ISLAND GOLF CULB GALAPAのみなさま、こんにちは!
『プロからプロへ、レッスンリレー』の時間です。
最近、ここまでの記事をあらためて読まれた方から、ポツポツと感想をもらえるようになってきました。
「ゴルフってインストラクターによって、いろんな考え方があるんだね!」とか。
先生方のパターンとして、「基本は○○だけど、ぼくの経験では××がさらに大事」というような話し方をなさいます。どうやらこの「××」の部分に、“目からウロコ”がぎっしり詰まっているようなので、これからも注目していきたいと思います。
さて。
本日は前回の講師・平野義裕先生からの紹介で、【ツーサムゴルフスタジオ/代々木スタジオ】にやってきました。お目当ては松井丈ヘッドコーチ!
鍛えぬいた体のイケメン先生に、美しい(格好良い)ゴルフ、ひいては美しくなるゴルフライフをお訊きします。
松井丈 Joe Matsui
1974年2月9日/東京都生まれ。
叔父であるプロゴルファー松井功から贈られたジュニア用のクラブがきっかけとなり、9歳からゴルフを始める。
成城高校ゴルフ部出身。栃木県烏山城カントリークラブでの4年間の修行と各地ミニツアーを経て、【ツーサムゴルフスタジオ/代々木スタジオ】のヘッドコーチに就任。日本プロゴルフ協会 A級ティーチングプロ。
趣味はトライアスロン。
――少し雑談よろしいですか? 前回の講師、平野義裕先生とは米国のパームスプリングスで出会ったそうで。
たまたま父の別荘があったんです。パームスプリングスはシカゴやカナダなど、寒い地域の人たちの避寒地で、ゴルフ場に隣接するように彼らの別荘が並んでいます。行くと2ヶ月くらい滞在していましたが、15~16年前だったか、平野プロが単身ゴルフ留学にいらして……日本人がいることはあまりない場所なので、自然と知り合いになりました。
いっしょに練習やラウンドを行いましたよ。
その後しばらく会っていませんでしたが、お互いティーチングプロになってから試合で再会しました。
――こちらの【ツーサムゴルフスタジオ/代々木スタジオ】について教えてください。かなり広いですが、打席は2つだけですね。
ツーサムゴルフスタジオは、専属コーチ型・完全マンツーマンレッスンの室内ゴルフ練習場です。いちばんの特色は、毎回必ずスイングを撮影してスイング分析をすること。2打席のみにしてあるのは、全方向からスイングを撮影するためです。石川遼くんも使っている弾道解析マシン「GC2」も導入しています。
また、レッスン後には担当したコーチがカルテを作成します。カルテは生徒さんがオンラインで確認することが出来るので、なにを教わったのかを思い出して、次の練習やラウンドに生かすことができます。
どちらかというと経験者向けのシステムで、すでに試行錯誤を重ねてきた生徒さんと向き合い、スイングを“リフォーム”していくイメージでしょうか。
松井先生が作成したカルテ。【ツーサムゴルフスタジオ】が支持される理由がここに詰まっています。
――松井先生はどんなタイプのゴルファーを教えることが得意ですか?
スイングに悩んでいる人を教えるのが好きです(笑)。初心者のスイングを1から作るのは簡単で楽しいですし、上級者が長年悩んでいた原因がわかったときは、それを伝え、いっしょに直していくというまた別の楽しみが生まれます。
ぼくのレッスンは、まず「答え」を教えます。「これが正しいスイングだ!」と。本当は、スイングはとても単純な動きで作られているんです。
それから、その「答え」に向かう「動き」や「形」を作っていきます。答えがおなじでも、それを実現する「動き」や「形」は、体型などによって異なります。
――「答え」はレッスンの末にわかるものだと思っていました。
ぼく自身、なんのためにやっているのかわからないまま練習することが好きじゃなかったんだよね。自分自身が受けたいレッスンを追及した結果、今のスタイルになりました。
カルテ制作中の松井先生。
こちらは、弾道のチェックを行っているところ。
●美しいラウンド・前日
――前日の理想的な過ごし方を教えてください。
時間があれば、練習場に行くべきです。前日に練習したら疲れるなどという人がいますが、そんなわけがない(笑)。マラソンランナーがレース前日に20キロ走ったというのなら影響がでることもあるでしょうが、練習場で球を打つくらい大丈夫! 100球から150球、軽く打ってきてください。
食事はお肉や脂っぽいものを控え、糖質を適度に摂取しましょう。朝ごはんを食べたあと、普通に過ごしていても、昼にはお腹がすくものです。ゴルフではこの間、長い距離を歩くけど、お腹がすいたと思ってから補給しても、車のガス欠とは違うから間に合わないよね? 前日から、野菜や米、パスタやうどんなど、糖質を摂っておきましょう。また、油は糖質の吸収を悪くするので避けます。
理想のメニューは「鍋」かな。使う肉も牛豚より、鶏。それもモモ肉より、ムネ肉がよろしい。
――鶏ムネ肉の鍋ですか(泣)。
嫌だったら、フグチリでもいいんじゃない?
松井先生のアドレス。
●美しいラウンド・スタート前
――いよいよ当日になりました。
ラウンド当日は、スタート時間の3時間前までに起床して、スタートの1時間以上前にゴルフ場に到着して、食事もすませておきましょう。
――おすすめの朝ごはんを教えてください。松井先生の勝負メニューは?
ぼくはゴルフ場で食事をするときは和定食です。すなわち、シャケと納豆とご飯と味噌汁がぼくの勝負メニューです(笑)。大体おかわりをします。
――朝の練習時、やっておくことを教えてください。
まず、準備運動として「ゴルフヨガ」を行い、体をほぐします。「ゴルフヨガ」は、ゴルフをやる人のためのヨガメソッドです。ぼくの友人でもあるヨガインストラクター、今井美紀と共同で開発し、共著も出版しています。ちょっと、やってみましょうか(といってドライバーを取り出す先生)。
ゴルフヨガのポーズ3連発いきます! ラウンドレッスンでは生徒さんといっしょに行うそう。「これをやってから打つと、最初からスパンと当たるんだよね」
――球も打ちますよね?
当然。ただしコーチが付いているひとであれば、日頃いわれていることを思い浮かべながら打ってほしいと思います。自分がチェックポイントとしていることを、ちゃんと守る練習です。ルーティンがあるなら、“ルーティンの練習”をしたっていいんですよ。素振りは1回なのか2回なのか、ワッグルが1回なのか2回なのか、構えてからどれくらいでテイクバックするのか。とにかく、日頃練習でやっていることを忘れないで打ちましょう。
こちらは共著『ゴルフヨガ・メソッド』。アマゾンなどで購入できます。
●美しいラウンド・午前
――朝一番のティショットのとき、緊張しない方法を教えてください。
ルーティンを守ることです。ぼくがルーティンの大切さを痛感したのは、プロテストのときでした。初日の1番ホールのティショットで、やたら心臓がバクバクしちゃったんです。「このままじゃ打てないな」と思ったほどでした。でも、素振りをしてクラブヘッドをポンと置いたらすぐテイクバックするのが、現在でも続くぼくのルーティンです。それを守って、ナイスショットを打ちました。
朝一のティショットは誰でも緊張します。ぼくも試合では緊張します(笑)。なので、日頃から「プレショットルーティン」を練習場でもやっておきましょう。緊張した場面でルーティンが守れると気分が落ち着くし、ミスショットが少なくなります。
――バンカーや池が見えると、わざとのように入れてしまいます。なぜですか?
「メンタルが強い」「弱い」といいますが、本来メンタルに「強い」も「弱い」もありません。メンタルとは、意識したものの裏返しです。意識に対して、我々が「無意識」「潜在意識」と呼んでいるもの……それが「メンタル」の正体です。つまり、意識の側で「池がある!」と思うと、その裏側であるメンタルが「池がある! きっと池に入るぞ!」と出てきて、池に打たせるわけです。
――メンタルが池に打たせようとするなんて(泣)。
そうですよ。だからメンタルというものは、出てこなければそれにこしたことはない。池を意識しなければ、「きっと池に入るぞ!」というメンタル自体が存在しなくなるわけだから、池に入れずにすみますよ。
実際、プロは池のことなんて考えていません。明確な成功のイメージだけを持って、プレーしています。
――失敗のあとの一打が絶対に成功する方法を教えてください。
失敗した後の一打は、失敗した原因をフィードバックしないことです。なぜなら、アマチュアの方が自分自身で原因を分析しても、それが合っているとは限らない……。普段から練習しているように、今できる最高のショットを打つことに集中してください。
――上手な人、偉い人とまわると打ち急いでしまいます……。
負い目を感じてしまうということですね……。本当に上手な人や偉い人は、気にしないものですよ。器がでかいんです。そう思っておきましょう。
――プレッシャーのかかるホールなど、ピンチのときに心がけることを教えてください。
ルーティンを徹底しましょう。ルーティンの良いところは、ルーティンを守ることに集中することで、メンタルが出てきづらくなることです。
――松井先生にとって、「メンタル」は本当に悪いことなんですね!
悪いことというか、出てこられないようにしたいもの、かな。この考え方の基になったのは、岡本正善氏の講義です。
※岡本正善……多くのプロアスリートと契約するメンタルトレーナー。自分自身を徹底的に肯定する手法により、潜在している力を引き出す。
――効果的な素振りの仕方を教えてください。
ラウンド中の素振りも、練習の素振りも、ほとんどの人が“準備運動”になってしまっています。ただ力を込めて、一生懸命振るだけの素振りに意味はありません。素振りは準備運動ではなく“リハーサル”なので、正しいスイングをイメージして、本番より少しゆっくりスイングすることが大切です。
ゆっくりスイングしてもらいました。ここがちょうどインパクトです。
――アプローチでいったりきたり……どうすれば適度な距離が打てますか?
アプローチは“野生の勘”で打ちましょう。
「腰から腰まで」とか「9時から3時」とか振り幅で教わっている人が多いと思いますが、ぼくは振り幅では教えていません。なぜなら「9時」と思って本当に「9時」に止められる人はいないからです。人間には0.4秒ものリアクションタイムがあることを知っていますか?
大体、ボールや物を手でポンッと投げようと思ったとき、どこまで後ろに引くかなんて考えないでしょう。手の感覚と経験で、自然に行っているはず。この野生の勘を、ゴルフでは他のスポーツに比べて使わない傾向にありますが、もったいないですよね。
ぼくがそのことに気づかされたのは、叔父(※松井功)とまわっていたときです。グリーンまで少し距離があったので、歩測しようと思ってぼくが歩いて行ったら、少し前にいた叔父が、「なにやってんだ、早く打てよ」というんです。「いや、歩測しようと思って……」、「歩測!? そこにピンがあるじゃねえか。さっさと打てよ!」と。叔父はそういうひとでした。
――パットでいったりきたり……以下同文。
パットも同様です。振り幅を考えるより、どのように球が飛んで、どのように転がっていくのかを、明確にイメージすることが大切です。
前から撮影できるなんて初めてで、興奮しました。松井先生、ナイスショット!
――ありがとうございました。【後編】は舞台を松井先生のトレーニング現場に移し、ラウンド後半の体力維持や、ゴルフにまつわるライフスタイル全般についてお訊きします。
●【後編】の配信は9月2日(月)になります。
取材協力
ツーサムゴルフスタジオ 代々木スタジオ
TEL 03-5302-0236
※ 松井丈先生のレッスンは、月~土曜日です。上記までお問い合わせください。
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http://www.jlds.co.jp/galapa/2013/07/lifedesign-golf-diary-2014.html