|
2008年6月25日 美とエコロジー
私は式会社アリミノの勉強会「スクランブルクラブ」を 長年にわたって開催させていただいている。 「スクランブルクラブ」とは美容業界の方々の勉強会であり、 言わば日本のヘア&ケア・ビューティのインフラを 形成する人々の集いである。 東京と大阪で隔月で開催されている。 アリミノはご存じの通り、業界最大手の美容剤メーカーだ。
今回は「オークヴィレッジ」の稲本正さんにご講演いただいた。 稲本さんは作家であり、工芸家であり、オークヴィレッジの代表だ。 1974年に「人と自然、道具、暮らしの調和」を求めて、 工芸村「オークヴィレッジ」を設立し、現在に至っている。 エコロジスト、ナチュラリストであり、 森林生態系の大事さを訴える環境保護活動の先駆者だ。
今すべてのジャンルにわたって、エコを避けて通れるジャンルは無い。 エコに貢献しているかどうかが、顧客支持の分かれ目なのだ。 私の情報分析誌「ネクシンク」の中でも、 「エコ・チェンジ」というキーワードで、以下のように解説させていただいている。 ■エコ・チェンジ■
美とエコを両立させることが、21世紀の文化経済社会の大きな課題だろう。 2008年6月23日 コミュニティ・コンテスト
副都心線が誕生した。東京では最近のビッグニュースである。 私もさっそくウォッチングに出かけた。
メディアも池袋・新宿・渋谷の百貨店戦争のような視点で、 大々的に取り上げている。 このような広域の視点もいいが、 実は中間のより小さな駅のほうに、これからの文化的集客力はあるだろう。 事実、12チャンネルの人気番組「アドマチック天国」で 西早稲田駅周辺を取り上げていたが、 横丁、路地、地元の名店などが紹介されていて、 小さなコミュニティのもつ豊かな文化性を伝えていた。 夏目漱石や永井荷風が眠る雑司ヶ谷も、 文学的な散策の場所として、早くも注目を集めている。 三鷹も同様、太宰治ゆかりの地として人気があるそうである。 散歩というよりも「散策」の時代に入ったらしい。
大都市の魅力は、小さなコミュニティの集積によって果たされている。 その多様性と文化差異が、 東京という大都市の魅力のインフラになっているのだ。 京都も同様である。 どちらが便利かというような合理的な視点を超えて、 どちらが魅力的か、なのだ。 この視点を間違えると、 またかつての量のマーケティングに引き戻されてしまう。 より小さくより密度の高いコミュニティの魅力を競い合う時代である。
それを「コミュニティ・コンテスト」と呼んでみた。 競争軸はコミュニティの文化的魅力にある。 人々は歴史文化、自然文化、人間文化を探しに小さな旅をする。
2008年6月19日 Another Japan
JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)の総会が、 大阪天保山のサントリーミュージアムで行われた。 JAGDAは会員数が4000人近くおり、 たぶんこの種の協会では世界一だろう。 総会のテーマは「Another Japan」である。 もうひとつの日本、つまり大阪のことだ。 案内状には「JAGDAだから出会える人がいる。 JAGDAだからできる体験がある。 デザインがつなぐ忘れられない2日間。 大阪はおもしろい、もうひとつの日本!」とあった。
前回のDエイトもそうだが、 デザインの世界に問われているのは未来構想力だ。 単なるギルドを超えて、デザインの意味と本質を問い直し、 ビジョンを持つことが大変重要だ。 世界目線でデザインを考えると言うことである。 21世紀の最大のキーワードのひとつは、 この「デザイン」であることは間違いない。
2008年6月16日 Dエイトの構想力
日本には経済産業省の元にいくつかのデザイン団体があって、 通称「Dエイト」と呼ばれている。 クラフトデザイン協会、ディスプレイデザイン協会、 グラフィックデザイナー協会、 インダストリアルデザイナー協会、 インテリアデザイナー協会などだ。 私はグラフィックデザイナー協会(JAGDA)の創設メンバーの一人であり、 かねがね縦割りを超えて、 日本独自のデザイン構想を打ち立てられないものかと考えていた。 8つのデザイン協会がひとつになって デザイン構想を考えようというのが「Dエイト」だ。 構想とは「デザインミュージアム」である。 デザインは工業化社会の技術デザインを超えて、 コンセプト&アイデアの創出とデザイン構想力の具現化になった。 その全体像を展望する「デザインミュージアム」は、 ぜひともデザイン界の総力を挙げて実現したいと切望している。 2008年6月13日 絵本の力
草月流家元の勅使河原茜さんが絵本を出された。 「はじめての花絵本 あかい はなの ほん」と 「ピンクの はなの ほん」(講談社)である。 2冊同時刊行のようだ。 「あかいはなの ほん」は、文字通りカーネーションからアネモネ、 ばらなど、2ページ見開きでせりふはひとつという シンプルな構成で赤い花を紹介している。 「ピンクの はなの ほん」も同様、全頁、ピンクの花である。
ビジュアルランゲージは、言語差や文化差を越えて、 全人類が理解できる共通のメッセージだ。 絵本はその代表的メディアである。 考えてみれば、生け花も同様のメッセージと見ることもできる。 小さな子供たちへの読み聞かせを意識したらしく、 「これはね アネモネ」といった視覚と合わせてのメッセージとなっている。 大人が見ていても楽しい。 勅使河原茜さんの今後のご活躍をお祈りする。
2008年6月10日 イエス・ウイ・キャン!
我々ならできる。私たちならやれる。 オバマ旋風の核心になった言葉が「イエス・ウイ・キャン!」だった。 「イエス・シー・キャン!」のクリントンを破ったのは、 この心理に突き刺さるメッセージだったろう。
「家元いけばなLIVE~花は心、草月の原点から今へ」を拝見してきた。 写真の女性である。 いけばな界のピカソと呼ばれた勅使河原蒼風氏から数えて 4代目の家元が勅使河原茜さんである。
驚いたのは会場の熱気だった。 地元の弟子たち約50人が中心になって、 このイベントを一気に成功させたという。 号令一下、心がひとつになって動くのが家元制度のいいところである。 「イエス・ウイ・キャン!」の力を感じた。 力をあわせてコトをなす時代である。 バレーボールも男女ともオリンピック出場が決まったが、 バレーボールなども「イエス・ウイ・キャン!」スポーツだろう。 一体化以上に力を発揮するものは無いのだ。
2008年6月 9日 ふろしきの美学
宮井株式会社の宮井宏明氏より 『はじめてのふろしきと手ぬぐい』(主婦の友社)をお送りいただいた。 サブタイトルに 「結ぶ 包む 贈る 楽しむ 基本からアレンジまでぜんぶわかる」とある。
最近ふろしきが注目されつつある。 使うときは包んで、用が終われば一枚の布に戻る。 西洋のカバンは、中が空でもある一定の空間を占めてしまうが、 ふろしきはほとんど「無」に戻る。 「水は方円の器に随(したが)う」というが、ふろしきの場合、「布は方円の器に随う」のだ。 まさに究極の日本の知恵と言えよう。 一枚の布であるからこそのデザインも楽しい。 和のデザインをこれからも普及していただきたい。 2008年6月 5日 ライフスタイルマーケットについて
繊研新聞5月26日号(月)の1面に、 「デザイナブルライフ」というタイトルで、 私のインタビューが掲載された。 なかなかよくまとまっており、 論旨がよく整理されているので、 その紙面をご紹介する。
「モノから暮しの時代へ」 「モノを持つよりもそれをうまく使うことができるかという価値観」 「シンプルでよく整理された家を好む」 「ライフスタイルマーケットは時間単位の市場戦略の組み立て」 などがキーワードになっている。
モノが売れるのではない、 生かされる時(時間)があるから、結果、物が動くのだ。 この辺のところは拙著『時間単位の市場戦略』(講談社)に詳しい。 顧客を支援することはライフスタイル作りを支援すること。 その鍵は「時間」にあるということだ。 2008年6月 3日 眠りの時代来たる
むかし異星人が地球にやってきて、 地球人の生態を調べた。 調査が終わって彼らは母星に帰り、 王様にこう報告した。 「王様、彼らは生涯の3分の1を眠っています!」
長らく忘れられていた市場があった。 「眠りの市場」である。 20世紀は全員起きていた時代で、 眠らず働く時代だったといえよう。 しかし24時間のうち8時間は、 人間眠っているのである。 (猫は14,5時間眠っているらしい) つまり人生の3分の1は、われわれは眠っているのだ。 眠りが人生の質に大きくかかわっているのは当然のことだろう。 眠りをナイス・スリーピングと位置づけ、 人生のための快適時間としてとらえなおす必要がある。 特に高齢社会においては重要な研究テーマだろう。
という著書を送りいただいた。 フロイトの夢分析から眠りを誘う音・光・香りまで、 多彩な眠りアプローチが繰り広げられている。 思わず眠らず読み込んでしまいそうだ。 睡眠文化研究所の今後のご活躍を祈る。
2008年6月 2日 空転する世界
世界には6000兆円もの投機マネーが動いているという。 金が金を追いかけている究極の金融経済だ。 一方で日本の大豆の自給率はわずか5%だという。 大豆といえば、味噌、醤油、納豆など、 日本人の食生活の根幹を成す食材である。 日本にも1500兆円ものマネーが眠っているというが、 大豆はほとんど国内生産していない。 この大いなる矛盾、世界はまさに「空転中」である。 人間の生活の基本は「自立すること」だ。 無ければ無いように暮らしていくのが、 本当の生活の知恵である。
顧客第一主義とは、顧客の自立を応援することであり、 消費を煽ることではない。 世界に実質経済を取り戻す必要がある。 |