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2009年2月23日 『動的平衡』
『生物と無生物の間』(講談社現代新書)で 知的旋風を巻き起こした福岡伸一氏の新著 『動的平衡』(木楽舎)を 『ソトコト』編集長の小黒一三氏よりいただいた。
生命という人間存在の究極的謎を、 分子生物学の視座から追いかけ続ける福岡氏の論議は 大変スリリングで知的である。 動的平衡とは、一言で言えば、 "変化し続ける動的な流れの中で一定の平衡状態を保ち続ける" ということである。 つまり生命そのものだ。
私たち人間は約50兆の細胞からなり、 それらの細胞は常に入れ替わり続けている。 このような無限の動的な細胞変化の流れの中にあっても、 私は「わたし」という一定の平衡状態を保ち続けているのだ。
万物すべてにおのおの神が宿り、 自然全体がひとつの調和体としての神様だという概念である。 まさに自然は「動的平衡」として存在し続けているのだとも言える。 全体とは部分の集合を超えた何かだという指摘があるが、 自然と宇宙は、八百万の神々の動的平衡体であるとも言えるだろう。 一歩飛躍すれば、現代はまさに色即是空、空即是色、 「ある」と「ない」との境なき動的平衡体としての 高度情報社会といえるかもしれない。
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