『プロからプロへ、レッスンリレー』とは?
優れたコーチの元を訪れ、教えを乞い、そして次のコーチを紹介していただきながら数珠繋ぎに続けていく企画。テーマは“メンタル”と“日頃の行い”です。
前回の講師・青木信次先生から「目黒にスゴイ先生がいる」との情報を得て、お邪魔しました【メグロゴルフクラブ】。
目黒川のほとりにある、打ちっぱなし練習場です。
こちらでレッスンをされている上原雅則先生は、地域のOLさんたちのあいだで有名な“ラウンドデビュー請負人”。
――というわけで、前回と少しだけ趣向を変え、“初めてのラウンド”という設定でゴルフライフに関するアドバイスをいただいてみようと思います。
「初ラウンドなんて4半世紀前だよ……」という方もいらっしゃると思いますが、ご自身の初ラウンドを思い起こしながら、どうかお楽しみください。
上原雅則 Masanori Uehara
1963年4月5日/山梨県生まれ、東京育ち。
高校入学前に初ラウンドを体験し、3年生の全国高校選手権で好成績を残す。その後、専修大学ゴルフ部、川崎国際カントリー倶楽部(現在の川崎国際生田緑地ゴルフ場)研修生と進む。28歳のときにプロ転向。
今年50歳を迎え、シニアツアー選考会を勝ち抜き、現在ツアー参戦中である。
父親はプロゴルファーの上原節郎。親子2代で日本プロゴルフ協会会員名簿に名を連ねる。
●ラウンドデビューに向けて
――ゴルフを始めたいと思いました。まず、どうすればいいですか?
どこのスクールでも「無料体験レッスン」というものをやっています。そういったものを利用して、先生を見つけましょう。
体験レッスンは「お見合い」みたいなものです。直感の場ってこと。とくに初めてクラブに触れる人は、そのコーチが教え上手かどうかを見極めようと思うと難しいので、フィーリングが合うかどうかで判断するしかありません。楽しかったか、それとも楽しくなかったか。「絶対にイケメンのコーチがいい!」という人はそれもひとつの判断基準でしょう。
教える側のぼくとしても、体験レッスンをお見合いのように思ってのぞんでいます。だから、その人が生徒にならなかったときは、ひとりで反省会ですよ(笑)。「あのときのあれを、もっとほかの方法で説明すれば良かったのかなあ」……なんてね。
――スクールや先生に教わらず、ラウンドデビューまで持っていく方法もありますか?
むしろ、近年の流れはこっちだと思うんだけど、「ゴルフ場行っちゃえばなんとかなるよ、とりあえず行っちゃえ」というノリでデビューする人が増えています。ぼくはそれもOKだと思う。みんなで楽しくゴルフできればいいんだから。
ただし1つだけお願いがあって、行く前にゴルフのマナーについての本を一冊読んでほしいと思います。ゴルフ場では8~9分ごとにカートが出発します。1組が遅いと、うしろ全部が渋滞するんです……。たとえそのホールを終わらせることができなくても、時間が来たら次のホールへ移動するなど、そういった気遣いができるだけの知識を頭に入れてから行きましょう。
――デビュー前に教わらないのが主流とは……、驚きです。
でもね、ゴルフは難しいスポーツだから。何度かラウンドを経験したあとに、「やっぱりちゃんと教わろう」ってレッスンに来るケースも多いです。あんな恥はもうかきたくないっていうのと、ゴルフがおもしろくなったっていうのと、理由には2パターンあるかな。この時期(7月中旬)になると、そういう人がたくさんやって来ます。
――いよいよデビューの日が近づいてきました。直近、または前日の理想的な過ごし方を教えてください。
コースの予習をすることをおすすめします。女性に多いのが、当日の朝になって「今日なんていうコースに行くの? それってナニ県?」といっているタイプです。ヨーロッパなんかに旅行するときは熱心にガイド本を読む女性たちが、どうしてゴルフだとこうなのかなあ(笑)。
今は、どこのゴルフ場もコースの概要をホームページで見ることができます。前もって目を通し、コースを知っておきましょう。行きの車の中で「今日のゴルフ場って×番が名物ホールらしいよ」という会話ができると、実際そのホールにまわったときに「これが名物ホールか!」と盛り上がって楽しいですよ。
コースの予習は、プロゴルファーがやることと本質的におなじです。ぼくらも試合のときは、前日から現地に入って試合のコースをまわってみます。だから、絶対に意義のあることです。
インタビューは深夜に行われました。まるで川に向かって打つようなつくりの練習場。神秘的……
●初ラウンド当日
――朝の練習時、やっておくことを教えてください。
まず、アミノ酸を摂取しましょう。筋肉に乳酸が溜まりにくくなり、翌日の筋肉痛が緩和されます。
それから、ストレッチです。第1回の青木先生のいうことは、まったくもって正しい。球を打つより、ストレッチをしましょう。人間の体はゴムみたいなもので、硬くなっているととにかくダメなんです。伸び縮みせず、プチンと切れるゴムなんて嫌でしょう? 肉離れするってことだからね。
ただし、球数は打たないといっても、パットの練習はしておきましょう。これも青木先生がすごくいいことをいってくれていますが、コースによって芝の“速さ”は違います。スタート前に経験しておきましょう。
――プロゴルファーがストレッチを重視することはわかりました。でも、スポーツを本格的にやったことがなければ、ストレッチっていまいちどうしていいのか……。
ゴルフの場合は手首のストレッチが重要です。手を前に出し、手のひらを上に向け、反対の手でその指を下方向へ下げる……(※一緒にやらされる記者)。違う。だめ。今、どこが伸びてるか、自分自身でわかってないよね? どこが伸びているかを感じながら10秒止める、それがストレッチです。
ぼくのスクールでは最初の数分、みんなでストレッチをやります。ゴルフクラブを使ったりして、楽しくね。打ちっぱなし練習場でのストレッチは上半身を中心に行いますが、コースでは走ったり坂を下ったりする動作にも備えないといけないので、下半身のストレッチも行いましょう。
教えていただいた手首のストレッチを再現してみました。(撮影/GALAPA事業部長)
――朝一番のティーショットのとき、緊張しない方法を教えてください。
朝はギャラリーが多かったりするけど、決していいところを見せようとしないこと。普段とおなじ程度のことができれば上々です。
――バンカーや池が見えると、わざとのように入れてしまいます。なぜですか?
失敗のイメージを作ってしまっているからです。これを克服するには、練習という裏づけが必要です。ゴルフが上手くなってくると、「普段の練習の中で失敗してないから、失敗するわけない」と思えることが増えてきます。「あんな右に打つわけがない」というふうに思えたら、その失敗のイメージは消えるでしょう。
――失敗のあとの一打が成功する方法を教えてください。
打ち直しの場合は、ティーアップする位置を変えましょう。ティーを挿す位置が、3~4メートル変われば景色が変わります。失敗した景色を睨みつけて、今度は上手くやってやろうとリベンジを試みるまじめな人は多いですが、こういうちょっとした知恵でスコアが上がるのなら、取り入れましょうよ。
――上手な人、偉い人とまわると打ち急いでしまいます。仕方のないことですか?
わかっていただきたいのは、偉い人や上手な人だからって、迷惑をかけてないわけではないということです。上手な人でもミスショットをしたときに舌打ちをしたりして、雰囲気を悪くする人はいます。
だから卑屈になる必要はありません。大事なのは、見栄を張らないことです。プレー前にきちんと「初ラウンドなのでご迷惑をおかけすると思いますが、頑張りますのでよろしくお願いします」とご挨拶しましょう。そして言葉どおり頑張っていれば、誰も責めたりしません。クラブを何本も持って必死で走っている姿を見ていれば、みんな次第に応援したくなる、そういうものです。
――プレッシャーのかかるホールなど、ピンチのときに心がけることを教えてください。
空を見るんだ。
――え?
ゴルフは基本的に下を向いて行うスポーツです。ずっと足元にあるボールを打って進めていくし、移動中も傾斜がきつくて地面から目を離せないでしょう? せっかく自然の中にいるのに、今日一度も空を見上げていないということもありうる。
だからさ、ピンチのときこそ胸を張って、空を見るんだ。空の広さにくらべたら、今感じているプレッシャーのなんて、なんてことはない。
一応、科学的な根拠も話しておきましょう。空を見上げると、肩甲骨が開きます。新鮮な空気も入ってくるし、なにより次、胸を張った状態のまま構えることができます。ピンチのときは大概、構えが萎縮してしまっているものなので、ぜひ試してみてください。
「空を見るんだ」と、上原先生。シニアツアー出場は伊達じゃない。
――ありがとうございました。ここで、上原先生の手元に、なぜか契約される「MIZUNO」のカタログが……。「宣伝になっちゃうけど、いいのがあるんだよ」とのこと。
【後編】は、ゴルフ用品の進化についてなどもお話しいただきたいと思います。靴が痛い人は必見です!
【後編】の更新は7月29日(月)になります。
取材協力:メグロゴルフクラブ
http://www.golf.fuji-group.jp/
※上原雅則先生のレッスンに関しては、下記にお問い合わせください。メグロゴルフクラブと宿河原ゴルフセンター(神奈川県川崎市)で行っています。
【上原プロゴルフスクール/ミズノゴルフスクール】
TEL 0120-084-562