2011.6.2更新
ゆうききよみ作 刺繍絵本
『どうして? どうして?』
刺繍絵本アーティストのゆうききよみさんが新潟から上京、
当プロジェクトを訪ねて渋谷の街まで来てくださいました。
そこで「きょうの絵本」はゆうきさんのほのぼのとしたなつかしさを
感じる作品をご紹介します。
『どうして? どうして?』
ゆうききよみ/作
★この絵本は新潟エリアでの委託販売となっています。
購入ご希望の方は、当ブログ宛てにご連絡ください。
「どうして あたしだけ おねえちゃんたちより
ちいさいんだろう。」という言葉で始まるこの絵本は、ゆうきさん
ご本人のお話です。
3人姉妹の末っ子だった「あたし」は、ふたりのおねえさんよりも
自分が小さいことが、いつもいつも不満でした。
3人で窓から外をながめようとしても、「あたし」だけ背がとどか
ないし、あかりをつけようとしても、「あたし」では電球のヒモに手が
とどかないし、きわめつけはおねえちゃんたちはランドセルを
しょってがっこうに行くのに、「あたし」だけようちえん。
うらやましくてくやしくてかなしくて。とうとうおかあさんに直訴
しました。
「ねえおかあさん どうしてあたしだけ おねえちゃんたちより
おおきくならないの?」
するとおかあさんは、「すこしづつ おおきくなるんだから
だいじょうぶ」と言って、柱の前につれていってくれました。
「ほら、すこし おおきくなってるよ」。
「ほんとだ」。きずの位置が前のよりすこし上になってました。
年下の小さい子どもが感じる、小さいことの不条理、不満。
背が大きくなることへの無邪気なまでの憧れを、手縫いのステッチ
でしみじみと描いています。とくに注目したいのが、
「あたし」の足元。どのシーンでも、くすぶっている感情が見事に表現
されていて思わず微笑んでしまいます。
少女が抱えるたわいもない不満ですが、あまりにも真剣なので
くすっとさせられながらもいつのまにか共感を覚え、
ああ、そういえば昔、自分にも似たようなことがあったなあと
なつかしくなりました。
おかあさんが面倒がらずにちゃんと向き合って解決策として背を
はかってくれるところがいいですね。
手書きの文字による「あたし」の短いつぶやきでお話は
進んでいくのですが、それがまた小さい女の子の心情にぴったり
はまってます。
絵はひと針ひと針、普通の縫い糸を使って描いています。
ポイントだけ違う糸をさし色として使っているので、繊細なステッチ
ワークが映えていて、いっそう豊かな表情が出せているのだと
思いました。
絵本の表現の可能性の一つを見せてくれた刺繍と手書き文字に
よる絵本。日常のひとこまをステッチで描く。針を進めるごとに、
遠い記憶がかたちになって残っていきます。
ゆうきさんは現在、新作の刺繍絵本を製作中。
次の作品もとても楽しみです。(ミヤタ)
★ゆうきさんのインタビュー記事は
近日中にアップいたします。お楽しみに!