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2008年11月27日 都市の神話
渋谷のマークシティと駅をつなぐ通路の壁面に、 巨大な壁画が現れた。 岡本太郎の『明日の神話』である。 縦5.5メートル、横30メートルの巨大壁画だ。 圧倒される。 ピカソの『ゲルニカ』に触発されて描いたということだが、 「芸術は爆発だ!」と叫んだ 彼のクリエイティブ・コンセプトがよく分かる。 エネルギーがみなぎり、 彼が持つ激しい喜怒哀楽が爆発している。 巨大なものは常に耳目をひきつける。 動物園の象から大海を泳ぐ鯨、 エンパイアステートビルから自由の女神まで、 大きいということはそれ自体がエネルギーなのだ。 巨大なものを受け入れる劇場、それが都市だ。 都市に新しい神話が生まれた。
2008年11月17日 美はセンスに極まる
新装大橋の会長、大橋英士氏よりご案内をいただいて、 撫松庵のプレミアムレーベル「撫松」の 発表展示会を拝見させていただいた。 大変センスの良い作品群に驚いた。 まさにクリエーターであり、イノベーターの作品である。 大橋氏は一方でミュージシャンでもあり、 感性というものは五感の総合表現であることが感じられた。
川島織物セルコン、龍村美術織物などとのコラボレーションである。 伝統と革新が「今」という焦点に見事に結ばれている。 美は最終的に、人のセンスに掛かっていると言える。
京都では12月1日、2日と、京都の撫松庵で行われる。 その時は、私もカメラマンとともに 再度拝見したいと思っている。 私は現在、京都コンセプトブックを編集しているので、 その中に掲載できたらと思っている。 ちなみに「撫松庵」とは、 京都嵐山の渡月橋のたもとにある茶室であるという。 橋の脇に一本の松があり、嵐山から出た月が、 あたかも松の木を撫でて茶室に入るように見えることから、 「松を撫でる庵」という意味で、「撫松庵」と呼ばれているそうだ。 この庵には多くの文化人が出入りし、 入り口には北大路魯山人の扁額が掛かっている。 「撫松」のロゴがそれである。
大橋英士氏です 2008年11月13日 アンフォルメルな美
第90回草月いけばな展『花笑み』が 日本橋高島屋で行われた。私も見させていただいた。
高島屋のショルダーは「"変わらない"のに、あたらしい」である。 草月のいけばなは「変わり続けて、変わらない」だろうか。 クリエイティブコンセプトがしっかりしているから、 どう変化しても根本は変わらない。
アンフォルメルな美しさだろう。 アンフォルメルとは、一言で言えば「非定型の美」である。 左右対称を否定し、美は美しくも傾(かし)いでいる。 安定と安住を拒否している。 そこに草月のいけばなの本質があるような気がする。 アンデパンダン、アバンギャルドの美がそこにあるのだ。 草月よ、独立と前衛の道を歩め、である。 2008年11月10日 エクアンケンジ・リーダーシップ
国際文化会館のアイハウス会員懇談会が主宰する懇談会に、 榮久庵憲司氏が講演されるというので、 私も出席させていただいた。
榮久庵氏はご存じの通り、 日本を代表されるインダストリアル・デザイナーである。 日本デザイン機構の創設者の1人であるが、 私もそのとき趣旨に賛同して参加させていただいた。 現在は同機構の会長で、理事長は水野誠一氏である。 榮久庵氏のデザインコンセプトで有名なのは、 かの幕の内弁当のデザイン論である。 幕の内弁当のデザインコンセプトは、 田の字の組み合わせからなる構成だが、 日本デザインの本質を小型の組み合わせと見たわけである。 キッコーマンの醤油挿しも有名だ。 いずれも「小」「引き算」を基本とする東洋哲学が根本にあろう。 デザインはソリューションであることを十分に熟知した 榮久庵氏のデザインは、日本デザイン界のリーダーシップと言える。
2008年11月 7日 偶然は必然
先日寿司屋さんで偶然に児玉勝彦さんに出会った。 児玉さんは美容業界のナンバーワン誌『新美容』の元編集長で、 最近独立されて「髪書房」という出版社を興されたという。 店長、経営者、美容スタイリストが中心読者の『月刊BOB』と、 美容学生から美容室アシスタントが読者対象の『月刊Ocappa』を 発刊している。写真がそれで、後日郵送いただいた。
世の中に偶然はない。すべて必然だと言うのが私の考え方だ。 別に運命論者ではないが、すべては 目に見えない必然の糸で編まれていると思っている。 だからこそ、どんな出会いも大切にしたい。
児玉さんまたどこかで"必然に"会いましょう。
2008年11月 6日 未来のこども絵本大賞2008
華頂短期大学が主宰する第2回「未来のこども絵本大賞2008」の 大賞受賞作が決まった。 川之上英子さんの「となりのばあさま」である。 仲の良かった2人のばあさまが、 山菜取りでおおゲンカしてしまって、 しゃもじやおたま、果てはじいさんまで投げあうという 日本昔話風の絵本である。 ダイナミックな場面展開、 ほのぼのいきいきした文のリズムが マッチしてとても楽しい作品だ。
今回は260の応募作品が集まった。 発表の場を作るということは、大変大切なことである。 興味とテーマが時代の中から新しい才能を発掘し、 それを発表することがまた次の才能を発掘する。 これは料理から小説まで、 あらゆるジャンルにおいて言えることだ。
絵本は人々のイマジネーションを喚起する 最大のメディアだと言っていいだろう。 審査員は児童文学作家の今江祥智さん、 女優でエッセイストの中井貴惠さん、 作家の椎名誠さん、 絵本作家のどいかやさん、それに私である。
世界は「未来のこども」たちのためにある。
大賞受賞作「となりのばあさま」
2008年11月 4日 バスストップ・ガーデン
私が乗る停留所の前には、いつも花が咲いている。 花屋さんがそばにあって、小さな花壇を作って、 バスを待つ人の目を楽しませてくれているのだ。 私はバスストップガーデンと名づけて、 ひそかに感謝している。
自然が生んだものの中で、 花は大変不思議なもののひとつだろう。 なぜ花はあんなにも美しい色で彩られているのだろうか。 何よりも、なぜ私たちは花を美しいと感じるのだろうか。
ソクラテスの想起説によれば、真・善・美は、 すでに生まれてくる前から私たちの心の中にあり、 それが真・善・美を感じさせるものに出会うと、 自然に想起されるのだという。 人間は、真・善・美とともに生まれてくるのだ。 花はそのことを世界中で私たちに知らせてくれている。 |