研究会ブログ

2014年03月24日 Mon. Mar. 24. 2014

2014年3月セミナーレポート/大野誠一氏、鹿野淳氏

第70回文化経済研究会。

株式会社ローソンHMVエンタテイメントから取締役常務執行役員 大野誠一氏。

音楽ジャーナリストであり、株式会社FACT代表取締役 鹿野淳氏。

2名を講師にお招きしたセミナーをレポートします。

 

「ネットとリアルを繋ぐ、新たなビジネスモデル」

まずは第一部。株式会社ローソンHMVエンタテイメントから取締役常務執行役員

大野 誠一氏。

 

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 ローソンHMVの経営において大野氏はコンビニ=メディアという認識を持って臨まれています。

 

「ローソンには1店舗につき一日およそ平均で900人の方が訪れます。それが全国に約1万1800店舗。1日にほぼ1000万人の方がローソンにいらっしゃることになります。また、最低月一回はローソンに行く人が5000万人は居るといわれています。これは一つのメディアですよね。そこでHMVというCDショップとの相乗効果を狙いたかった。」

 

しかしそれだけのメディアを担うからには社会的なミッションは欠かせません。

氏が念頭においているミッションは以下のようなものでした。

 

「日本には洋楽を聴かずに大人になった人が多いんですね。以前はテレビやラジオなどが積極的に海外タレントを呼んでいたために普通に生活しているだけでだいたいの人は洋楽を耳にしていたんです。それがテレビが力を失って以来、なかなか皆さん洋楽を聴くことがなくなってしまったんです」

 

そのニーズを作っていきたい。もう一度日本人が日本の音楽の話をするのと同じぐらい当たり前に洋楽の話もできる様な光景を取り戻したい。それが文化的な多様性に繋がるとの想いから、大野氏は本日の講演のテーマでもあるリアルとネットとの融合という視点からアプローチをしていらっしゃいます。

 

「Plug Airという商品があります。これはUSBのようにスマートフォンに差し込むことによってそのスマートフォンで動画や音楽などのコンテンツを再生することができるんです。しかしUSBと違うのは、再生されているコンテンツはダウンロードされているわけではなく、実はクラウド上にあるということです。これによってコンテンツは守られるし、ユーザーの方も手軽に音楽を楽しむことができます。これを利用して独自コンテンツを発売しているアーティストもいます。今後はこのような方向にも力を入れていきたいですね。」

 

ロックと商業、エンタメ市場の可能性を探る

第二部は音楽ジャーナリスト 株式会社FACT 代表取締役

鹿野淳氏。

 

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 音楽雑誌『MUSICA』を発刊され、常にライブというものと身近に接しておられる氏から以下のようなメッセージが届けられました。

 

「渋谷公会堂という場所があります。ここは今は音楽ホールのようになっているのですが、実は最初はオリンピックの重量上げのための施設でした。東京オリンピックのために作られた体育館だったんですね。オリンピックの後の用途として音楽が選ばれました。

だからここで我々音楽業界の人間が言いたいのは、2020年東京オリンピックの会場建設に音楽業界の人間を入れてくれということです。とても大きな会場があるのですが、そこでは音響がひどくてライブはできません。使い道の無い会場は、これは不幸ですよ」

 

また、今や日本最大級のロック・フェスの一つである「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の立ち上げ人である氏。フェスというイベントの持つ力を説かれます。

 

「今でこそ大きなフェスになっているフジ・ロック・フェスですが、最初はひどいものでした。山の中でやったのですが、運悪く嵐が来てしまい、急勾配の斜面を観客が滑り落ちてしまって、その柵に衝突して怪我をする。アーティストの楽屋も医療ブースとして開放しなければいけないような有様でした。

しかし、次からはちゃんとお客さんのほうも心得てくれて長靴やウィンドブレーカーを持ってきてくれるようになりました。そうすると、ちょっとお洒落をしたいという人のための花柄の長靴、線の綺麗なウィンドブレーカーが出てきてそれも売れる」

 

「ロックフェスという場所に来てしまえば、妙な開放感みたいなものがあるんです。自然の中で音楽を聴くということは普段の日常の中には絶対にない非日常です。どんなに攻撃的な人間でも卒業式の時には少ししんみりするのと同じで、ロックフェスに来ているときは全てを肯定できるような気分になります」

 

これによってロックフェスは攻撃的なロックだけに特化したものではなくなり、今やアイドルなども出演する総合的な音楽フェスへとなります。それを題材にした様々ユースカルチャーが生まれ、カルチャーが生まれればファッションが生まれる。それを受けてまた新たな音楽が生まれていきます。

例えば、自然の中で音楽を聴くという非日常であるロックフェスが無ければ、日本でここまでアウトドアファッションは普及しなかったのではないか?と氏は推測します。

 

今回の文化経済研究会は音楽ということに焦点を当てましたが、CDの売り上げが先細りしている今の日本の音楽業界の先行きが決して順風満帆ではないということは周知の事実です。

その中で、音楽に携わりながらそれぞれの役割を見据えていらっしゃるお二人のご講演は、文化と経済という2つの領域に渡る名前を冠された本研究会にふさわしいものでした。

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