2017年03月10日 Fri. Mar. 10. 2017
あえて「伝えない」ことを考える
明日は3月11日。
2011年の東日本大震災からもう6年も経とうとしています。
未だに津波の爪痕は残り、原発事故は現在進行形で起こっている問題でもあります。
とりわけ、放射能の飛散や影響については6年を経た今でも情報が入り混じり、デリケート過ぎる問題であるが故に無闇に触れることすら憚られます。
さて、2016年1月の文化経済研究会でご登壇いただいたクックパッドの松浦弥太郎氏は震災が起こった当時『暮しの手帖』の編集長として震災をどう扱うかを考え、あえて「扱わない」という選択肢を選んだのでした。
■現実逃避ができるメディア
(松浦氏の発言引用)「3.11で、東北の流通がストップし、雑誌の売上は激減だろうといわれた時のことです。
「その時、各メディアが被災地と放射能のことを調べ取材し、それぞれの見解を一生懸命に発信していたんですが、僕はその時に『暮しの手帖』ではそれは扱いませんと宣言したんです。
それよりも、美味しいハンバーグの作り方、おいしいうどんのこね方、素敵な手芸の紹介をしましょうと言ったんです」
「凄いバッシングを受けました。電話も掛かってきて、今こそ東北に行って放射能と被災者の現実を伝えろと言われました。
だけど、僕はしなかった。3月23日に『暮しの手帖』の発売日だったんですが、部数は1.5倍でした。そして5月は1.7倍。流通がまともに機能していなかったのに。
あの時皆さんは現実逃避するために『暮しの手帖』を選んでくれたんです。
雑誌やメディアは真実を伝えるという役割もありますよ。でも現実逃避させるという役割もあるんです」
■怠け者の社会運動家
「スラクティビズム」という「怠け者(slacker)」と「社会運動(activism)」を掛け合わせた言葉があります。
特に何かをしたわけではないのに、社会にとって良い行動をしたという自己満足を得る人々に対しての軽蔑として用いられる言葉で2000年代初期には既に用いられていた言葉です。
しかしながら、2010年代も佳境に入り始めた昨今にこそ実になじむ言葉ではないでしょうか。
2016年を象徴する言葉としてオックスフォード英語辞書は「ポスト真実」という言葉を選びました。
客観的な事実よりも主観的な感情や扇情的なストーリーの方が世論を動かしていくという状況を揶揄するこの言葉。
トランプ大統領の当選は、ローマ法王がトランプ氏を支持しているなどのフェイクニュースが広まったことにも一因があり、facebookやtwitterは批判の矢面に晒されましたが、扇情的なフェイクニュースをシェアすることによって社会参加したという快感を得るというのは正に「スラクティビスト」の行動で、ある意味では誰もがスラクティビストとなる誘惑にかられているという社会なのかもしれません。
■「伝える」ことの意味
その意味で、松浦氏がとった「あえて震災には触れない」という選択肢は「ポスト真実」「スラクティビズム」とは対極にある行動です。
昨年春の熊本地震当時も怪しげな情報がtwitter始めSNSで多く拡散されましたが、速度とセンセーショナリズムがネット空間を荒らしまわっている今、松浦氏の当時の行動から改めて伝えるということの意味を考えたいと思いました。
明日は3月11日。
2011年の東日本大震災からもう6年も経とうとしています。
未だに津波の爪痕は残り、原発事故は現在進行形で起こっている問題でもあります。
とりわけ、放射能の飛散や影響については6年を経た今でも情報が入り混じり、デリケート過ぎる問題であるが故に無闇に触れることすら憚られます。
さて、2016年1月の文化経済研究会でご登壇いただいたクックパッドの松浦弥太郎氏は震災が起こった当時『暮しの手帖』の編集長として震災をどう扱うかを考え、あえて「扱わない」という選択肢を選んだのでした。
■現実逃避ができるメディア
(松浦氏の発言引用)「3.11で、東北の流通がストップし、雑誌の売上は激減だろうといわれた時のことです。
「その時、各メディアが被災地と放射能のことを調べ取材し、それぞれの見解を一生懸命に発信していたんですが、僕はその時に『暮しの手帖』ではそれは扱いませんと宣言したんです。
それよりも、美味しいハンバーグの作り方、おいしいうどんのこね方、素敵な手芸の紹介をしましょうと言ったんです」
「凄いバッシングを受けました。電話も掛かってきて、今こそ東北に行って放射能と被災者の現実を伝えろと言われました。
だけど、僕はしなかった。3月23日に『暮しの手帖』の発売日だったんですが、部数は1.5倍でした。そして5月は1.7倍。流通がまともに機能していなかったのに。
あの時皆さんは現実逃避するために『暮しの手帖』を選んでくれたんです。
雑誌やメディアは真実を伝えるという役割もありますよ。でも現実逃避させるという役割もあるんです」
■怠け者の社会運動家
「スラクティビズム」という「怠け者(slacker)」と「社会運動(activism)」を掛け合わせた言葉があります。
特に何かをしたわけではないのに、社会にとって良い行動をしたという自己満足を得る人々に対しての軽蔑として用いられる言葉で2000年代初期には既に用いられていた言葉です。
しかしながら、2010年代も佳境に入り始めた昨今にこそ実になじむ言葉ではないでしょうか。
2016年を象徴する言葉としてオックスフォード英語辞書は「ポスト真実」という言葉を選びました。
客観的な事実よりも主観的な感情や扇情的なストーリーの方が世論を動かしていくという状況を揶揄するこの言葉。
トランプ大統領の当選は、ローマ法王がトランプ氏を支持しているなどのフェイクニュースが広まったことにも一因があり、facebookやtwitterは批判の矢面に晒されましたが、扇情的なフェイクニュースをシェアすることによって社会参加したという快感を得るというのは正に「スラクティビスト」の行動で、ある意味では誰もがスラクティビストとなる誘惑にかられているという社会なのかもしれません。
■「伝える」ことの意味
その意味で、松浦氏がとった「あえて震災には触れない」という選択肢は「ポスト真実」「スラクティビズム」とは対極にある行動です。
昨年春の熊本地震当時も怪しげな情報がtwitter始めSNSで多く拡散されましたが、速度とセンセーショナリズムがネット空間を荒らしまわっている今、松浦氏の当時の行動から改めて伝えるということの意味を考えたいと思いました。
研究会ブログ
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