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2017年09月29日 Fri. Sep. 29. 2017

文化経済2017.9月 講演レポート②/新井和宏氏


 

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9月14日に行われた第91回文化経済研究会、第2部では鎌倉投信株式会社の新井和宏氏にご登壇いただきました。

 

金融工学によって利潤だけを追求するこれまでの資本主義から、社会性を重視する「持続可能な資本主義」への転換。鎌倉投信と新井氏のこれまでの挑戦と、今の経済はどのように変わるべきか、ご提言をいただきました。

 

 

 

・社会に投資し、幸せを得る・

 

大学卒業後、大手信託銀行を経て、外資系資産運用会社でファンド・マネージャーとして数兆円を運用した新井氏。大病を患ったことや、リーマン・ショックをきっかけとして、既存の金融市場と、「誰かの犠牲で成り立つ社会」のあり方に大きな疑問を抱くようになります。資産運用会社をリタイアし、自身は金融の世界に戻るつもりはなかったと言います。

 

「(鎌倉投信株式会社代表取締役:鎌田恭幸氏から)新しい会社(鎌倉投信)への誘いを受けた時、初めは断りました。ところがその後、『日本でいちばん大切にしたい会社』(著:坂本光司氏)の第1巻と出会いました」

 

その本を通し、新井氏は事業性と社会性とを両立する「いい会社」が日本に数多く存在している現実を知ります。

 

「こういう素敵な、『いい会社さん』を応援できる仕組みを作ったら、お客さんも喜んでくれるだろうと。金融マンとして最後のご奉公、そういう風に思って立ち上げたのが、この鎌倉投信になります」

 

「経済的リターンと社会的リターンと、自分のお金が社会の役に立っているというお客様の『心の豊かさ』が得られた時に、初めてお客様は幸せになれるんです。ですから我々は、皆さまからお金を預かって幸せを返すという仕組みを作りたいと思って営業をしています」

 

 

 

・持続可能な資本主義のためにできること・

 

続けて新井氏は、これから企業や産業に求められていることについて言及。

 

「それをずっとやり続けますか? ということが問われている時代なんです。ストック(貯蔵)とフロー(流出と流入)とを考えた時、製品の計画的陳腐化というものは、陳腐化しますからストックにはならないんです。その年、もしくは翌年には壊れていくわけです」

 

「ではどうしたら良いかという話ですが、長く使えるものをきちんと作って、『ストックという財産』にしていけばいい。つまり、長く使えば使うほど価値が上がるようにするということです。そうした産業を興していけばいい、ということになります」

 

また、これから日本の企業が生き残っていくための方策として、新井氏は『ファンを増やす』必然性を説きます。

「ファンを増やすとは、『価格じゃない、あなたから買いたい』と思ってもらえるか、選んでもらえるか、ということです。選ばれるためには必要なのは『共感と感動』です。共感していただける、そして感動していただけるサービスや商品。これをどのように作っていけばいいのでしょうか」

 

「そのために必要なことが、自分ごとにする力、『自分ごと力』です」

世の中で起こったことに対して、それが自分たちと関係があると思えるか否か。例えそれが、一見して関係がないと思えるようなことであったとしても、です。

 

そうした能力が企業には問われていると新井氏。その企業が持つ事業の領域をあえて“拡大解釈”し、自分たちが社会に対してどれほどの責任を持っているかを自覚すること。そうした『本業の拡大解釈』によって、共感と感動を呼ぶサービスと商品が生み出されると言います。

 

数式ではなく、共感。鎌倉投信と新井氏が持つ一貫した哲学は、変動する資本主義の最先端そのものを映していました。「誰かの犠牲で成り立つ社会」を脱却し「持続可能な資本主義社会」へ、同社と新井氏の挑戦は続きます。

 






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