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2016年5月 9日 13:46

■デンマークと江戸の意外な関わり

-どうしてそんなに日本が盛り上がっていたんでしょうか。

そこでまたショックを受ける事実を知りました。

そもそも北欧は本来貧しい農村国で、周囲をロシア、フランス、イギリス、ドイツなどお金持ちで強い国に囲まれていつも縮こまっていたんです。

1880年代、デンマークは日本美術の基本的な特徴を数多く吸収し、20世紀のデンマークをデザインの国へと変貌させた重要な前提をなしているのです。日本文化の与えた影響は多大であり、装飾美術にそれまでにない刺激を与え、工芸(クラフト)やデザインの幅広い分野で急速に新しい効果をもたらしたそうです。

 

-北欧は日本のデザイナーの憧れの対象ですが、実は彼らの源流は我々日本人だったんですね。

それを僕の先生は全く教えてくれなかったので、知った時は非常にショックを受けました。日本展を2年もやってくれていることから分かるように、国を挙げて日本に感謝しているそうです。

40年ぶりにやってきた日本人ということで、僕の話を面白がって向こうの大手新聞2社が記事にもしてくれました。

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■日本のデザインがとるべき道は

僕は販売から開発までやっていますけど、皆さんやらない。なぜなら儲からないから。椅子を一脚作るのに2~3年掛かりますが、椅子って一生に何回も買わないでしょ。凄く良い椅子を作って、孫の代まで使えるようなものだったとしたら、次に買いに来てくれるのは孫の代でしょ。それをリスクを背負ってまでやるというのは効率が悪い。

テーブルなどは引越しの時に買い換えますが、椅子は持っていく人も多い。人生のうちで数えるほどしか変えないんですよ。

それに、日本は障子と畳があれば、光が充分に差し込んでくるんです。港町でも、美味しい海産物が取れるところは料理しないでしょ。日本は四季があり、気候としては非常に良い。でも北欧はどんより暗く、環境が悪く、家の中で過ごす時間が多いのでインテリアが育った。

ヨーロッパの家具デザインは石の建物の中でできたもので、それと同じ土俵で戦ってもしょうがない。

 

■日本のままで良い、このままで良い

でもこっちにも障子と畳があります。畳文化は約400年続いていて、椅子が普及し始めたのはたかだかここ50年ぐらいですよ。

畳って凄いですよね。布団を敷くとベッド、ちゃぶ台があれば応接間やリビング、襖を開ければ広間にもなる。デンマークから来た人も、どこに行きたいかと聞いても東京の建築のデザインには興味は無く、畳の上で寝てみたいと言うんです。日本の家具は畳で、いくら良いデザインをしてもそれには適わないと思います。

 

-相手の土俵で憧れるのではなく、自分の特性を活かしたデザインが必要なんですね。

デンマークは家具デザインの王国と言われていますが、僕がそこで個展を開くことができたのは、40年前のショックでデンマークの要素が入ったんだといわれました。

 

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若かったからショックが大きかった代わりに、得るものも大きかった。

明治維新の頃の若者がイギリスを観てショックを受け、国を変えてやるぐらいの気持ちを持って帰ってきた。僕はそこまで大それたものではありませんが、結果的に強烈な印象が残ったんだと思います。

日本のオリジナルでデンマークを超えてやるという戦いが僕の中で10年続いた。しかし、やがてそれは「日本のままで良い、このままで良い」という開き直りに変わりました。