2011.6.15更新

ゆうききよみさんと

「鉢&田島征三絵本と木の実の美術館」

 

NO.23「ゆうききよみさんとの出会い」と、NO.27 きょうの絵本
「どうして? どうして?」でご紹介したゆうききよみさんは、刺繍
絵本アーティストの活動と平行して、新潟県十日町市の山中に
ある「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」でスタッフとして
働いていらっしゃいます。
最初は一般客として美術館に訪れたそうですが、あまりにも素敵
な場所なので、その後何度も足を運び、ついにはカフェのスタッフ
募集に迷わず応募したのだとか。

インタビューでは、刺繍絵本のこと、鉢の美術館のこと、どちらも
素敵なお話をうかがえました。

 

中面を示すゆうきさん.jpg    「この小さい女の子は私なんですよ」(ゆうきさん)

●ゆうききよみさん
1981年宮城県生まれ。新潟県十日町市在住。
2004年東北芸術工科大学デザイン工学部
生産デザイン学科テキスタイルコース卒。
現在、刺繍絵本アーティストとして活躍中。
URL:http://yukikiyomi.petit.cc/

★ゆうききよみさんの『どうして? どうして?』を
購入ご希望の方は、「PB Cafe」宛てにご連絡ください。

  

刺繍絵本への想い 

「こどもたち、昔こどもだったおとなたち、
小さい頃のわたしの不思議にこたえる絵本を描きたい。
小さい頃だっこしてもらったおかあさんのエプロンのにおいを
思い出すような、そんな絵本を描きたい。」
(ゆうきさんのブログより)

テキスタイルを専攻していた学生の頃から、ゆうきさんは
布には物語があると感じていました。そのため、提出した課題や
制作した作品には、必ず物語をつけたそうです。
そんなゆうきさんですから、刺繍と絵本がドッキングしたのも
ごくごく自然な流れだったのでしょう。

ブログで書かれているようにゆうきさんの物語のテーマは
こどもや、昔こどもだったすべての人がほっとできるような
日常のささやかな出来事。
自分の体験がベースになった、なつかしさとしみじみとした
安らぎを覚える作品ばかりです。

  

IMG_5037.jpg

ひと針ひと針、糸をさしていくたびに
想い出がかたちになっていきます。
新作絵本もゆうきさんの子ども時代の
お話になる予定です。楽しみですね!

 

「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」への想い

鉢は、まわりを山で囲まれた小さな集落。村の過疎化が進み
2005年春に、集落で唯一の小学校「真田小学校」はついに廃校
となり取り壊されようとしていました。
しかしこの学校を残したいという集落の人たちの熱い想いと
絵本作家の田島征三さんの心強いプロデュースによって
09年「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」のひとつの
作品として再利用されることになり、生き返ることができたのです。

作品は、からっぽになった校舎を舞台に、最後の在校生と
学校に住みつくオバケたちとの物語。空間絵本『学校はカラッポ
にならない』の誕生でした。
その物語が校舎いっぱいに広がって、体験型の絵本美術館と
なり訪れる人を楽しませてくれています。

 

033Tashima21_miyamoto.jpgおばけのトラペトト。教室や体育館など校舎の
一つひとつが絵本の1ページになっています。 
Photo/Takenori Miyamoto + Hiromi Seno

  

033Tashima36_miyamoto.jpg

体育館いっぱいの流木オブジェ。ワイヤーが
入り口の巨大なししおどし「バッタリバッタ」に
つながっています。鉢の山からしみ出た湧き水で
「バッタリバッタ」の頭がいっぱいになると
バッタはお辞儀をします。その動力がワイヤーを
伝わり、体育館中の流木オブジェが踊り出す
という壮大な仕掛けです。
Photo/Takenori Miyamoto + Hiromi Seno

  

木の実のオブジェ.jpg

流木に木の実を接着する作業をする鉢集落
のお母さんたち。ほとんどの人が「真田小学校」の
卒業生です。美術館の制作に集落の皆さんが
協力されました。そしてみんなの美術館が
出来上がりました

 

STA_5220.jpg

 校長室と職員室は「Hachi Cafe」になりました。
ここでは魚沼産コシヒカリと季節の焼き野菜、
妻有ポークを使ったスペインの郷土料理「アロス」
が食べられます。
もしかしたらゆうきさんがサーブしてくれるかも!

 

冬になると、雪に囲まれたすり鉢状の地形の中にすっぽり
入ってしまう「鉢」という集落。雪の山越えは慣れていないと
難しそうなので、夏場のうちに訪れようと思いました。その際には
もっと詳しく現場ルポを掲載しますのでお楽しみに! (ミヤタ)

 

●鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館

〒948-0111 新潟県十日町市真田甲2301-1
TEL&FAX 025-752-0066
開館時間/10:00~17:00 入館料/大人500円 子ども250円
e-mail  ehon_to_kinomi@tsumari-artfield.com
URL    http://www12.ocn.ne.jp/`ehon2009

★交通アクセスについては上記URLでご確認ください。

 2011.6.8更新 

「世界中で愛される

リンドグレーンの絵本」展②

 

今回世田谷文学館では、2つの展示室と3つのコーナで「世界中
で愛されるリンドグレーンの絵本」展を開催していました。

  

第1部
「スウェーデンの暮らしが育んだ
リンドグレーンの世界」

  

「子どもの本の女王」と言われるリンドグレーンは、児童書の編集
の仕事を続けながら『長くつ下のピッピ』、『ロッタちゃん』、
『エーミル』、『屋根の上のカールソン』など個性豊かな登場人物が
活躍する物語を数多く生み出しました。さらに農村の生活を描い
た『やかまし村のこどもたち』など、スウェーデンの豊かな自然を
背景にした作品を多数残しています。

2階展示室では、スウェーデンを拠点にリンドグレーンの絵本を
世に送り出してきた挿絵画家たちの作品が紹介されていました。
それぞれの画家の作風や技法は異なりますが、リンドグレーン
同様、一人ひとりの子どもたちの個性が見事に描かれ、北欧の
自然の中でのびのびと心豊かに暮らす様が散りばめられていて、
とても惹きつけられます。
『長くつ下のピッピ』が登場したスウェーデンという国の風土や
文化的背景がしのばれて、興味深く拝見できました。

  

  画像3イロン・ヴィークランド画『やかまし村の子どもの日』表紙(1961)使用後要削除.jpgのサムネール画像

絵本.gifのサムネール画像のサムネール画像

イロン・ヴィークランド画
『やかまし村の子どもの日』表紙(1961年)

 

 

 画像4イロン・ヴィークランド画『やかまし村のこどもたち』(1954-1961) 使用後要削除.jpgのサムネール画像

絵本.gifのサムネール画像のサムネール画像

 イロン・ヴィークランド画
『やかまし村の子どもたち』(1954-1961年

 

    画像5イロン・ヴィークランド画『ちいさいロッタちゃん』(1956) 使用後要削除.jpgのサムネール画像

絵本.gifのサムネール画像のサムネール画像

  イロン・ヴィークランド画
『小さいロッタちゃん』(1956年)

  

●イロン・ヴィークランドについて

(1930年~)
エストニアのタルトゥ生まれ。ロシア軍の侵攻により1944年、
難民としてスウェーデンに移住。
ストックホルムの美術大学を卒業後、1953年に出版社ラーベン
&ショーグレンに挿絵画家として応募し、リンドグレーンと出会う。
リンドグレーンはヴィークランドに童話を描く才能を見出し、
『やねの上のカールソン』シリーズや『ロッタちゃん』シリーズなど、
リンドグレーンの多くの作品に挿絵を付けることになった。
日本には1961年に『やかまし村』シリーズが紹介された。

   

第2部
「世界に飛び出すピッピ」

リンドグレーンは1941年、肺炎にかかった7歳の娘を喜ばせ
ようと、奇想天外な赤毛の女の子ピッピの物語を思いつきました。
そのお話は、娘が10歳になったとき、誕生日プレゼントとして
手作りの絵本にまとめられたそうです。
今や70以上の言語に訳され世界中の子どもたちに愛されて
いる「長くつ下のピッピ」の誕生でした。

 1階奥の展示室では、それぞれの国を代表する画家たち
によって描かれた『長くつ下のピッピ』の絵本原画や
スウェーデン語版の表紙原画などが展示され、
ピッピが世界中の子どもたちをとりこにしていったことが
見てとれます。
よく知っているピッピの物語の特徴的なシーンが、
国によって画家によってその描写がさまざまで
その違いを眺めていくことができて面白い展示でした。

  

画像㈰『長くつ下のピッピ』2jpg.jpg

ニイマン.gifのサムネール画像のサムネール画像

イングリッド・ヴァン・ニイマン画
『長くつ下のピッピ』
ニルソンを抱くピッピ(出版社用ポスター原画)
(1945年)

 

●イングリッド・ヴァン・ニイマンについて

(1916~1959年)デンマークのヴェイエン生まれ。
19歳でデンマーク王立美術アカデミーに進むが中退。
画家のアルネ・ニイマンと結婚後、スウェーデン・ストックホルムに
移住。44年に離婚。初期には油彩を中心に制作していたが、
子ども向けの挿絵画家として芸術性の高い作品を生み出して
いった。45年からリンドグレーンの『長くつ下のピッピ』シリーズに
携わったほか、『やかまし村』シリーズ、『カイサとおばあちゃん』
など52年までの間に数多くの挿絵を手がけた。

スウェーデンではニイマンによる挿絵が「ピッピ」のイメージとして
定着しており、近年は世界各地でニイマンの挿絵による「ピッピ」
の本が出版されている。

    画像8アドルフ・ボルン画『ピッピ船にのる』(1993)使用後要削除.jpgのサムネール画像のサムネール画像

  アドルフ・ボーン.gif

 
   アドルフ・ボルン画
   『ピッピ船にのる』ピッピ遭難する
 (1993年)

●アドルフ・ボルンについて

(1930年~)チェコのチェスケー・ヴェレニツェ生まれ。
カレル大学教育学部に通い、プラハ美術工芸大学を卒業後、
プラハ美術アカデミーで学ぶ。チェコを代表する挿絵画家として
『長くつ下のピッピ』をはじめチェコ語で出版される世界の名作
絵本に挿絵を手がけている。幻想的な雰囲気を漂わせる挿絵と
ともに、社会風刺を込めた作品を発表しアニメの分野でも国際的
に評価が高い。
絵本や挿絵の分野で65年、76年にライプツィヒ国際ブック
コンクールでグランプリ、BIBI1979の金のりんご賞など、国内外の
様々な賞を受賞している。
日本では『ふしぎなでんわ』(87)、『ビーテクとなかまたち』(81)
などが出版されている。

 

 

画像6ローレン・チャイルド画『長くつ下のピッピ』(2007)使用後要削除.jpg

  ローレン・チャイルド.gif


ローレン・チャイルド画
『長くつ下のピッピ』
ピッピ、ごたごた荘にひっこす
(2007年)

  

●ローレン・チャイルドについて

(1967年~)イギリスのウィルトシャー生まれ。
2つのアートスクールに在籍後、家具造り、陶器のデザインなど
様々な仕事を経験。初めて手がけた絵本
『あたし クラリス・ビーン』で1999年スマーティーズ賞銀賞を
受賞。コンピュータを駆使し、コラージュを用いながら活字を大胆
にアレンジする個性的な絵本を発表している。
2007年には、リンドグレーン生誕100周年を記念する国際的
共同出版のために『長くつ下のピッピ ニューエディション』
(オックスフォード出版局、岩波書店)を手がけ、話題を集めた。

 

 画像⑦桜井誠『長くつ下のピッピ』(1964) 使用後要削除.jpgのサムネール画像のサムネール画像

 桜井 誠画
『長くつ下のピッピ』
表紙(1964年)


●桜井誠について

 (1912~1983年)静岡県・静岡市生まれ。
同舟舎絵画研究所、川端絵画研究所で学ぶ。
大阪毎日新聞社学芸部に勤務しながら、いくつかのペンネームを
使って雑誌の挿絵を手がける。
第二次世界大戦後、児童書の挿絵画家として活躍しはじめ、
『小公子』、『オズの魔法つかい』、『アルプスの少女』、
『足ながおじさん』、『赤毛のアン』、『アンクル・トム物語』、
『家なき子』など、戦後、積極的に発刊された海外児童文学の
古典や名作の挿絵を手がけた。
『長くつ下のピッピ』シリーズ(63、64、65年、岩波書店)は
イングリッド・ヴァン・ニイマンによる原書を参照しながら
書き上げた。多くの日本人にとって、ピッピをはじめとする
リンドグレーンの作品と切り離せないイメージとなっている。
世界中の誰よりも多くのピッピの絵を描いた画家であり、
海外の評論家たちの間では、軽いタッチのリアルな線画で
超自然的な性質のピッピを、独特の現実感のある女の子として
描いたと評価が高い。

  

★資料コーナー

2007年にストックホルムで開催された「アストリッド・リンドグレーン
展」に展示された写真や、リンドグレーン記念館の紹介、絵本以外
のリンドグレーンの著作を初版本を含めて展示されていました。 

 

★特設コーナー1

「きみがピッピだ!あそびっぴ!」
1階中央に位置する空間は、この期間、「やかまし村の子ども文学館」
と題して、子ども限定の「ピッピ遊び」のコーナーが用意されて
いたり、子どものためのワークショップの会場になったり、その
発表の展示があったりして子どものためのスペースとなっていました。
ふだんなら館内で子どもの声が響くと、ほかのお客様から苦情
が寄せられることもあるそうですが、この会期中だけはご了承
いただきたいというスタンスです。

とくに感動したのは「ピッピ遊び」でした。物語に出てくる7つの
エピソードをそれぞれ遊びにして、7つのコーナーで体験できる
というものです。
たとえば、私がピッピのお話の冒頭でとても驚いた、片方の足を道
の端のみぞに入れたり、後ろ向きになって歩いたりするシーンと、
床一面にクッキーのタネを拡げてハート型でくり抜くシーン。その
どちらも再現された遊びになって、ちゃんと用意されていました!

ほかにもピッピは「床に降りません」という遊びを考えて、隣に住む
トミイとアンニカと家の中で飛び回ったりするのですが、その遊び
もあって、子どもたちが楽しそうに挑んでいました。
ピッピの髪の毛のように、ピンと左右にとび跳ねた赤毛の三つ編
のウィッグが付いた麦わら帽子をかぶって、ピッピになりきれる
コーナーまであって、至れり尽くせり。
子どもの頃に戻って、私もいろいろな「ピッピ遊び」を体験したくて
たまりませんでした。

そういえば物語に出てくるピッピの遊びってモノや道具に頼らず、
「言葉」や「創造力」をフルに活用したとびきり楽しいものばかり。
今でも世界中の子どもたちに絶大な影響を与え、愛されている
理由の一つには、そんな自由な発想への憧れと共感があるのか
もしれませんね。

  

★特設コーナー2

「世田谷文学館と子どもたち」
世田谷文学館では、年間を通してさまざまなプログラムによる
子ども向け事業を行っています。
ユニークな展覧会解説シートや関連催事の「子ども文学館」、
子どものための読み聞かせ「お話の森」、ことばのワークショップ
「ことのは はくぶつかん」、学校に出張展示する「移動文学館」
など、文芸を主とした芸術の力で、子どもたちの創造性を育む
活動です。
このコーナーでは、そうしたワークショップについて紹介されて
いました。楽しみながら、子どもたちが文学や芸術に親しめる
素敵なプログラムばかり。子どもの頃にこんなワークショップが
近所にあったら、絶対に通っていただろうなと思いました。

 

とても楽しかった展覧会。最後、エントランスの一角にある
ミュージアムショップでは、リンドグレーンの絵本や関連グッズが
販売されていました。
嬉しさとなつかしさのあまり、思わずローレン・チャイルド画の
岩波書店のニューエディションと、おなじみ桜井誠画の文庫版の
2冊の『長くつ下のピッピ』を購入。
久しぶりに“友”をうちに連れて帰ることにしました。(ミヤタ)

  ピッピ2冊 004.jpgのサムネール画像

なつかしい”友”がパワーアップして
戻ってきた! 
岩波少年文庫(上)と
岩波書店のニューエディション(下)を購入!

 

2011.6.8更新 

「世界中で愛される

リンドグレーンの絵本」展

 

子どものころ、何度も何度も夢中になって読んだ『長くつ下の
ピッピ』。その展覧会が東京・世田谷文学館で開催中であることを
『ティールグリーンインシードヴィレッジ』の種村由美子さんから
教えていただいたので、ワクワクしながら行ってきました。

 

 ピッピポスター.jpg

 「世界中で愛されるリンドグレーンの絵本」展
2011年4月16(土)~2011年6月26日(日)
世田谷文学館
〒157-0062 東京都世田谷区南烏山1-10-10
(京王線「芦花公園」駅南口より徒歩5分)
TEL.03-5374-9111 http://www.setabun.or.jp/

 

ピッピは強い。力もハートもすこぶる強い女の子。なんたって岩波
の表紙絵の中にまで「世界一つよい女の子」の文字が躍ってます
から。小学生の頃、ピッピは憧れの女の子でした。社会のルール
やマナー、価値観を超越した自由奔放なピッピのことを、とても
羨ましく思ったものです。それでいてあっという間にピクニック用に
おいしいランチを作れる。あるいは世界中から集めた珍しい宝物
を思いがけないところからひょいと差し出すこともできる。
とにかく一緒にいて飽きない不思議な女の子です。
「女の子なんだから」とか「おねえさんなんだから」といった
”世間”の妙な縛りに窮屈な思いをしがちな女子にピッピファンが
多いのも頷けます。逆に大多数の男子にとってはピッピのような
女の子は御しがたくやっかい極まりないので、敬遠する傾向が
強いのかもしれません。
そんなピッピの展覧会、小学生の子どもの頃に戻った気分。
というか、長い間はなれていた友と再会するようななんとも懐かし
く嬉しい気持ちで訪れました。 

 DSC_5940.JPGのサムネール画像

 正面のモダンな建物が世田谷文学館 

 

 DSC_5953.JPGのサムネール画像

ピッピシリーズの原画を展示してある展示室 

 

 リンドグレーン 001.jpgのサムネール画像のサムネール画像

主任学芸員の佐野晃一郎さん。館内をご案内
くださり、この展覧会だけでなく常設展や
世田谷文学館の活動までとても丁寧にご紹介
くださいました。

  

この展覧会は今から約65年ほど前にスウェーデンで誕生した
『長くつ下のピッピ』の原作者アストリッド・リンドグレーンの世界
を第1部、第2部に分けて展示しています。
さらに3つの特設コーナーが設けられ、館全体でリンドグレーン
が生涯にわたって書き続けた「子どもの憧れる生活」、「子ども
ならではの時代を謳歌する子どもたちの姿」を堪能できる構成
となっています。 

 


 

画像②ビヨーン・ベリイ画《アストリッド・リンドグレーン》制作年不詳 ©Bjӧrn Berg 使用後要削除.jpgのサムネール画像

 ビヨーン・ベリイ画(アストリッド・リンドグレーン)制作年不詳ⓒBjorn Berg

 

●ピッピの生みの親、アストリッド・リンドグレーンについて

1907年、スウェーデンの南東部ヴィンメルビー生まれ。
兄1人、妹2人の4人兄弟の長女。小さな牧場で家族と共に
過ごした子ども時代の経験が作品の下敷きになっている。
17歳で地元の新聞社の編集部にアルバイトとして携わり、
19歳でストックホルムに移り、秘書養成学校に通う。その頃、
当時ではまだ珍しかった未婚の母となり、長男ラーシュを産む。
スウェーデンでは戸籍を入れない出産は認められていなかった
ため、デンマークで出産。そのまま長男をコペンハーゲンの里親
に預ける。帰国後、24歳でステューレ・リンドグレーンと結婚し、
長男を引き取る。
1941年34歳のとき、長女が肺炎になり、病床の娘のために
『長くつ下のピッピ』のお話を思いつく。3年後、今度はアストリッド
本人が足首を捻挫。療養中にお話を書き上げ、長女の10歳の
誕生日プレゼントとして手作りの絵本にして贈った。
翌45年、その写しをラーベン&ショーグレン社の児童文学懸賞
に応募し、第1位を獲得、出版される。たちまちスウェーデン国内
で評判となり、『長くつ下のピッピ』は「子ども部屋に革命を起こした
作品」だといわれてきた。
やがて日本を含む外国でも翻訳が出版されるようになり、
今では70以上の言語、120以上の国で読まれ、1億3000万部
以上を売った。

リンドグレーンは子どもの権利や動物の権利の擁護者
としても知られ、あらゆる虐待に反対の立場を表明していた。
2002年にスウェーデン政府が彼女を記念して、児童青少年文学
賞である「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を創設。
05年に絵本作家の荒井良二氏が日本人初の受賞となった。

 

★展覧会の内容については
「世界中で愛されるリンドグレーンの絵本」展②に続けます。
(ミヤタ) 

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