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2008年5月16日 耳の風景、耳の旅
鳥越けい子さんから 『サウンドスケープの詩学~フィールド篇』(春秋社) というご著書をお送りいただいた。 鳥越けい子さんは聖心女子大学文学部教授であり、 私同様、日本デザイン機構の理事としてご懇意いただいている。
日本全国に「音の風景」を訪ねたのが本書だ。 序によれば、 サウンドスケープは「音の世界」を基本としているが、 単に「耳でとらえる音」ではなく、 「全身で感じる音」、「気配」や「雰囲気」をも 含めた世界であるという。 五感であり第六感による世界の感受である。
人間は科学の進歩と引き換えに、ずいぶんと野生を失っただろう。 ほとんど五感の耳を澄ますということも無くなった。 第六感も鈍るはずである。 我が家の犬などを見ていると、 時たま野生に耳を澄ましていると感じる時がある。 人間にとっては聞こえなくても、 彼にとっては重要な情報らしく、 耳を立てて聞き澄ましている。 「我が犬の利耳は何夏木立」虚子、である。
目に頼れば目の風景しか見えない。 音で聞けば、音の風景が見える。 同様に匂いの風景、触覚の風景、味覚の風景などもあるのだろう。 見えざる世界を見えざる感性で察知する。 そのような感性の旅。 今後、大変に重要なテーマだろう。 鳥越けい子さんの感性の旅を応援する。 |