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2009年11月13日 死と生を越えて。
近年、静かに注目されつつある学問に「死生学」がある。 thanatology(タナトロジー)である。 エロスとタナトスという概念があるが、 前者は生への欲動、後者は死への同意である。 まさにいかに生きるかは、いかに死ぬかと一体、 タナトロジーの時代が来たといえるだろう。 死と対決する生ではなく、生と融合する死。 そう言ってもいいかもしれない。
一条真也氏は、冠婚葬祭業大手の社長である。 ただし職業だから生死を深く考えるのではなく、 氏の本質に、そのような哲学的洞察への深い関心があるのだろうと思う。 今回の著書『涙は世界で一番小さな海 ~幸福と死を考える、大人の童話の読み方』(三五館)は、 この生死の本質を、4つの童話から導き出そうとしている。 『人魚姫』『マッチ売りの少女』『銀河鉄道の夜』『星の王子さま』である。 氏はこの4冊の著者、アンデルセン、メーテルリンク、宮沢賢治、 サン=テクジュペリを「4大聖人」と位置づけている。 確かにファンタジーやメルヘンが持つ普遍的な力は、 ある意味「もう一つの宗教」とも言えるものであり、 神話や古代伝説を見ればそれがよく分かる。 心の時代にさらに大きな影響を持つに違いない。 コンセプトもストーリーも、メルヘン、ファンタジーで語る時代である。 |