研究会ブログ

2015年07月24日 Fri. Jul. 24. 2015

文化経済2015.7月講演レポート②/川本康氏

第78回文化経済研究会セミナー(2015.7.16開催)第2部の様子をお届けいたします。

第2部講師は『コマーシャルフォト』編集長の川本康氏。

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 『コマーシャルフォト』はカメラマン・クリエイターの作品やポートフォリオを提案するクリエイターマガジンですが、今回は川本氏には写真よりも動画に寄せ「動画コンテンツは都市生活に何をもたらすか」というテーマでご講演いただきました。

多くの事例を元にお話しいただきましたが、特に印象に残ったお話をご紹介いたします。

 

まずはJR九州の九州新幹線全線開通CM。

YouTubeサービス開始以来、消費者の間ではよく親しまれていたもののテレビCMに比べればその効果は微々たる物だと見なされていました。

その大きな転機となったのがこのCMです。

2011年の3月12日からTVで放送予定だったこのCMでしたが3.11の東日本大震災に伴うCM放送自粛によって幻のCMとなってしまいました。ところが、YouTubeで公開されて口コミで大ヒット。

東から西へ、それぞれの場所から新幹線に向けて手を振る人々はまるで被災した東北に向けてエールを送っているように見え、日本全国があたかも一つになっているかのような映像に多くの人々が心を打たれました。

のべ再生数は350万。これは音楽・震災関連動画を除けば、この年に公開された動画1位の再生数で、カンヌ国際広告祭(カンヌライオンズ)アウトドア部門で金賞を受賞。

この辺りからインターネットの拡散効果が強く認識され始めました。

 

YouTubeのCMの特徴としては、テレビCMのように商品名や広告名を強調することに力点はおかず、時に企業CMにすら見えないということが言えます。

その最も端的な例はサントリー『C.C.レモン』のWebプロモーション動画『忍者女子高生』。

女子高生が追いかけっこが、窓から飛び出したり建物を飛び移ったり壁面をよじ登ったりなど徐々にエキセントリックになっていくという内容で、こちらもインターネット上ではとても話題になりました。

最後の最後にようやく『C.C.レモン』が登場しCMということが分かるぐらいで、動画の大半は女子高生同士の追いかけっこの面白さが伝えられるかというエンタテインメントに徹しています。これでCMとして成立するのだろうかという懐疑も出そうですが、まったくそんな心配は無用でこの動画は750万という再生数を記録し、多くの視聴者の記憶に残りました。確かに商品名を連呼するより、エンタテインメントとして楽しんだ動画に付随する商品ぐらいの位置づけのほうが視聴者にとっても記憶に残りやすい。

 

また、見逃してはならないのが動画の持つ双方向性と、都市空間構築の可能性です。2012年の東京駅のプロジェクションマッピングは映像によって多くの人と注目を集めた成功事例として注目されています。他にも有名な事例である渋谷デジタル花火大会では、渋谷スクランブル交差点のQFRONTの壁面を利用。

スマートフォンに専用アプリをインストールすると、壁面に映し出された画面と連動してそこに花火が打ちあがるという仕組み。開催した7日間でおよそ3700名の方が参加し、計8万6000発の花火が打ち上がりました。

 

以上のように、新たな動画メディアは反響がダイレクトに伝わりやすいという双方向性があります。従来の一方向的なメディアと比較すれば話題の拡散力は段違いで、生活者と企業をより近くするメディアであると言えるでしょう。マーケティングに新しい価値と手法を持ち込んだ動画というメディアの可能性をこれからも見逃さないようにしていきたい。

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