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2017年05月19日 Fri. May. 19. 2017

文化経済2017.5月 講演レポート/落合陽一氏


 

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5月18日に行われた第89回文化経済研究会、第1部ではメディアアーティスト 筑波大学学長補佐 助教の落合陽一氏にご登壇いただきました。

 

アーティスト、研究者、そして自らが立ち上げた企業「ピクシーダストテクノロジーズ」のCEOとして、大きく3つの肩書きをお持ちですが、どの活動にも共通した根底があるといいます。

 

「肩書きは幾つもありますが、要するに僕は、『どのように近代と現代を終わらせるか』ということをいつも研究しています」

 

 

・エジソンとフォードが作った20世紀・

 

20世紀社会の形成過程において、その方向性を決定づけたのはエジソンとフォード。エジソンは活動写真、そして蓄音機を発明し、現代に言う“オーディオヴィジュアル”の基礎を打ち出しました。一方のフォードは生産数1500万台の大衆車“T型フォード”を開発。その生産システムは“フォーディズム”とも呼ばれ、大量生産・大量消費を可能にした現代資本主義の象徴でもあります。

 

そしてその両者の発明から100年後の現代、“オーディオヴィジュアル×フォーディズム”の最高到達点が“iPhone”であると氏は断言します。同質のものが大量に生産され、普及し、なおかつそれが音声的、光学的な機能を備える。確かにその意義づけ通り。

 

ところがその生産プロセス自体を考えたとき、人間が少しでも関わっている以上、「人間が人間のために働く」というひとつの構造が浮き上がります。

 

「エジソンとフォード以来、『人間が人間のために働く』社会を我々は生きているわけです。そこをコンピューテーション(計算)で解決してあげる、そんなことも考えています」

 

“どのように近代と現代を終わらせるか”という冒頭の大きなテーマと、徐々に関連性が見えてきます。

 

 

・近代的過程(工程)をどう崩すか・

 

「今まではハードを制した者が市場を制してきた。これからはソフトウェアでどのようにハードを設計し、作るかという時代になります。今までの工業製品といえば、機能やデザインを多様化させればさせるだけ、コストが膨大になるものでした」

 

「ところが、その設計の最適な形をコンピュータに求めさせることで、コストを下げながらも多様化を実現できると考えています。つまり、コンピューテーショナルにコストを下げるということです」

 

これは、人間が関わっていた部分を機械によって代替する、ということでもあります。これに対する危惧が、世に言う“機械に人間の雇用が奪われる”というものでしょう。しかしながら、それは「錯誤」であると落合氏。

 

「機械と計算に任せられるものは任せて、人間は、人間がやりたいことをやればいいと思います。それは『人間が人間のために働く社会』の先にある、『機械が人間のために働く社会』です」

 

 

・日本は「機械化ボーナス」の中にある・

 

現在も人口増加を続ける中国やインドを余所に、緩やかな人口減少を続けている日本。落合氏によれば、機械化によってこれほど恩恵を受ける国はないとのことです。

 

1人の高齢者を何人の若者で支えているか、という図をよく目にします。人口減少が続く以上は、下支えの人数も同様に、減少し続けるでしょう。この「自然な」流れを活かし、この下支えを「自然に」機械へ置き換えられたとしたら。世界でも類を見ない、「自然に人口減少を続ける経済大国」である日本は、このモデルケースを実現できる可能性があるそうです。

 

加えて、

「日本が持つ産業はどれも、機械化によってまだまだ飛躍する余地があるものばかりです。言ってみれば『機械化ボーナス』に、先駆けて突入できるということを意味しています」

 

人間が人間のために働く近現代。その先にあるのは、機械の下支えを受けながら、人間が自分のために生きる未来。「どのように近代と現代を終わらせるか」という問いを解くべく、落合氏は実に明確な「数式」を描いていました。





 

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