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2011年7月28日 日本「再創造」。
日本の「知」をダイナミックにリードする小宮山宏氏より、 『日本「再創造」~プラチナ社会の実現に向けて』 (東洋経済新報社)をお送りいただいた。 氏の論ずるところは、 日本が抱えている問題は世界が解決すべき課題であり、 その意味で日本は課題先進国であるということである。 その課題は大きく三つあり、 1.有限の地球、2.高齢化する社会、3.爆発する知識であるという。 そのいずれもが人類が歴史上、初めて遭遇する地球規模の課題であり、 この3つの課題解決に日本は率先して取り組み、 世界のリーダーになるべきというのが、氏の論旨だ。 まさに日本「再創造」=世界「再創造」。 氏の構想力に敬意を表したい。 2011年7月27日 祇園祭りに思う。
今年も祇園祭の宵山に行ってきた。 祇園祭はおよそ1200年続く、京都を代表する祭りである。
創業は実に江戸初期の元和元年(1615年)。 現当主の細辻伊兵衛氏で十四代続く京都の老舗木綿織商である。 永楽とは、あの永楽銭のことで、屋号からして歴史を感じさせよう。
歴史の特性のひとつは、その継続性である。 歴史があるものが長く続くのではなく、長く続いたものが歴史になるのだ。 京都という街自体が今後さらに輝きを増すであろうことは、 一日一日が歴史の積み重ねになっていくからだ。
その歴史をつむぎだすもの、それは「人」である。 祇園祭りを見ている私も、また歴史の一部である。 私もあなたとも、歴史の担い手の1人なのだ。
2011年7月22日 「和」を以って。
和のライフスタイル誌である。 この『買いもの七緒』は、七緒の別冊ムックとして発行されている 「一冊丸ごと買える」通販誌である。 本誌を編集した鈴木康子さんに、 過日、十日町のきものサミットでお会いした。 私も『日本へ回帰する時代』(繊研新聞社)という 本を書かせていただいたが、時代は日本文化回帰である。 日本文化の持つ洗練、知恵は、私たち日本人の最大の財産だ。 「和」は「輪」に通じ、日本文化の特質そのものの言葉である。 「和を以って尊しとなす」は、今こそ世界に発信できるメッセージだ。 なでしこジャパンの勝因も、まさに「和を以って尊しとなす」である。 和の心を世界に広げることは、21世紀の日本の大切な役割だろう。 2011年7月15日 光と未来。
世界的照明デザイナーの石井幹子さんから、 新著『光が照らす未来~照明デザインの仕事』 (岩波ジュニア新書)をお送りいただいた。 照明デザインと照明デザイナーの仕事を分かりやすく解説している。 発行元が岩波ジュニア新書であることを見ても、 子供たちを含めた多くの人々に、 照明デザインの世界を知らしめたいという意志があるのだろう。 照明デザインの世界は、幻想的で優美、 インパクトが強く、まさに光と影のデザインである。 主に都市の夜をデザインするのが主流であるが、 これからは自然を照明デザインすることが 大きな分野になってくるに違いない。 ライトアップを超えて、自然の生命力を 引き出すデザインが求められてこよう。 石井幹子さんの活躍の場は無限である。 2011年7月14日 ビジット・デザイニング・アース。
21世紀は観光の時代である。 観光は平和産業の代表であり、 各国の固有の文化をお互いに理解しあう最大のエンジンだ。 亜細亜大学教授の小林天心氏より、 『観光学キーワード』(有斐閣双書)という好著をお送りいただいた。 東大教授の山下晋司氏がまとめ役で、 観光学のエキスパートがキーワードを解説している。 工業の貿易から文化の貿易へ、地球のパラダイムは転換しつつある。 観光は地球をひとつの文化圏にしていくだろう。 訪問に値する価値の創造=ビジット・デザイニングこそ、最重要課題である。 2011年7月11日 EDOが未来。
どのような未来が来るのだろうか。 20世紀の科学を主体とした未来観は、 科学信仰による、言わば鉄腕アトムの世界である。 科学の力によって都市は空中都市になり、 テクノロジーの粋を集めた高層都市が林立し、 人々はロボットにかしずかれ、 科学が人間の幸福を100%保証する未来だった。 時間は直線的に未来に向かって矢のように走っていくのである。
しかしエコロジーの論議から始まった未来観は、 この論議に終止符を打ったように私は思う。 時間は循環するのであり、 だからこそ、過去が未来になるのだ。
江戸時代は、私たち日本人が歴史の中で 体験してきた最高モデルとしての3R社会だった。 まさに物も知恵も循環して終わりなく引き継がれていき、 そこにはムダに対する「もったいない」の思想があった。 風鈴、うちわ、打ち水、浴衣、縁台、行水といった、 自然再生エネルギーの活用が、日常の生活の中に取り込まれていた。
電気という巨大エネルギー源の開発によって、 私たちは自然の知恵を忘れてしまった。 自然は人間が自由にコントロールできる対象物になってしまった。
今こそ江戸時代の知恵を取り戻す時ではないだろうか。 当社が主宰している「江戸美学研究会」の 江戸帖の2012年版が8月に販売開始予定だ。 2011年版も、おかげさまで好評をいただいた。 今回もカバーは竺仙(ちくせん)さんの浴衣の柄を使わせていただいている。 EDOが未来。歴史その方向に向かっている。 2011年7月 7日 詩人の魂。
財界人の文芸誌『ほほづゑ』夏号を、 堤清二氏よりお送りいただいた。
人の心には、いつも若く命ある詩人が眠っているという。 詩人の魂を持っていない人はいないのだろう。
堤清二氏は辻井喬という名前で、 小説、詩などを数多く発表されている。 堤氏の中に眠っている若く命ある詩人が、時に声を放つのだろう。 巻頭の「ひまわり」という詩を読むと、そのことが深く実感される。 2011年7月 4日 空間と世界観。
私の長年の友人である岩倉榮利氏のブランド、 ロックストーンが創立30周年を迎えた。 家具や建築というものは不思議なもので、 結果的に創造しているのは、「空間」である。 3次元のクリエイションなのだ。 岩倉氏の創作する家具には、氏独特の空間観がある。 それが即、氏の「世界観」を伝えている。 結局、絵画も彫刻も写真も映画も、 およそアートと言われるものが最後に伝えるのは、 創作者の「世界観」に違いない。 そしてこの美意識そのものの「世界観」が、 最終的に価値の分岐点になる感性の時代が来たと言える。
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