研究会ブログ

2015年03月13日 Fri. Mar. 13. 2015

Think the Earth 『続・百年の愚行』

去年末に発行された『続・百年の愚行』。

2012年11月に文化経済研究会でご登壇いただいた水野誠一氏が理事長を務める一般社団法人Think the Earthから発行されています。

 

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この前段である『百年の愚行』は2002年に発行され、20世紀に人類が行ってきた資源の消耗、環境の悪化、人口爆発、戦争や差別などの「愚行」を総括するという内容でした。

 

「私たちはまだ20世紀の愚行に対する失望と同じぐらい大きな希望を、21世紀に対して抱いていた(中略)だから、この『百年の愚行』の続編を出版することになろうとは思いも寄らなかった」(あとがきより)

 

戦争・紛争、弾圧・迫害、差別・暴力、貧困・格差、メディア・情報、環境・エネルギー、核・原発……地球上にある様々な問題が「愚行」として詳細に語られます。

それぞれの章からは終末論的な香りが漂い、読み物としても引き込むパワーがあります。ただ、単なる終末論ではなく未来への展望が各テーマごとに設けられています。

 

終章である「自己と他者への想像力」にある文章がこの本の締めくくりとして非常にふさわしいものだと感じたのでご紹介します。

 

「ソーシャルメディアで自分の意見を言いつのる現代人は、他人の意見をそもそも聞こうとしない。自分の見たいものしか見ず、聞きたいことしか聞かない。自分にとって都合のよい主張や情報を自分の意見の論拠とし、それ以外の主張は目にした瞬間に視界から外し、記憶から消し去ってしまう。建設的な意見が生じるはずが無い」

 

以上のような人々は「反知性主義者」と呼ばれ、最近にわかにこの言葉が注目を集めています。

その特徴は、自分が見たいようにしか世界を解釈しないこと、都合が悪かったり不快な情報の拒否、相手への想像力の欠如、知性への根拠無き反感、自分は反知性主義なのではなく行動主義者なのだという意識……などなど。

 

「本書を手にとって下さっているあなたは、すでに知識人であるか、知識人の有資格者ではないだろうか。職場で、家庭で、学校で、カフェで、酒場で、あるいはネットを通じて、ぜひ仲間を増やしてほしい」

 

政治や思想に関するお話はなかなかしにくいものですね。

とりわけネットだとTwitterに代表されるように、同じ意見の「フォロワー」同士で固まって更に意見が偏った方向へ向かいがち。ネットこそがある種の反知性主義の温床ではないかとすら思えます。

 

顔と顔を突き合わせてお酒でも飲みながら「議論」をすることがもっと一般的になれば、この本にある「愚行」の数々を少しでも変えていく力になるのかもしれません。

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