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2008年3月18日 日々の泡と父と
アメリカのハードボイルド小説などの翻訳で知られる佐々田雅子さんが、 ボリス・ヴィアンの『日々の泡』の紹介をしていた (週刊新潮3月13日号「私の名作ブックレビュー」)。 ボリス・ヴィアンは前衛的な作風で 知られた作家であるが、 『日々の泡』はその彼の代表作である。 肺に睡蓮の花が咲く少女など、 悲痛な奇想に満ちた恋愛小説であり、 1968年五月革命当時のフランスの若者たちに 多大な影響を与えたバイブル的作品である。 写真がかすれていてちょっと見えにくいが、 訳者をあらわす括弧内に「曽根元吉」とある。 私の父である。 曽根元吉とは京都大学仏文科教授であった父の詩人名であるが、 父はジャン・コクトーを中心にフランス文学に生涯を捧げた。 ある時代の若者たちの精神を形作った『日々の泡』という不朽の名作とともに、父の名が語り継がれることは、私にとってひそかな誇りと喜びになっている。
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