研究会ブログ

2016年10月28日 Fri. Oct. 28. 2016

古市憲寿氏の最新著書『古市くん、社会学を学び直しなさい!』

11月文化経済研究会ゲストスピーカー古市憲寿氏の最新著書『古市くん、社会学を学び直しなさい!』をご紹介します。

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本書の目的は「社会学とは何か」という問いにまつわる意見を様々な社会学者と交えることによってその定義を明らかにすることです。

学問、特に文系のそれは定義づけをするだけでかなりの文献を読み込む必要があり、例えば「哲学とは何か」という問いかけなどはもうそれ自体が既に哲学であると言えるでしょう。

であれば、「社会学とは何か」というのは相当の難問なのですが、

 

「現時点において本書は、社会学の入門書としては最良の一冊だと思う」

 

と冒頭で古市氏が述べています。社会学者を目指す人も、そうではない人も違った意味でそれぞれに学びのある書籍であると言えるでしょう。

 

 

■バイリンガルな社会学者

法学や哲学、社会学や経済学など文系の学の共通しているのは、日常でもそれらのテーマを問う場面はよくあるということです。

満員電車に揺られれば人口の増加という社会学的なことを考えますし、

コンビニで新商品を見ればその価格から経済学的な考察をするかもしれませんし、

寝る前にふと生きる意味などを考えればそれは哲学です。

 

「ある人は「社会学」を「常識を疑い、問い直す学問です」と説明するかもしれない。そんなときは「そんなこと、ツイッターで誰でもしていませんか?」と返してみるといい」

と、アイロニカルですが非常に鋭い指摘で古市氏は指摘されます。

 

これに上野千鶴子氏は言語の違いをもって説明されています。

要するに、アカデミックな世界で「社会学者」という席を得るには、緻密な分析や参考資料に基づいた「アカデミック言語」を用いた論文が認められなくてはなりません。

それが「社会学者」として認められる正式な手続きです。

 

上野氏は誰にでも分かるような「非アカデミック」な社会学的著作とアカデミックな論文、両方が書けるバイリンガルと言えるでしょう。

 

■社会学者は現代のシャーマン

大澤真幸氏はある意味では社会に何らかの形で関与している全員が社会学者であり、その中でも、誰しもが直感的に把握している社会の形を緻密な言葉と分析を使って説明できる人を狭義の「社会学者」と呼ぶと言います。

興味深いのは、上野氏も大澤氏も社会学者の説明として「シャーマン」という言葉を用いている点でした。

 

上野氏は「うまいシャーマン」はいるけれども、「正しいシャーマン」はいないと言います。というのは、社会で起こったことに関する説明は「もっともらしい」かどうかは分かるけれども、その正誤は分からないからです。

例えばリーマンショックの説明は多くありますが、科学的に原因を検証しようと思えばもう一度リーマンショックを起こさなければならずそれは不可能なのと同じく、社会で起こる現象を検証することなどできません。

より大勢のオーディエンスに支持されるのが「良い社会学者」の条件であり、その構造は太古のシャーマンと非常によく似ています。

 

社会学者とは何かを定義するための対談集ですが、転じて社会で生きている我々はどのように「社会」を見ているのかということを考えさせる一冊です。

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