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2018年03月 8日 Thu. Mar. 08. 2018

文化経済2018.3月 講演レポート①/出雲 充氏


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3月7日に行われた第93回文化経済研究会、第1部は株式会社ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏にご登壇頂きました。

 

従来不可能とされてきたミドリムシの食用屋外大量培養に世界で初めて成功し、ミドリムシを産業化させた背景には、多くの苦難がありました。決して諦めることなく「人と地球を健康にする」という信念を掲げ続け、不可能を可能に変えた氏の成功哲学を学びました。

 


・ミドリムシとの出会い、挑戦の始まり・

 

出雲氏にとってのターニングポイントは、東大在学中に経験したバングラデシュでのインターンでした。同国が最貧国として抱えていた深刻な問題は食料不足ではなく、「栄養の不足」でした。そこには有り余る量の米があり、人々は毎日カレーを食べている。しかしそのカレーには何一つ具が入っていません。空腹は満たせても、健康な生命維持に不可欠な栄養素がほとんど摂取できず、人々は栄養失調に苦しんでいました。

 

バングラデシュからの帰国後、そうした状況を打破したいと、栄養価の高い食品を手当たり次第に探した出雲氏。その最中、動物と植物の特性を併せ持ち、どのどちらの栄養素も生み出すことができる「奇跡の生物」、ミドリムシと出会います。氏にとっては衝撃的な出会いでしたが、その当時、ミドリムシの大量培養は至難の技。実用レベルでの培養には、誰も成功したことがないというのが現状でした。

 

培養が上手くいく保証もないまま、氏は仲間と共に株式会社ユーグレナを立ち上げ、「不可能」にも等しい技術を現実にするべく、苦心することとなります。


 

・不可能の先、さらにそびえる「壁」・

 

2005年12月、奇跡が起こりました。気が遠くなるほどの試行錯誤を経て、同社は遂にミドリムシの食用屋外大量培養に成功します。出雲氏はこの時、これで事業化への道が拓けると確信したそうです。しかしながら、ここからも試練が続きます。幾ら営業を掛けようとも、ミドリムシを使用した製品に、誰も見向きをしませんでした。


その数、500社に断られたと言います。


「どこに行っても『ミドリムシのこれまでの採用実績は?』と訊かれました。まだありませんと答えると、『他社が採用したら我が社も考えます』。本当にそればかりでした。気づくと、500社に断られていました」

 

資金のショートが目前に迫り、事業を畳む瀬戸際にまで立たされたユーグレナ。しかし501社目との出会いが、そこからの流れを180度変えました。


「その方は『私は他社の手垢が付いていない、真っさらな物を探していました』と仰いました。そこから厳しい審査がありましたが、遂に役員会を通りました。2008年5月、501社目のことでした。私はあの時のことを一生忘れません。その501社目は伊藤忠商事でした」

 

そこからユーグレナの事業はようやく軌道に乗り、2008年の5月以前と以後では、全く違う会社に生まれ変わったようだと、氏は当時のことを回想します。ミドリムシの培養成功から、実に3年近くが経っていました。



・繰り返すことの価値と、若手を支援する意義・

 

2014年、東京大学発ベンチャー企業として、ユーグレナは日本で初めて東証一部への上場を果たしました。大学発ベンチャーの殆どが倒産するか赤字という状況の中で、これはまさに「不可能」を「可能」に変えたと言うべき快挙でした。競争し、イノベーションを起こすため、本当に必要なのは「繰り返すこと」だと出雲氏は断言します。

 

「成功率が1%だとすると、理論上459回繰り返せば成功率は99%になる。これが私の持論です。問題は、そこまで諦めずに続けられるかどうかなんです」

 

また同時に、若者、そして大学には、日本にイノベーションをもたらすための「種」が山ほど眠っていると氏は言います。そんな若者と大学をどうか応援し、支援して欲しいと、講演はその言葉で締め括られました。それは自らが若い頃に味わった辛酸から出た、氏の切実で、実直な思いやりの言葉でもありました。





 

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