研究会ブログ

2016年02月12日 Fri. Feb. 12. 2016

「いらんことはせんとこ」 象彦の哲学

文化経済研究会次回のゲストスピーカー、株式会社 象彦 代表取締役社長、十五代目当主

西村毅氏をご紹介いたします。

「象彦」は1661年の創業で350年以上の歴史を誇る老舗漆器会社です。

 

■身の丈に応じたことをせよ

象彦に伝わる家訓は、「身の丈に応じたことをせよ」ということ。お店が大きくなったら社会に還元をし、業績が悪くなれば躊躇せず会社を小さくしなさいというこの教えを三代、四代目の当主が遺したそうです。

確かに、事業が拡大する場合は新しいチャレンジをすることはたやすいですが、事業の縮小は勇気が必要です。

その意味で「身の丈に応じたこと」というのは象彦350年に渡って存続してきた一因と見受けられますが、それができるかどうかは経営者自身が自らの人間としての度量と真剣に向き合って答えを出していけるかにかかっており、非常に厳しい家訓であると言えます。

ましてや当主になってしまえば自分に意見や批判をしてくれる人は少なくなるもの。そういう時に、歴代の当主を戒めてきたのがこの家訓なのだそうです。

 

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■「しない」というデザイン

また、象彦が掲げる言葉として「見て美しく使って楽しい象彦漆器」というものがあります。この際にも活きてくるのが、過度な装飾やデザインを「しない」という先ほどの家訓とも通じるような「必要以上でも以下でもない最適さ」という意識です。

品の良い漆器は孫の代まで受け継がれていくものですが、100年以上に渡る使用を考えたときに、精々十年程度で終わってしまうであろう現状の流行を取り入れるわけにはいきません。

西村氏がデザインを考えるときに大切にするのは、「これをしよう」ではなく、「これはしないでおこう」という意識。

京都弁で言うと、「いらんことはせんとこ」。

漆器というものを考えたときに、普遍的に(“少なくとも”100年以上は)要求される機能と美しさは何なのか。それだけを商品に落とし込んだときに、生まれてくるものを西村氏は「余白」ではなく「空間」と呼びます。

要らないものを排していった先にあるものは「余白」ではない。商品の普遍性を保つために必要な「空間」です。

 

■時間を超えた漆器は国境も超える

昨今はスイスの葉巻メーカー「ダビドフ」やスイス時計メーカー「ヴァシュロンコンスタンタン」とコラボレーションするなど、世界企業との連携も積極的に行っておられます。

時代を超えてる普遍性を追求してきた350年の歴史に蓄積されている智恵は、国境や海など容易に飛び越えていきます。

その根底にあるのはおそらく人間の感受性への研究であり、究極の生活者研究とも言えるのではないでしょうか。

 

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象彦は、京都は寺町に本店を構えており、東京では日本橋店でその商品を楽しむことができます。

両店ともミュージアムのようなたたずまいで、江戸時代から受け継がれてきた伝統が静かに息づく空間に、漆器達が慎ましやかに鎮座しています。

講演にご来場の前に是非ご覧ください。

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