研究会ブログ

2015年12月25日 Fri. Dec. 25. 2015

津田大介 西きょうじ 『越境へ』

来年1月の文化経済研究会にてご登壇いただく津田大介氏と、津田氏の予備校時代の恩師であり、代々木ゼミナールで25年間教鞭をとるベテラン英語講師西きょうじ氏の対談『越境へ』を読みました。

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■越境へ。

 

タイトル通り、この本のテーマは「越境」であり、自分の行動を制限する様々な制約・ボーダーとどのように向かい合うべきかということについてお二人の思い出話とこれまでの人生を振り返ってのエピソードを通じ話し合われます。全体を通して非常に読みやすい書籍です。

さて、この「越境」は非常に広義な概念として本全体に貫かれており、

 

好きな女性がいるけど、彼氏持ちだからアピールできない。

友達になりたい人がいるけど、全く接点が無いから話しかけられない。

 

そんな小さなボーダーから、


起業してみたい、でも難しそうだからできない。

海外で生活してみたい、でも言葉が通じるか不安だから行かない。

 

などの大きなボーダーまで、ボーダーラインのこちらがわで戸惑っている人の背中を押してくれるものです。

我々は自らの能力とそれを制限するボーダーとを比べ、前者が後者を乗り越えられそうだとすればそれを越境するための行動を起こします。しかし最近は情報があまりにも手軽にかつ正確に把握できるようになってしまったので、頭の良い人ほど合理的な選択をしてしまい、なかなか「越境」をしない人が増えている傾向。

 

■無名ライター時代、150社を絨毯爆撃

津田氏の「越境」を示している分かりやすい事例は、ジャーナリストになるために津田氏が取った行動です。

今でこそ多面的な活躍をなさっている津田氏ですが、留年が決まった大学4年生の時はまだライターとしては駆け出しの時代。

その時にアルバイトとして働いていたライターさんの名前で150社ほどに手紙を書いて出版社に自分をアピールし、仕事を貰っていたそう。

 

これも言わば「越境」です。

ライターになりたい。

けど出版社に原稿を持ち込んで、もし断られたら傷つくし、そもそも出版社に沢山はがきを出すのはめんどくさい。

しかし、それら諸々のボーダーを越えることが結局は自分の運命を切り開くことになる。津田氏の場合も、この地道な活動で仕事をもらえるという経験がその後も常々役に立っていたそうです。

 

■忸怩たる想いが越境を促す

「ちょっとだけでいいので、自分は何者かにならなければいけない、何かを成し遂げなければいけないといった使命感や野心を持っていたほうが良いと思います(本文81ページ)」

 

津田氏の場合、成し遂げるべき使命の一つが明確となったのは東日本大震災においてでした。

震災発生直後から、地震発生から3週間、毎日睡眠時間は1~2時間でツイッターで情報を紡ぎ続けます。24時間とにかくツイッターで流れてくる震災情報と向き合って整理しながら発信をしている時に、「あ、自分はこれをするために就職しなかったんだ」と社会的使命と自分の中での欲求が津田氏の中でかみ合います。

 

阪神大震災の時は時間があり自由に動ける大学生だったのにもかかわらず、1000円の募金しか行わなかった、新潟中越自身の時も何もできなかったという思いが強く、それが忸怩たる思いとして津田氏の中で成長しました。

 

3.11が起こった際にも、自分の生活の為にいつもどおりの仕事を選ばざるを得ない人々が大勢おり、目の前の仕事の意味への問いを誰もが突きつけられます。

大手の出版社から声がかかったことも幾度もありましたが、あくまでフリージャーナリストを選んだ津田氏だからこそ、自分にしかできない役割を見つけて果たせました。

 

「境」の内側に居る人すべてに読んでいただきたい一冊です。

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