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2014年4月11日 16:46

クール・ジャパンと支援金

 

Q日本における西洋音楽は将来どうなりますか?

 Aそれが解れば苦労しないんですけどね(笑)。

まぁでも、文化と芸術、という言い方があって、日本では5年か10年前までは用語としてはそういうものの総称として「芸術文化」という言葉を使っていました。だから色々な自治体、国家のもっていた財団で昔からあるものは芸術文化○○財団というところが多かったんです。ちょうど国の改革の中で基本法の改革や作成が行われていました。

文化や芸術に関する基本法も作るということで国会に上げられたときには「芸術文化基本法」という名称でした。

 

 

Qなぜ入れ替わったんでしょうね?

A現在の第二次グローバル化の中で、取りあえず今までの価値観をチャラにして世界共通の

尺度から芸術ってなんだろうって考えたときに、つい10年前まではクラシックやピカソやゴッホが芸術だというように固定されていたものが曖昧になって、世界共通の具体的な価値として数字、お金がクローズアップされ尺度として残った。確かにお金が通用しない国は無いですからね。

そこで、ちょっと算盤勘定してみようと(笑)。

すると芸術で稼いでいる外貨よりもアニメとかマンガで稼いでいる外貨の方が遥かに多かった。しかしアニメやマンガは芸術とは言われていない、では文化なのだろう。

基本法が成立して国会を出てきたときに名称は「文化芸術基本法」になっていました。

「クール・ジャパン」という名称もついてきました。

支援金予算も文化庁ではなく経産省へ。

 

 

Qこれで良いのかという気は皆してると思います。

Aお金だけで芸術や文化の優劣が決められてしまう今の状況を少なくない人がおかしいんじゃないかと思ってくれてはいると思うんですけどね。

ただブランディングという観点から言えば、短い時間ではブーム、長い時間で熟成されたものが芸術というのだろうと思うんですが、やっぱり確固としたブランドを確立するには長い時間をかけないといけない。クラシック音楽は日本の百年にプラスして数百年の時を経ています。それだけの力をクラシック音楽は持っているんです。

 

 

Qブランディングっていう言葉が出来る前からあった訳ですからね。

Aそうですね。最初から素晴らしいものとして確立したものを輸入したわけですから、必要なかったんですよ。クラシックは敷居が高いとよく言われますけど、これはその弊害ですね。演奏家というのは凄く偉そうなんですよ(笑)。本人は気づいていないんですが(笑)。海外で勉強して確立したブランドを神の領域までそのまま持ち込むから、どうしても偉そうになってしまう(笑)。

私は演奏家が尊ばれるのは過去の西洋の遺産だと思っています。親の遺産も食い潰すだけではいずれ無くなる。遺産を食い潰すのではなくて遺産を土台にしてその先に進まなくては。

 

Qクラシックの世界の中では日本人よりヨーロッパ人のほうが有利なんですね。

Aやはり西洋のものは素晴らしいという明治維新からの強力な国策というのが3代に亘って浸透していますから、3代も続くとその文化度がDNAの中にも入るんでしょうね。文化度っていうのは価値観のことで、価値観というのは比較なんですよ。日本はガラパゴスのように海に囲まれているから比較の対象があまり無いんです。比較しようという気持ちが余り無い。良い面は人種差別ということが外国に比べたらあまり無いことでしょうか。

やはり日本は環境としては特殊です。その特殊な環境が、情報の垣根がはずされるグローバル化で一気に変わろうとしているわけですよ。

日本のオーケストラが100年続いていると言っても、その前には3000年の日本人の歴史がある。その感覚はちゃんと残っているわけですよ。100年そこらで日本人のガラパゴス的遺伝子が変わるわけじゃないですから。ガラパゴスをわれわれの遺産として西洋の遺産との

ハイブリッドを創り出す事なのでしょう。

何処までも進化のハイブリッドです。

 

今回の取材を通じて日本という国の特殊性。日本は東洋の中で唯一西洋列強からの支配を免れたが、その結果として文化・芸術など様々な分野にわたるガラパゴス化が進行した。グローバル化によってそのガラパゴスに押し寄せる波はこれからの日本をどう変えて行くのだろうか。日本に於いて西洋の音楽に携わる石丸氏だからこそ知見できた洞察だった。

取材が終わった後に

 「石丸さんがクラシック以外で好きな曲は何ですか?」

 と尋ねた。

 

APink Floydが好きなんですよね。パーカッションで一緒に演奏したこともあるんですよ。『原始心母』という曲をね。

 

Qプログレッシブ・ロックとクラシックは周縁性がありますもんね。

Aあれは日本だとプログレッシブ・ロックとかサイケデリック・ロックとかそういうジャンル分けが出来ちゃってますけど、海外では音楽に垣根なんてほとんどないんです。最低限分けるためのボーダーみたいなのはありますけど。これからは日本でもジャンル分けはなくなっていくんじゃないですか。色んな意味でボーダーが取り払われるでしょう。