研究会ブログ

2014年09月30日 Tue. Sep. 30. 2014

文化経済2014.9月講演レポート②/ライフネット生命保険出口治明氏

第二部は出口治明 氏。

IMG_2893.JPG

「人生で2番目に高い買い物」と言われ、かつ複雑な仕組みを持つ生命保険。「保険料を半額にして、安心して赤ちゃんを産み育てて欲しい」という思いで還暦を過ぎてから起業したライフネット生命は、保険外交員などの既存の仕組みを採用せず、インターネットで保険を販売。わかりやすさ、安さ、便利さを強みに、子育て世代から圧倒的な支持を得て躍進中です。

 

出口氏ははじめにご自身の世界観・世界認識からお話を始められました。

 

「全ての人は自分の周囲の世界に100%は満足していないと思います。そこで、自分が満足できない世界に対して自分のポジションで何ができるか。少しずつ変えていこうと試みることが生きる意味だと私は考えています。自分自身の世界を経営するということです」

「自分の世界を経営するうえで意思決定するポイントは何でしょうか。それは、まずは『タテヨコ』で考えるということです。例えば夫婦別姓の問題について考えてみましょう。

まず、日本の基盤が固まったのは持統天皇あたりですが、平安時代は夫婦別姓でした。夫婦同姓が当たり前になったのは明治時代になってから、150年程度ですね。

これが歴史的にタテに観るということです。では横にみればどうか。先進国で夫婦別姓を認めていない国は日本だけです。すると、夫婦別姓というのをタテヨコで考えるとこれは少なくともグローバルスタンダードな考え方ではないということが分かりますね」

 

出口氏のお話は多くの歴史的な事実から具体的な例が引き出されるので非常に分かりやすい。ウィットに富んだお話にひきつけられると、いつのまにか出口氏が導く結論が待っている。気づけば出口氏のペースの中にいます。

 

「世界を経営するもう1つのポイント。それは国語ではなく算数で考えるということです。よく『日本はGDP3位の国なのでもう成長はしなくてもいい。心が豊かであればいい』と言いますが、日本の国際競争力は年々落ちています。すると世界3位の経済は維持できない。私たちが今いる場所はとても清潔に保たれていますが、これも適わなくなります。インフラのレベルは格段に落ちることになる」

 

「そうすると、やはり競争力をつけるしかないんです。しかし、資源も国土も無い日本が競争力をつけようと思えば、イノベーションを起こすしかありません。ではイノベーションとは何か。私は歴史オタクなので、ここでも歴史を振り返ってみると、人類史上のイノベーションというのは結局何かと何かの組み合わせでしかないんです」

 

算数で考えるということは、文章ではなく数字に向き合うということですね。しかし、人間論理だけで考えるのは難しいものですが、出口氏は慎重に論理とこれまでの実証からその考えを積み上げられてきたようです。

 

「ライフネットの近所にラーメン屋があるのですが、そこはラーメン屋にしては女性客が非常に多い。店主と仲がいいので秘密を聞いてみたのですが、女性客を狙う為に店内を清潔に保つことはもちろん、『ベジそば』というヒットメニューがあります。野菜を多く含む具で、ムール貝で出汁をとっています。ラーメンにムール貝。これもイノベーションですよね」

 

「イノベーションを起こすために、なるべく多く人と会い、本を読み、勉強をすることです。そして、話は戻って私がイノベーションを起こす意味は、私が見ている世界が気に入らないからです。何が気に入らないか。日本では若者の平均所得が非常に低い。これでは子どもを有無どころの話ではない。若者が元気の無い世界なんて嫌ですよ」

 

「そこで、日本生命にいた私は独立して保険会社を作りました。生保レディなどを使わないので、その分非常に安い保険商品です。若者にも入っていただけ、子育て世代から支持を得ています」

 

すでにある状況と自分の立場を認識し、そこから自分の理想へと近づける手段を考える。出口氏のお話は最初から最後までが綺麗に繋がっており、ストーリーがありました。しかし同時に、

 

「人間勉強だけじゃやってられません。私もコトラーの本を読んでいるときに友だちから飲み屋に行こうと電話がきたらそっちに行ってしまいます」

 

と、人間的なユルさも持ち合わせていらっしゃるところが大変魅力的な講演でした。

研究会ブログ
バックナンバー

▲ページTOPに戻る

お問い合わせ・お申し込み

お問い合わせ・お申し込み

TEL:03-5457-3024  FAX:03-5457-3049

担当:池  bunkaken@jlds.co.jp