ISLAND GOLF CULB GALAPAのみなさま、こんにちは。
第3回の講師・平野義裕先生からバトンタッチを受けた、松井丈先生の『プロからプロへ、レッスンリレー』。いよいよ【後編】です。
本日はゴルフ練習場を離れ、松井先生の身体トレーニングの場からお送りします。なんと、朝6時の豊洲埠頭です!
じつは、先生の趣味はトライアスロン。今からこのエリアで仲間との練習会が行われるそうです。参加者はトライアスロン業界のパイオニア的存在であるスポーツナビゲーターから、普段は実業団で走っているマラソン選手までさまざま。
「ゴルフとトライアスロンを両方やる人は多いですね。クラブと自転車を持ってハワイへ行くことが、普通のことになりつつあります」(白戸太朗氏/スポーツナビゲーター)
【後編】は松井先生と並走しているような気分を味わいながら、ラウンド後半の体力維持や、ゴルフにまつわるライフスタイル全般について学びます。
松井丈 Joe Matsui
1974年2月9日/東京都生まれ。
叔父であるプロゴルファー松井功から贈られたジュニア用のクラブがきっかけとなり、9歳からゴルフを始める。
成城高校ゴルフ部出身。栃木県烏山城カントリークラブでの4年間の修行と各地ミニツアーを経て、【ツーサムゴルフスタジオ/代々木スタジオ】のヘッドコーチに就任。日本プロゴルフ協会 A級ティーチングプロ。
趣味はトライアスロン。
――トライアスロンが松井先生のゴルフに与えた影響を教えてください。
ラウンドしても疲れなくなりました(笑)。さすがに体力がつきましたね。それから、ぼくはトライアスロンのおかげで初めて、正しい栄養補給のタイミングがわかりました。レースでハンガーノック(※肉体がエネルギーを失った状態)を経験したことで、【前編】でお話しした糖分摂取の重要性などをあらためて学んだと思います。
飛距離はトライアスロンでは変わらないようです。特に水泳(※トライアスロンは水泳、自転車、マラソンで構成)は関係ないですね。水の中で行うスポーツの動きはなんだかんだいっても“遅い”ので、ゴルフのような“速い”競技とは親和性が少ないのでしょう。
――ゴルフにない楽しさはありますか?
ぼくはゴルフをやる以上、1番になるつもりでプレーします。だけどトライアスロンの場合は、「あのオッサン、なんであんなに速いんだ~」とある意味、呆れ返りながら頑張れるところがいいですね。わかってもらえないでしょうが、過酷なだけでなく非常に楽しい競技なのです。
――あんまりわかりません(笑)。それでは本題に入りましょう。
続々と集まりはじめるトレーニング仲間たち。緑のウエアが松井先生。これから1周1キロのコースを10周走る。
●美しいラウンド当日・午後
――午前中のスコアがぼろぼろの場合、どのように気持ちを切り替えたらよいですか?
午後一のスタートですが、前半がどうであれ、つねに一打一打に集中することが最終的なスコアを良くするポイントです。午後だからというのではなく、今打とうとしている目の前の一打に集中することです。難しいですけどね……。
――午後も体力を保つ方法を教えてください。
補給してからエネルギーに変わるまでのタイムラグを考えると、昼食も吸収されやすい糖質系にし、脂っぽいものは控えます。「VAAM」(明治乳業)のような体脂肪をエネルギーに変えるアミノ酸系サプリも摂取すると良いと思います。
――VAAM! 前回の講師、平野先生からも出た名前の出た商品です。
ぼくもラウンド前には必ず飲みます。トライアスロンの距離をずっと長くした「アイアンマン」という競技があるのですが、その競技中、ぼくは3,000キロカロリーを摂取し、VAAMを3本飲みました。
――最終ホールで気をつけることを教えてください。
最終ホールはスコアが気になるところです。初めての100切りとか、70台を出せるかもとか、記録がかかっていればなおさらです。それでもやはり、目の前の一打に集中すべきでしょう。
また、そこまでにいろいろとミスをしていれば、「最終ホールだけは……!」などと意気込むものですが、できないことはやらないことです。起死回生の一打はゴルフにはないのです。
街中じゃ絶対見ない、速いペースのジョギング! 先頭集団に松井先生。
●美しいラウンド・終了後
――プレー後、絶対やるべき体へのメンテナンスは?
疲れた筋肉を癒すために、お風呂は入っておきたいですね。水の中では体に圧がかかります。その圧が筋肉の回復を助けます。だから、「SKINS」などの圧をかけるウエアは運動するときに履いてもいいのですが、基本的には運動後に履くものです。寝るときに履いても良いくらい。
それからストレッチ。そして、疲労回復に効くクエン酸や糖分を摂取しましょう。オレンジジュースは、ビタミンもクエン酸も糖分も摂れるのでおすすめですね。
――今日のゴルフを振り返ってやっておくことはありますか?
ほんとうはゴルフ場で練習して帰ってほしい……。ラウンドすると、どうしてもスイングは崩れます。それを元に戻すための練習をしてほしいけど……しないよね(笑)。
頭で振り返るのならば、自分のウィークポイントをスコアカードから発見することです。OBが何発あったか、グリーンに何回乗せられたか、バンカーから寄せワンは取れたか、アプローチで何回寄せワンが取れたか、パター数はどれくらいだったか。これらの反省が次回の練習につながれば良いと思います。
職業病か、後から戻る仲間たちにそれぞれタイムを読み上げてあげる松井先生。インターバルを計るのもいつも松井先生でした。
●ゴルフライフ全般に対するアドバイス
――練習してもスコアアップせず、頭打ちだと思ったときはどうすればよいですか?
練習しているのにスコアアップしない場合は、練習方法が間違っていることが考えられます。練習するべきクラブ、距離を間違えているとかね。
また、練習でスライスばっかりする人がいるとしたら、それはスライスの練習をしているようなものです。“下手を固める”だけ。何が間違っているか、映像でスイング解析してくれるところに行ってチェックしてもらいましょう。
――歳を取り、飛距離・スコアが落ちてきた場合はどうしましょう。
年齢を重ねて飛距離が落ちてきたら、その距離を自分のものとして受け入れましょう。スコアを崩さないポイントです。
遠くに飛ばすことや、ボールをカップに入れることがゴルフのゲームではありません。ボールを何打でカップに入れるか――それがゴルフです。ぼくの母は、飛ばないし、スイングもへんてこだけど、打数を減らすためにはどうすればいいのかを考えられる人です。そういう人を“ゴルフが上手”というのではないでしょうか。
――ちなみにゴルフって何歳までできるのでしょうか?
90歳以上の現役ゴルファーはかなりいると思うので、それくらいまでは無理をしなければ充分できると思います。
――怪我をしないために、気を付けることを教えてください。
どこか痛くなったりしたら、間違ったことをしていると思って、すぐにスイングを変える必要があります。痛いときはスイングに無理があるのです。
――ゴルフのスイングについては、「日常生活にない不自然な動きをしているんだから、ちょっと苦しく感じるくらいが正しいフォームになっている」といわれていませんか?
個人的な見解ですが、それは間違いだと思います。もしゴルフのスイングが痛いものだったら、プロが何百球も打てませんよ。ぼくの考えるゴルフの辞書に「痛い」「苦しい」という言葉はありません。
あと、日本の練習場は生の芝ではないので下が固い……。それも痛くなりやすい原因ですね。ぼく自身、日本で肘を痛くしたあと、冬のあいだパームスプリングスで練習したら治った、という経験をしています。
――メタボの人が格好良い体型になるにはどうすればいいですか?
ランニングがいちばん痩せます。ただし、普段走らない人が走ると最初はひざが痛くなり、長くは走れません。先にひざの筋肉をつける必要があります。だから今すぐに痩せたい場合は、ひざを痛めないエアロバイクがいいでしょう。エアロバイクを40分やれば、驚くほど汗がでますよ。
えぇ~、そこはゴルフで痩せようっていってくださいよ。と突っ込みつつ、レースでバイクに乗る松井先生。左の写真はアイアンマン完走記念!(提供/松井丈)
――解説書によって書いてあることが異なる場合、なにを信じればいいですか?
ゴルフのレッスン書は危険です。筆者は読み手がどのような状態なのか、考慮してレッスン書を書いていません。そして読み手は自身の状態によって、いろんな解釈をするわけです。小説ならいいけど、スポーツで誤読があるとたいへん危険です。
――松井先生が推奨する本もないと?
ない(笑)。ゴルフのレッスンには、解説書を読んで誤解された方がたくさん来ます。その誤解を解くことから始めるくらいだもん。
――上手くしてくれる、美しくしてくれるインストラクター探しのポイントは?
きれいなスイングをしている先生は、きれいなスイングを作ってくれます。
――一般的には、インストラクターの先生のスイングを見る機会はありません……。
打ってみてください、といえばいいですよ。美的センスのない先生に教わらないほうがいい。インストラクターは、自分とおなじスイングを作ろうとするものです。
そう考えると、スイングのきれいな生徒を教えている先生は、自身もスイングがきれいなはずですね。
――女子プロで可愛いと思うのは誰ですか?
女子プロで可愛いと思うのは……しいて挙げなければいけないなら、小池リサプロかな……。
――最後に、松井先生からひとことお願いします。
みなさまにゴルフというゲームの楽しさを伝えたい――それが、ぼくのモチベーションです。多くの人が未だ、ゴルフを“ボールを打つゲーム”だと思っています。そうではなくて、ゴルフは“打数を減らすゲーム”です。ゴルフの醍醐味はそこにあります。そうとがわかれば、格段に楽しくなりますよ。
また、ゴルフはいつ始めても遅くはないけど、なるべく早く始めたほうが良いです。ぼくもみなさまのゴルフライフが少しでも良くなるように、これからもPGAの会員として務めていきます。
第4回はこれにて終了です。
なにゆえパームスプリングスにお父様の別荘があるのか、そしてそれは普通のことなのか――訊きたくても、グッとこらえる取材となりました(訊いてよかったの??)。
強い体に美しい容姿を持ち、それでいてすごくオープンハートな先生でした。ゴルフ哲学も人間の持つ能力を信じるもので、インタビューしていて気持ちよかった! 松井先生、ありがとうございました!!
●次回は連載初の女性インストラクター、吉村史恵先生が登場します。
取材協力
ツーサムゴルフスタジオ 代々木スタジオ
TEL 03-5302-0236
※ 松井丈先生のレッスンは、月~土曜日です。上記までお問い合わせください。
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