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2008年4月30日 デジャヴ~少年幻想追憶
イラストレーターの友枝康二郎氏の 展覧会を拝見してきた。 同氏はワンスアラウンド株式会社の クリエイティブディレクターでもある。 私と同社の代表取締役・鈴木理善氏は 日ごろから親しくお付き合いさせていただいてる。
展覧会のモチーフ「The favorits~少年幻想追憶」らしく、 どこかに懐かしさを感じさせながらも ある種のデジャヴ=既視感を感じさせるところが、 ひとつの世界観を形成していた。 誰でも子供のころとは、 イメージの原体験を通過した時期だ。 それは一人一人の体験は違っていても、 根っこの部分では、ある共通項をなしている。 その共通項がデジャヴの元である。 記憶の彼方ではあっても、 どこかで見たような気がするのだ。 そんな貴重な時間を体験させられた。 友枝氏の今後のご活躍に期待しよう。
2008年4月28日 物は有限、心は無限
『世界をつくった八大聖人~人類の教師たちのメッセージ』 (PHP新書)を著者の一条真也氏から送っていただいた。 八大聖人とは、ムハンマド、ブッダ、孔子、老子、 聖徳太子、ソクラテス、モーセ、イエスのことだという。 著書の冒頭に、「この八人は宗教や哲学といった 人間の<こころ>に関する世界を開き、 掘り下げていった人々」とある。 彼らは人類の「こころ」の形をつくったとも述べている。 なるほど、始皇帝がつくった秦も、強大なローマ帝国も、 いまや遺跡を残すのみである。 しかしこの八大聖人がつくった「こころ」は、滅びるどころか、 ますます私たち人類に影響を与えている。 物は有限、心は無限といえるかもしれない。 一条氏は大手広告代理店を経て、 現在は大手冠婚葬祭会社の代表取締役。 北陸大学未来創造学部の客員教授も勤める。 こころの時代の若手リーダーの一人である。 2008年4月24日 クラブ・マーケティング
先日の日曜日、わが社のゴルフ同好会 「ガラパゴス」クラブのコンペがあった。 気が合う仲間と共通の好みで集うのは、 大変気分のいいものだ。 クラブ活動の生む活力である。
さて、これからの市場の核となるものは、 この「クラブ活動」である。 同好の士が集まれば、 そこに必ず市場が生まれ、 交流が生まれ、それはさらに成長していく。 商品やサービスを売る前提として、 「好きな共通テーマ同好会」を <顧客集合の核>とするということである。 ファッションを売るなら、まずファッション好きの顧客を集めることだ。 顧客をファッション好きにすることだ。 そのようなイベント、売り出し、話題、商品を提供することである。 ラーメン屋さんなら、ラーメン好き顧客を増やすこと、 そのような場と時を提供すること。 健康産業も同様、健康好きを増やし、それを顧客化することである。
この意味ですべての市場開拓の鍵は 「クラブ・マーケティング」だと言える。
2008年4月23日 キッザニア原体験
先日、キッザニア東京を運営している 株式会社キッズシティージャパンの マーケティング部長・関口陽介氏のご案内の元、 今話題の「キッザニア」の中をじっくり拝見する機会を得た。 ご存じのとおり、キッザニアは、 子供たちが実際の職業を疑似体験できる ユニークなテーマパークである。 コンセプトは「こどもたちの、こどもたちによる、こどもたちの国」で、 楽しみながら社会の仕組みを学ぶ エデュテインメントタウンだ。 エデュテインメントとは エデュケーションとエンターテインメントを 組み合わせた造語である。
医師など、 80種類以上の仕事や習い事が用意されている。 道具からユニフォームまで、臨場感たっぷりだ。 写真は消防士となって火事に挑む子供たちである。
子供の時代を人生の視点で見ると、 それは「原体験」の時期であることが分かる。 原体験とは、 「ある個人の人格形成に関して、 大きな部分を構成する初期体験」のことだ。 それは人間の一生において、 子供のころに集中的に現れる。 その時期に、職業という子供たちの人生にとって いつか現れるものを先行して体験しておくことは、 大きな原体験としてその子の一生に影響を与えるだろう。 未来選択の初期学習である。
企業コンテンツ自体の中にそのCSR性を 内包しているキッザニアは、 21世紀型の新しい企業像ということが言えるだろう。 2008年4月21日 水の茶室、鉄の茶室・・・杉本貴志の世界
空間デザイナーの杉本貴志氏が 「杉本貴志展・・・水の茶室、鉄の茶室」を 開いたので、拝見してきた。 茶室といえば日本文化の象徴であり、 空間設計において、最も完成されたもののひとつだろう。 その茶室を水と鉄という 流れるモチーフと動かぬモチーフで コンセプチュアルに表現して見せたのが 今回の展覧会である。 水も鉄も、世界にすでにある素材であり、 それを編集して見せたところがデザイン編集者、 杉本氏の視線である。 デザイン=コミュニケーションと考える杉本氏の思想が 見事に結実している。 さすがの才というべきだろう。 杉本氏が、日本の美意識で 世界に語りかける第一人者の一人であることを実感した。 同展は5月30日まで乃木坂の「ギャラリー・間」で開かれている。 2008年4月18日 文化の求心力京都御所が春季一般公開されていたので見てきた。 それが求心力になって文化の全体系を維持している。 これが崩れると、文化全体が崩壊していく。 どのような文化にも、必ず中心となる「聖地」があるのだ。 思想的な意味合いで言うのではないが、 やはり京都は1200年来の日本文化の中心地であり、 その京都文化の中心軸は 「京都御所」ということになるだろう。 京都御所は、その昔ながらの 内裏の形を今日に保存している。 現在のものは安政2年(1855年)の造営だという。 紫宸殿(ししんでん)、清涼殿(せいりょうでん)、 建礼門院(けんれいもんいん)、御車寄(おくるまよせ)、 小御所(こごしょ)、御学問所(おがくもんじょ)、 御常御殿(おつねごてん)、左近の桜、右近の橘など、 聞いただけで歴史の一幕を 思い出させるようなゆかしさである。 はるか平安から奈良、飛鳥のころから 続いてきた文化の時に思いを寄せた。
2008年4月17日 ホロン知の挑戦
私は立命館大学大学院経営管理研究科の教授を 勤めさせていただいている。 その第一クオーター(四半期)の授業が始まった。 場所は06年9月に開設された朱雀キャンパスである。 同キャンパスは、 世界と地域に開かれた「知の創造拠点」となるべく、 多彩な高度専門職業人養成大学院と学園本部で構成されている。 今クオーターの学習テーマは「市場創造」である。 大切なことは部分から入って部分のまま帰結しないことだ。 全体から入って部分を分析し、 再度全体へと集合的に戻ったとき、 その全体は最初の全体より大きい。 個別を超えた全体は、個別の総和以上の力を持つということだ。 いわゆるホロン思考である。 ホロンとは哲学者アーサー・ケストラーが提唱した概念で、 ギリシア語で全体を意味するholosに、 部分を意味するon をつけた造語である。 全体を部分に分けて、 部分の原因と結果を追求する還元主義からの脱却は、 21世紀の知の大きな課題だろう。 ホロンは還元主義による閉鎖的な思考を 打開する知として生まれた。 世界には還元主義では解決できない課題が山積している。 ホロン知の大いなる挑戦こそいま求められている。
2008年4月15日 経済同友会第4分科会
今年で60周年になる記念すべき 経済同友会の全国大会が開催された。 私はその第4分科会において議長を仰せつかった。 全体のテーマは「不易流行」、 第4分科会のテーマは 「今、イノベーションの時代」 ~企業経営と地域社会のあり方を考える~である。 パネリストの方々は、 ㈱堀場製作所社長の堀場厚氏、 マツダ㈱専務執行役員・金井誠太氏、 ㈱リコー会長執行役員・桜井正光氏だった。 議論の焦点は人材論となり、 いかにリーダーシップを持ち、 経営と現場を行き来できる人物を 育成できるかが必要だとの結論を得た。 「経営とは、新しい時代に向けて構想を描き、夢を実現すること」 との私のまとめでしめさせていただいた。 今後の世界を変えていくもの、 行政に影響を与えていくものは、 やはり企業の力が大きいだろう。 「世界目線構想力」が必須の時代だ。
写真はゲストとしてお話いただいた田辺聖子さん。 丁々発止、談論の名手オセイドンであった。
2008年4月14日 醍醐の花見
花見の習慣は古くからあったが、 現在のように桜が庶民の花見として主役になったのは、 江戸時代からだといわれている。 古くは桃や梅が花見の対象だったようだ。 ともあれ、桜を愛でる花見が歴史上にはっきりと記されたのは、 豊臣秀吉の「醍醐の花見」からだろう。 慶長3年(1598年)に秀吉が京都の醍醐寺において、 秀頼、北政所、淀殿ら近親者と有力諸大名を集めて 盛大に催した花見である。
その「秀吉もすなる醍醐の花見をわれもすなり」と、 先日私も愛でてきた。 有名な枝垂れ桜やはり見事なもので、 日本人の贅沢とはこういうものかと感じ入った。 気になったことがひとつある。 醍醐寺の境内では写真撮影が禁止されている。 また境内内の案内文も日本語のみ。 外国からますますお客様が来る時代に、 もう少し配慮があっていいのではないだろうか。 世界目線で見ればすぐ分かることなのだが。 2008年4月10日 WAZA GU
京都に新しい文化スペースが誕生した。 「J.KYOTO WAZA GU INTERNATIONAL」 である。会館記念式に出席してきた。 理事長は黒竹節人氏で、年来の友人である。 パンフレットから引用させていただけば、 「京都には、千有余年の昔より育まれてきた 手仕事の系譜があります。 (中略)この京都という土壌を礎にしたWAZA GUは、 感性と想像の拠点として、 また生きた情報の出会いと交流の場として、 さらに生活文化のメッカとして知識を深め、 視野を広め(後略)」とある。 どのような文化も、 継続の知恵と場を持たない限り、ついえてしまう。 文化とは逆説的に、 そのような方法論を持っているものの事を言うだろう。 京都1200年の文化にふさわしい場ができたと思う。 4月8日より1,2階のショップより先行オープンしているそうだ。 黒竹氏のご活躍を祈る。 2008年4月 8日 恩師
仰げば尊しわが師の恩・・・。日本人なら誰でも知っている唱歌だが、 私の中学時代の恩師は、今はなき美術の上田望先生だった。 京都学芸大学付属中学校の先生である。 美術クラブの担当として、私は先生から美術の何たるかを教わった。 先日、先生のご自宅へうかがう機会を得た。 アトリエからリビングまで、家の中は上田先生の展覧会だった。 植物、特に花が先生の好きな素材で、 部屋中に花と野山の絵が所狭しと置かれていた。 その後お墓参りさせていただいたが、 すぐそばに野立て地蔵が並んでいた。 ご存じのとおり、地蔵は子供たちの守り神である。 どこからか先生の声が聞こえるようだった。
「恩師」。 この古くて懐かしい言葉が持つ深い意味を、 もう一度社会は取り戻したいものだ。 2008年4月 7日 イノベーション→リーダーシップ→チームワーク→和
どの経営者に聞いても、 一番重要な経営指針は「イノベーション」だという。 シュンペーターの「創造的破壊」ではないが、 イノベーションなくして進化がないのは、 企業も生物も同じだ。 ではそのイノベーションを成し遂げるにはと聞くと、 答えは「リーダーシップ」である。 引っ張るものがいなくては、イノベーションは進まない。 そのリーダーシップの発揮の仕方に、 変化がおきている。 それは「チームワーク」への再注目だ。 特に日本人は昔からチームワークの名人だった。 「和を以って尊しとなす」は平和時だけではなく、 戦場においても重要な課題だったのである。 全員富士山を仰ぎ見るような「集合個人」と でも言うべき前向きなチームワークが、 これからの日本活性の鍵になるだろう。
2008年4月 2日 「第二の人生」の使い方
私の旧友、龍村豊氏をご紹介する。龍村美術織物の元常務で、このたびコロンビアへ2年間行くことになった。そのためにスペイン語もみっちり勉強したという。先月の24日に旅立った。目的は現地の中小企業の経営指導で、3月30日付の朝日新聞の朝刊にも載っていたが、彼が行くのはJICA(国際協力機構)のシニア海外ボランティアとしてである。新聞には「地球環境に貢献するシゴト」「人生の大切な2年間。きっと世界のために。きっとあなたのために。」とあった。シニア社会は「第二の人生」社会だ。第二の人生をどう使うか、それによってその人の生きてきた価値が決まるだろう。「毎日が日曜日」の暇つぶし人生にするか、それとも誰かのために貢献する「生涯現役人生」を選ぶか。答えは明らかだろう。龍村氏の素晴らしい「第二の人生」を声援したい。 2008年4月 1日 継続、哲学、美学
ただ新しいものを求めて次々と追いかけていた 表層消費の時代は終焉を迎える。 世界のコンセプトはエコロジーとサステナビリティになった。 短期視点のベストセラーから、長期視点のロングセラーへ、 ブランディングの視点も転換する。 ヨーロッパの文化型のブランドが 再び支持されてくる可能性が高い。 これは私たちのライフスタイルも同様で、 日々の消費から継続型の質重視のライフスタイルへと シフトしていくということだ。 そこを基点として、市場の全体が変わっていくのである。 従来の刹那的価値観の岸辺にいると、 この転換は見えない。 これから起こりうる変化も分からないだろう。 歴史の成長過程で、必ず来るべき時代が来たのだ。 生命連鎖とサステナビリティと美意識。 この価値観へとすべては変わっていく。
いずれも自社制作したもので、 弊社のエレベーター前に掲載されている。 目線を世界視点におかないと 正しい判断はできないという 「GLOBAL IMAGINATION /世界目線構想力」と、 足元に自分の財産があるという 「ブルーバードマーケティング」の2点だ。
ポスターとは単なる装飾ではない。 それは自分たちの哲学や美意識を メッセージするためのメディアなのだ。 |