今週のIMAGINASメインキーワードは「あるない革命」。従来の仕事のあり方の革新的な変化を示す言葉だが、事例となったのは3Dプリンターに関する日経新聞の記事だ。
3Dプリンターが今後の生産様式を変える大きな要素となるであろう事は想像に難くない。
産業革命における職人ギルドの崩壊と大工場制への移行も歴史上大きな転換点と言えるが、更に近い事例として近代ヨーロッパにおける写真の普及と画家の役割の変化を挙げたい。カメラが発明されるまでは、貴族の肖像画を描く事によって画家は日々の収入を得ていた。だがカメラは当然画家以上の精密さをもって貴族の姿を記録する。画家は役割を奪われ、それが印象派など単なる写実主義を超えた新たな芸術運動の原因の一つとなったという考え方がある。
3Dプリンターの需要は世界で拡大している。既に12年実績は前年比29%の22億400万ドルだが、米国の調査会社によると2012年の世界市場規模は5倍の108億ドル(日本円にして1兆900億円)に達すると予想されている。
従来、何か3次元的な物を作ろうと思えば素材を流し込むための「型」が必要であった。3Dプリンターはその「型」を不要にする。また、パソコン上でのデータを完全に再現することが可能となる為に手技でもって職業的意義とするいわゆる「職人」にとっては3Dプリンターの登場はこれまでの仕事のあり方を根本的に変革するものになるだろう。
さて、近代以前までの画家たちも貴族の姿を2次元上に再現するという「職人」だった訳だが、カメラの登場によって始めて「アーティスト」は現代の意味でも使われているような言葉となった(本来「アート」は技巧や技術を表す)。現代の「職人」達もやがて「アーティスト」になるのだろうか。だとすれば彼らはどのような表現手法を発見するのだろうか。3Dプリンターの登場が彼らの凋落ではなく新たな船出となる事を祈って、今後を見守りたい。
(編集部I)
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