2015年9月 7日 09:24
情報社会は情報をアイコン化させ、すべてを可視化させる社会です。情報の受発信が自由にできるようになり、それぞれの事象に関して個別具体に説明することができるようになりました。そのため、生活者のコミュニケーション感性は、ますます研ぎ澄まされていき、見て聞いて理解できるものしか信じない風潮すら感じられます。それは、さながら「見える化」に支配された社会と言っても過言ではありません。しかしながら、目で見て認知できるものの本質とは、あくまで客観的に表現された知識の集約であり、いわば表面的な記憶だといえるでしょう。一方、見えない、聞こえないものは、場に漂う危険を察知するような感覚的な認識であり、それによって見えない本能的な記憶が呼び起こされます。視覚や聴覚による記憶が知識だとすれば、その本能的な記憶は、知恵と言えるでしょう。そこに美意識が存在しています。それは、まさしく未来社会を構想する源となるものです。見えざる記憶こそ、これからの情報社会を正しく歩むためになくてならない、人間的要素であるということを心にとめておきたい。