研究会ブログ

2017年08月 3日 Thu. Aug. 03. 2017

次回9月セミナー講師、石倉洋子氏「多様性の時代を生き抜く」


 



9月14日(木)開催、第91回文化経済研究会にてゲストとしてお迎えします、経営学者で一橋大学名誉教授、石倉洋子氏のインタビュー記事をご紹介いたします。

 

石倉氏は日本人女性で初めてハーバード大学大学院博士課程を修了。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社にて、マネジャーとして企業戦略などのコンサルテーションに従事。そうした経歴から、経営戦略、競争力、グローバル人材を専門にし、青山学院大、一橋大、慶応義塾大の教授や、数々の企業の社外取締役を歴任。現在は「グローバル・アジェンダ・ゼミナール」を主宰し、多様性と国際競争力を持った人材の育成を手がけています。

 

 

 

・仕事を再定義する「価値観」・

 

世界経済フォーラムの委員会が行なった「現在、そして2020年までに、雇用や仕事に大きな影響を与える要因は何か?」という調査があります。対象は世界各国の企業の人事担当。当初はAI、機械学習、クラウドなど、技術関連の要素が上位にくると予想されていたそうです。しかし結果は予想に反し、「仕事の環境変化や仕事の自由度」が最上位。技術的なファクターを抜き去り、仕事に対する捉え方、価値観が先行したことについて「非常に興味深い結果」と石倉氏は指摘します。

 

例えばテレワークは、環境や自由度に関わる代表的な例ではないでしょうか。場所を規定されることなく、各々が好きな場所で働き、成果を出す。言い換えれば、成果さえ出せばどこで働いていてもよい、ということでもあります。さらに成果へ焦点を当てるならば、「規定以上の成果が出ていれば、労働時間の長短も問わない」といったことさえ言えるかも知れません。確かに、仕事の環境変化や自由度は、雇用形態や仕事それ自体に大きな影響を与えるように思えます。技術関連の要素は、あくまでもこの「新しい働き方」を実現し、支えるための要素に過ぎないということでしょう。

 

委員会はこうした調査結果を受けて、「人事や人材開発を再定義する必要があるのではないか」と結論づけました。それは、“仕事を再定義する”ことであると石倉氏は言います。

 

 

 

・多様性が生む「力のある個人」・

 

いい大学に入り、いい会社に入り、安泰な人生を手に入れる。

 

これまで日本では、大学での学びを活かすことで新卒一括採用を勝ち抜き、定年まで勤め上げるという直線的なキャリアが理想とされていました。しかしそうした風潮に対し、“スキルをアップデートする必要性”を訴える石倉氏。大学入学から卒業するまでの間に、その学びの1/3が時代遅れになってしまうという説もあるのだとか。

 

常に学び続け、その人固有のユニークネスを強みとして育てていく。そうした人物像を、石倉氏は「力のある個人」と呼びます。これからの国や組織の競争優位性の源は、力のある個人の存在に懸かっています。

 

その中で石倉氏は、組織という単位ではなく、仕事という単位で人事を捉えることを提言しています。プロジェクトの旗が立ち、そこに共感する個人が集まる。社内外という垣根を越え、「成し遂げたいこと」を実現してゆくというあり方です。企業は兼業禁止規則を見直し、流動性を高めていくことが理想的だと、石倉氏は言います。

 

 

 

・転ぶことで学んでゆく・

 

変化の大きい時代だからこそ、様々な挑戦をしながら失敗し、方向性や方法論を修正していくことが求められていると石倉氏。

 

「まずやるべきことは、『自分たちと違う人を見る』ことだと私は考えています。例えば外国に行ったとき、目の前にいる人が友好的なのか危険なのかわからないということはよくあります。実際に接してみて、ときには失敗もしながら、自分の中に『人を見るものさし』ができあがっていくのです。『自分とまったく異なる価値観の人がいる、違う経歴を持った人がいる』ということを実感していなければ、いくら『多様性』という言葉を使っても、むなしく響くだけになってしまうでしょう。」(当該インタビューより引用)

 

“失敗を嫌う日本の風土”。まずはその風潮を打破することから、我々は始めなければならないのではないでしょうか。石倉氏の提言はそうした示唆に満ちていました。

 

 

 

 

 

 

  

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