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谷口正和 プロフィール

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2009年5月29日

マイナスのデザイン

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従来、デザインは足していく方向に強化されてきた。しかしこれからは「引くデザイン」である。特に東京におけるデザイン過剰は、トータルなデザイン視点なきままに、カオスといえば聞こえがいいが、要は混乱しているのである。
ところで電線と電柱がある世界都市は、東京とムンバイだけだと聞いた。デザイン過剰都市からマイナス・デザイン都市へ移行するとき、電柱をなくし、電線を地中に埋めることも重要だ。これだけでどれだけ景観が変わるかは、横浜の中華街を見ればわかる。都市デザインの最低ガイドラインとして、電柱と電線を地上から消したい。
私が所属する日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)でも、過剰なデザインから反転するために、「マイナスのデザイン」運動を起こそうとしている。日本文化が本来的に持っている、余白、縮小、小型などの美意識は、マイナスのデザインそのものだといえるだろう。

2009年5月26日

パロディ×リパロディ

 


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ビートたけし氏と所ジョージ氏が、なんとも痛快な本を出した。

『FAMOSO』という雑誌で、ファモーソと読む。

スペイン語で「有名な」という意味らしい。

コンテンツは、明らかにあの写真週刊誌「フォーカス」のパロディである。

全編,事実は一切ない。

広告までパロディ化してある。

しかしここではたと考えさせられるのは、

事実とはなんだろうか、ということである。

今我々が事実だと思っているものは、

すべてメディアを通して届けられたものである。

すべて「メディアの編集」が入っているのだ。

その「メディアの編集」にもう一枚編集のフィルターを

かけたのが、このパロディというものだろう。

表の裏の裏は表、またその裏も表。

虚実皮膜、事実は常にアンビバレンツ。

ニュースのリニュース化、フィクションのリフィクション化。

たけしのリたけし化、所のリ所化。

一見バカバカしいようで、情報の時代の鋭いところをついている。


もうひとつ、人を喜ばせるならなんでもやってみようじゃないか、

金も使ってみようじゃないかというジャーナリズム精神もまたすごい。

大変共感し、また満足もした。

要は「オモシロイ」のである。

オモシロイということは、

必ず何重もの情報のフィルターがかけられていることだとあらためて思った。

 

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2009年5月19日

知名度のチカラ

 


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情報の時代において、知名度以上チカラを発揮するものはないだろう。

特にテレビにおいて顔も名前も知られていること以上のパワーはない。

知事選などで十分以上に証明済みである。

この有名であること、知名度をポジティブにとらえ、

社会に貢献していくことは、情報の時代の新しい波である。

 


私の鴨沂(おうき)高校の先輩である山本富士子さんが

日本橋三越で開催されている「文化人・芸能人の多才な美術展」に
出されているので、私も馳せ参じようと思っている(5月24日まで)。

知名度とはメディア税といってもよい。

有名であること、注目されていることを社会の力に変え、

大いに美意識やご意見を発信していただきたいものだ。

有名人は何においても名優、役者である必要がある。

2009年5月15日

ある古本との再会。

 


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先日、京都の古本市へ行ってきた。

京都勧業会館(みやこめっせ)で行われた

第27回春の古書大即売会である。

そこでむかし買いそびれた一冊の本に出会った。

寿岳章子さんの『京都 町なかの暮らし』(草思社)である。

寿岳さんの淡々と京都の日常を語る文章も素晴らしいが、

挿絵がまたいい。

沢田重隆さんという画家で、私もその優れた画筆を敬愛する一人である。

 

発行社の草思社も、また因縁浅からぬ、である。

20年以上前に詩人の長谷川 龍生氏にご紹介頂き、

装丁、広告などをやらせていただいた。

社長の加瀬政男氏に可愛がって頂き、

当時マザーグース、チープシック、韓国小説を読むなど、

何冊かの装丁もさせていただいた。

草思社は装丁者を大切にする会社で、

著者と並列して装丁者を奥付に載せてくれた。

 

一冊の本がいろいろなつながりを思い出させてくれた。

本はまさに知のネットワークである。

 

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以下はいくつか私が装丁させていただいた本である。

表紙は私のイラストである。

 

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2009年5月 7日

DESIGN FOR CHILDREN

 

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デザインとは何か。

直感力に優れた子どものころに、

その本質を学習しておくことは大変大切だろう。

私も所属する日本デザイン機構が編集し、

鳥越けい子氏(青山学院大学総合文化政策学部准教授)、

佐藤展司氏(立命館大学経営学部環境デザインインスティチュート教授)、

南條あゆみ氏(GKデザイン機構)、

イラストレーターのカワキタカズヒロ氏らが中心となって、

『くらしとデザインの本 第3巻「これからのデザイン」』(岩崎書店)が刊行された。

子どもたちに向けて、

「これからのデザインの役割とそのあり方について、いっしょに考えていきましょう!」

とメッセージを送っている。

考えることと経験すること、

その中からデザインとは何かを掴み取っていこうという本だ。

書店などで見かけたら、ぜひ手にとっていただきたい。


 

2009年5月 1日

遊びをせんとや

 


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時代の価値観が経済から文化へシフトしてくると、

時代を引っ張るものは「遊び」になる。

文化とは煎じ詰めれば「遊び」であり、

極論すれば「無駄なもの」だ。

ヨーロッパ貴族文化のピークにモーツアルトが現れたり、

江戸の文化文政期に数百万人規模の伊勢参りが起こったりしたのも、

遊びの文化が頂点に達した結果である。

ともに最後の爛熟期であるところが、

文化の何たるかを示していて面白い。

果実は熟して落下する寸前が一番甘いのである。

 


さてゴールデンウィークも後半、

いよいよ各地で盛大に祭が行われる。

警察庁の調べによると、GWおでかけ人数は前年比554万人増だそうだ。

トータル 7050万人見込みである。

青森の「弘前さくらまつり」220万人、

福岡の「博多どんたく港まつり」220万人、

長野の「善光寺御開帳」200万人、

広島の「ひろしまフラワーフェスティバル」160万人予想である。

 

「どんたく」はご存じの通り、オランダ語で

「日曜日」を表す語Zondag(ゾンターク)が訛った言葉である。

毎日がゴールデンウィークのシニアの増大も、

遊びの時代に拍車をかける。

文化の花はいよいよ開き始めた。

 

全員「遊びをせんとや生まれけん」である。


 

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