絵本でもそのへんを挑戦してみたい(笑)
●研究結果
今回のインタビューで一番の発見は清代さんの
"...絵本で表現することによって自分と向きあっていたのかも。
心のバランスを整える..."というコメントから
もしかして絵本はセラピー効果もあるのではないか
と感じちゃいました。
最近"大人のぬりえ"や"ヒーリングミュージック"や
"アロマテラピー"とかセラピー効果のあるものが
とても流行っているけど、絵本はそれと似たような
効果があるのかもしれませんね。
例えば、アロマグッズと絵本のセットがオシャレな
ギフトになったら"究極のセラピーギフト"になるかもですよ。
●田中清代さんプロフィール
1972年、神奈川県生まれ。
絵本作家、銅版画家。多摩美術大学油画・版画専攻卒業。
在学中に絵本の制作を始める。
1995年、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展でユニセフ賞受賞、
翌96年同展で入選。
作品に『おきにいり』(ひさかたチャイルド)、
『おばけがこわいことこちゃん』(ビリケン出版)、
『みつこととかげ』『トマトさん』(福音館書店)、
『ねえだっこして』(文・竹下文子、金の星社)、
『おかあさんとさくらの木』(文・紫わらし、ひくまの出版)などがある。
WEBSITE;オイカカナットの地下室
http://www.oyikakanat.com