2010.6.22更新

オノマトペの魔術師
 
~生命の画家 木葉井悦子~

 
新企画、「絵本日記」プロジェクトが進行中の
絵本のチカラですが、
先日軽井沢絵本の森美術館で開催された、
「生命(いのち)の画家 木葉井悦子(きばいえつこ)の世界展」
に行ってきました♪
 

 絵本の森美術館.jpg

 

木葉井さんは57年の生涯に17冊の絵本を創作し、
生命のつよさを感じるような温かく豊かな色彩に溢れた
作品が魅力で、現在も多くのファンを魅了し続けています。
今回の展示では、木葉井さんの手がけた絵本作品や
挿絵の原画から、タブロー(額絵)やペン画の作品が
一挙に公開されました。

数多くの原画と絵本を見ながら気になった点は、
オノマトペ(擬声語)の使い方がとても面白いところ。

※オノマトペ (擬声語)
きらきら、とぼとぼ、わんわんなど感覚的な表現を
している言葉。日本は世界にまれなオノマトペを
非常に多く使っている国。
(米国の5倍とまで言われている。)
   

みずまき.jpg

「みずまき」は太陽が照りつける暑い夏の日に、
女の子が水をひたすらまくというストーリーですが、
水の音がこんな表現に。
 

 しゃく しゃく しゃく 

こち こち こち 

ちゃく ちゃく ちゃく 

なむじゃぶ なむじゃぶ

なんて不思議な表現!
絵とオノマトペがいっしょになることで、まるで
魔術のような不思議なチカラが生まれる。
特に木葉井さんの作品は生命の息吹を感じる
力強い描写・躍動感があり、「しゃくしゃく」「こちこち」
といった摩訶不思議なオノマトペと妙に相性がいい。

 
忘れていた?懐かしい感覚
 

こどもは特にオノマトペが大好きで、例えば
読み聞かせをするとオノマトペの部分で
足をだんだん!と鳴らしたり、騒いだり、
赤ちゃんは、きゃっきゃ!と笑顔になったり、
元気になるらしい。

せっかくなので、オノマトペがうまく使われている
有名作家の3作品をご紹介♪

  わたしのわんぴーす.gif

「わたしのワンピース」西巻 茅子

まっしろなきれ ふわふわって そらからおちてきた

ミシン カタカタ

わたしのワンピースをつくろうっと

ミシン カタカタ ミシン カタカタ

 

 風の又三郎.jpg

 「風の又三郎」宮沢賢治 

どっどど どどうど どどうど どどう

青いくるみも吹きとばせ

すっぱいかりんもふきとばせ

どっどど どどうど どどうど どどう

 

もこもこ.jpg 「もこもこもこ」谷川俊太郎

 もこ もこ

にょき にょき

つん   ぽろり

ぱく

「ふわふわ」「どっどど」「ぱく」…やっぱり不思議な表現。
大人の大半が首をかしげます。
でも、こどものころは誰もが楽しむ感覚があったはず?!

ちなみに、夏目漱石は無音の世界に
「しん(森)」という音を聞いたといいます。

五感を使い、絵と言葉に音を聞いたり、匂いを感じたり、
色を感じたり…オノマトペをうまく使った絵本は、
忘れていた大切な感覚が蘇る、そんなチカラが
あるのではないでしょうか。
 

~研究員のひとこと~

例えば、大人が元気になるオノマトペ絵本があるとしたら…
ちょっと疲れた時、落ち込んだ時の一冊!
"小さな小さな癒しの絵本”(仮)

「ゆるゆる」
「うきうき」
「うらうら」
「ぽわぽわ」
「ほわわわ」

※このオノマトペにそれぞれ癒し系イラストが入る。
※ミニサイズの絵本。(縦7.7㎝ 横5.4㎝)

ちょっとつくってみました♪  小さな絵本.jpg

もうちょっとブラッシュアップしないとだめですね…(涙)
アイディアをもっともっと出しあおう♪(ミナミ)

 

2010.04.10更新


「絵本作家さんと話そう」

絵本のチカラおすすめ!

宮沢ゆかりさんインタビュー

 <その3>

  

いよいよ宮沢ゆかりさんへのインタビュー最終回(涙)
仕事のやり方や仕事への姿勢、
また世界で活動などをお伺いしました。
宮沢さんの仕事風景が浮かんできます!
ぜひ最後までご覧ください。

 

絵本も、趣味も、とことん没頭 

 

—どんな時にアイディアが浮かびますか?

宮沢さん:お風呂に入っているときや映画を観ているときに、
突然ピンときたりしますね。
「100Bebes」で、魔法鳥のピッチが魔法を使う場面も
そんな時にひらめきました。
家の中のものが踊りだしたり、
ケーキのお花が咲いたりしたら、
面白いんじゃないかってひらめいて描きました。 

 

 

100Bebe 2.jpg

そのシーンがこちら。
独創的な登場キャラクターがとっても面白い
ファンタジーな場面。
そんなアイディアの数々がさらに物語を盛り上げています。

  

—アイディアが浮かんだ後はどうするんですか?

宮沢さん:そうなったら、もう描かなきゃと思って、
夜中でもなんでも、制作に突入して、
そのまま没頭しちゃうこともありますね。
これは、生活の他の部分でも同じかも。

 

趣味も没頭しちゃう感じですか?

宮沢さん:そうそう、趣味とか、作品をつくること以外でも
突然思い立って、没頭しちゃったりします。
最近は、読書とパン作りにはまっているんです!
読書は、面白いなと思う本があったら、
同じシリーズや同じ著者の作品を
制覇したくなりますね。
とはいえ、大抵、途中であきちゃったり、
くじけちゃったりするんですけど(笑)

 

では、パン作りのきっかけは?

宮沢さん:パンが食べたいけど、買いに行くのが
面倒くさいと思ったのがキッカケ(笑)
たまたま材料があったから、
それなら自分でパンを作っちゃえと思って。
とはいえ、実際作ってみると、買いにいくよりも
よっぽど手間がかかったりして。
でも、何度か作っていくうちに、
だんだんとコツが分かってきて、楽しくなりました。
味もそれなりにできて。
最近は、絵を描いている合間に
パンを作っている日々ですね。

  

活躍の場は、世界に!

「100Bebes」はフランスで出版されたり、
他の作品がイタリアのボローニャ国際絵本原画展でも
入選されたりと海外でとても活躍されていますね!
その他にも海外での活動はありますか?

宮沢さん:「夏のアトリエ」というワークショップで
出会った日本人作家21人の作品を1冊にまとめた
「21人の赤ずきん(邦題)」という本が、
スペインのMedia Vacaという出版社から出版されました。
そのつながりで、その出版社の他の本にも
イラストを掲載してもらったこともあります。
その他にも、イランでのグループ展に
参加したこともあります。
ポルトガルや韓国をはじめ、
国を問わず挑戦していこうと思っています。

 

 

       akazukin.jpg 

 

(C)Media Vaca,2006
 スペインで出版された短編の赤ずきんちゃんが載った
「21人の赤ずきん(邦題)」。
宮沢さんの作品は、シュールでかわいい
独特な作風で目立っています!

 

—いろんな国で活動される中で、
その国によって好まれるテイストとかってあるんですか?

宮沢さん:あるある!その国によってもそうだし、
もちろん文化によっても全然違いますね。
明るい雰囲気の絵本が好まれたり、
ちょっと暗い感じの絵本でも受け入れられたり、
でも、それはまちまちだし、
当然その人の好みもありますしね。
だから、どんな作品が認められるかは、
そればっかりは分からないですね。
私の場合は、たまたまタイミングがよかったのかな??
ただ、評価はどうであれ、
よい作品をつくっていきたいと思っています。

  

でも国も文化も違う中で、アクティブに活動して
評価されるなんてすごいです!!
日本でももっと、絵本展や絵本のショップなどが注目されて、
絵本にスポットの当たる機会を増やしたいですね!

宮沢さん:そうですねー。絵本のチカラでお願いします!

 

はい。頑張ります!!

 

集合写真修正.jpg 
宮沢さんと研究員たちで、最後にみんなで記念撮影。
色んなお話が伺えて、とても楽しい時間でした。
宮沢さん、本当にありがとうございました!

   

<研究結果>
インタビューを通して印象的だったのは「100Bebes」が
日本語とフランス語で翻訳が違う部分があるところ!
翻訳も含めて、言葉はその国の習慣や
教育方針などが反映されるのだと感じました。
身近な文章の中に、そういった特徴が
凝縮されているのが絵本の特徴でもあり、
面白さのひとつであるんだと思います。
絵本のチカラでは、世界の絵本にもっと目を向けて、
様々な国の絵本を研究しながら、
その国の特徴や教育方針を調べていきたいと思います。
そうすることで、さらに絵本の価値が深まっていきそうです。(ミナミ)

 

宮沢ゆかりさんプロフィール
2002 日本児童教育専門学校 絵本創作専攻科 卒業
2003 2003イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 入選
2005 「MIS PRIMERAS 80,000 PALABRAS」(Media Vaca)
      Ilustrarte 2005Biennial International Exhibition of
     Children’s Book Illustration 入選
2006 「Erase 21 reces Caperucita Roja/21人の赤ずきん」(Media Vaca)
2008 1st CJ Picture Book Festival Exhibition and Awards 入選
         「100 Bébés」(Lirabelle)
2009 「TODOS LOS SERES HUMANOS NACES LIBRES E IGUALES」 
     (Media Vaca)
2010 「100 Bébés-Kamishibai」(Lirabelle)

 

宮沢ゆかりさんホームページ
http://www1.odn.ne.jp/yukarimiyazawa/

宮沢さんの作品もたくさん見られます!!

  zou.jpg
 

 

  

2010.02.23更新


「絵本作家さんと話そう」

絵本のチカラおすすめ!

宮沢ゆかりさんインタビュー

 <その2>

 

前回に引き続き、宮沢ゆかりさんのインタビューをご紹介。
今回は、宮沢さんが「100Bebes」(あらすじ)などの作品作りの上で
欠かせない道具のお話や、
制作の特徴や絵本へのこだわりが明らかに!

 

愛するのは、
鉛筆と垢抜けないキャラクター

「100Bebes」はその鉛筆で描かれた
モノトーンの独特のイラストがとても印象的ですが、
この画風はずっと続けているんですか?

宮沢さん:学生時代に鉛筆で描いたイラストが褒められたことがきっかけで、
そこからずっとですね。
でも、使っていけばいくほど、
鉛筆の事がどんどん好きになっていきましたね。

  

『使っていくほどに』なんて素敵ですね!
具体的にどんなところが鉛筆の魅力ですか?

宮沢さん:独特の風合いはもちろんだけど、
鉛筆そのものもなんだかかわいいって思うんですよね。
鉛筆はカッターで削るんですけど、その作業も楽しい。
微妙な濃淡も表現できるし、細部まで書き込めるので、
鉛筆で描くことはとっても気に入っています。
それに、鉛筆がだんだん短くなってくると『頑張ったなー』と、
完成したイラスト自体以外のところでも
充実感を感じられるのも魅力かな。
 

絵本のちから鉛筆.jpgのサムネール画像

宮沢さんが実際に使っている鉛筆たち。
すべて丁寧にカッターで削られています。

  

でも、カラーにするとか、鉛筆以外の手法にしてみようと
思ったりはしませんか?

宮沢さん:ときどき考えます。
アクリルガッシュで描いていたこともあるんですよ。
でも最近は、いざ制作となると、
鉛筆で描いたイメージが浮かんできて、
結局鉛筆での制作になっちゃっていますね。
でも平面の作品とは別に、
学生時代からポップアップ絵本も作っていますよ。
こちらはみんなカラーです。


  CIMG9381.JPG 

 CIMG9377.JPG
宮沢さんが学生時代に作った
ポップアップアート絵本を見せていただきました!
とても細かな作りと可愛さで一同感動。
ぜひ今度宮沢さんを先生に招いて、
ポップアップのワークショップをしたい!

  

絵本に戻って、
「100Bebes」をはじめ、宮沢さんの描くキャラクターは
とっても個性的ですが、モデルなどはいるんですか?

宮沢さん:特定のモデルとか、決まったキャラクターはいないけど、
私はポッチャリしていたり、ほっぺが赤かったり、
髪型がヘルメットみたいだったりとか、
少し垢抜けない雰囲気の子がかわいいなぁと思うので、
そういった感じのキャラクターを描くことが多いですね。

  

なるほど!そういった垢抜けなくて可愛いキャラクターと
鉛筆の風合いが基盤となって、
宮沢さん独特の世界観を作っているんですね。

 

 

portrait-yoroshi_r1_c1.jpg

こちらは宮沢さんの
ホームページに掲載の女の子。
確かに、ぽっちゃりしていて頬っぺが赤い!

  

絵本は自分が表現したいと思うものを

「100Bebes」は描くのに時間がかかりましたか?

宮沢さん:結構かかりましたね。
100人のあかちゃんが登場する場面や
窓が101個の家が出てくる場面はかかりました。
でも、手間をかけた分、良いものになってくれたらいいなぁと
思ってやっていました。
でも時々、コピペしたら楽だろうなぁって
頭をかすめたんだけどね(笑)
ただ絵本の制作には、実際に描くことよりも、
お話を考えたり、キャラクターや画面全体の構図を考えたりする
ことの方がより時間がかかっちゃうこともよくあります。
今も新たな作品に取り組んでいるんだけど、
ハッピーエンドではないお話もいいかな?と
考えているんですよ。

 

それはどうして?

宮沢さん:先日、たまたま読んだソ連が舞台の本が、
すごく後味が悪くて。

 

後味の悪さがよかったんですか??????

宮沢さん:そう、それがなんだか新鮮で。
絵本ってハッピーエンドなお話が多いけど、
そうじゃなくて、
読んだ後にちょっとモヤモヤが残るお話が
あってもいいかなと思って。 

 nousa-2.jpg

次回作に登場するウサギの
イラストを特別に公開!
この黒ウサギは一体何を企んでいるのか!?

 

でも、今日本で出版されている絵本となると、
中々そういう感覚が受け入れられづらいのかもしれませんよね。
みんなに受け入れられるような作品を作らなきゃとかは思いませんか?

宮沢さん:絵本などの作品作り以外の仕事だと、
そういう風に切り替えてできるんですけど、
絵本だとそういう事がどうしてもできない。
うーん、一応試しに描いてみても、いいアイデアが浮かばなくて、
結局いいやってなっちゃう。
絵本はやっぱり自分が表現したいもの、
よいと思うものを描きたいなー。

 

★インタビュー3へつづく★

 

<研究員感想>

ハッピーエンドじゃない絵本。どんな感じになるかとっても楽しみ!
確かに本でも、映画でも、幸せでない結末は、とっても後に残ります。
でもそれってその物語について、ずっと考えることになると思いませんか?
なんでああなっちゃったのかな、あの時こうしていたら、などなど。
逆に自分の想像の中で、幸せの結末を描いていけるような気がしました。
インタビューはいよいよ次回で最終回、ぜひお見逃し無く!!(ミナミ)

 

宮沢ゆかりさんプロフィール
2002 日本児童教育専門学校 絵本創作専攻科 卒業
2003 2003イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 入選
2005 「MIS PRIMERAS 80,000 PALABRAS」(Media Vaca)Ilustrarte
     2005Biennial International Exhibition of Children’s Book
     Illustration 入選
2006 「Erase 21 reces Caperucita Roja/21人の赤ずきん」(Media Vaca)
2008 1st CJ Picture Book Festival Exhibition and Awards 入選
         「100 Bébés」(Lirabelle)
2009 「TODOS LOS SERES HUMANOS NACES LIBRES E IGUALES」
         (Media Vaca)
2010 「100 Bébés-Kamishibai」(Lirabelle)

 

宮沢ゆかりさんホームページ
http://www1.odn.ne.jp/yukarimiyazawa/

  

this-custard-pudding-is-min.jpg

     宮沢さんの作品もたくさん見られます!! 

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