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谷口正和 プロフィール

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2016年10月31日

『古都』

川端康成の『古都』が映画化された。

11月26日に京都で先行公開され、12月3日より全国ロードショーが始まる。京都はその1000年に渡る伝承の内側に築かれた繋ぎ手の連鎖がある。

 

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過去と未来の狭間にいる当事者の心意気。

伝承者としての悩みと葛藤。

そこに命運をかけて生きるということをテーマにした川端文学の名作のその後という視点で描かれている。

京都の美しい風景と伝統の下に織りなされる物語、楽しみである。

2016年10月24日

『だいじょうぶ。』

今野由梨さんは女性ベンチャーの中で最も先んじて行動をされた一人だ。『だいじょうぶ。』(ダイヤモンド社 税別1300円)は、その生き方の気づきをまとめられた人生のヒントブックである。

 

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情報社会における相談解決の項目を明確に整理されて、ダイヤルサービスという事業会社を創業された今野さん。

日本初、育児相談の電話サービスはその波及事業という点においても多彩な可能性を持っている。

社会挑戦を繰り返しつつここまで来られたが、様々なことにコミットして失敗も成功もあり、その全てに意味があったのだという実感を体験者ならではの視点で語られている。

自分自身の存在が、時代の教訓を引き受けているということに気付き、不運を恨んだりなどのネガティブな感情は未熟さの結果に過ぎない。むしろ、受けた恩は倍にして返すなどの認識の提示が素晴らしい。

生き方そのものの中で何をもって歩むべきかという力強い信念が込められたエッセイ集である。

2016年10月19日

『創造する未来』

ファッション・ビジネスは今大きな分岐点にある。旧マーケットに見切りをつけ、新たなライフスタイルを生活者自身が要求しているという事実に早くから気づかれていた尾原蓉子氏。

彼女が『創造する未来』(繊研新聞社 税別2000円)を出版されたのでご紹介する。

 

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尾原氏は68年に『ファッション・ビジネスの世界』を翻訳され、日本に初めて「ファッション・ビジネス」という言葉を紹介された。

今、ファッションは単なる流行を追うものではなく自己表現の中軸としてライフスタイルそのものになるべく転換期を迎えている。

そのビジネス化に人生を掛け、変革への情熱を込めて生きる喜びそのものをファッションに注入された尾原氏の生き方に共感する。

2016年10月14日

価値創造と再生に向けて

旅化する社会(ライフデザインブックス 税別2000円)というタイトルで新たな書籍を上梓した。

 

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情報社会の生活者研究に長く携わり、生活者の心象や行動モデルを観察対象にしてきた。その流れの中で確固とした軸足を求め、明らかにしたのが、今回の視点である。

注目に値するニュースの興味と関心をエンジンとし、人は行動を変える。この速度と回数が引きあがっているのが旅化する社会の構造である。

近所ではなく、より遠いところに美味しいレストランがあればそちらに行く。スイスに名医がいれば訪れたり、日本の大学ではなく海外の教授に学びたければ留学をする。

これらの選択肢のバーがフラットになり、情報の公開と発見が高速になっている。場所を移動し、自らの価値創造の担い手として手を挙げなさいというのが、未来へ向かって自由に「旅立つ社会」の展望だ。

企業も、都市も、ものもサービスも、そのようなシナリオにおいて旧業態からの生まれ変わりを図る時が来ている。

全ての項目が動態化している社会の持っているエネルギーと活力を、期待値の中で語り合い、不安だけに視点を置いていた世論から次のステージへ。そのような睨みどころをまとめてお届けする。

2016年10月12日

LIFE DESIGN JOURNAL Vol.9

マーケティングとデザインの領域で、我々の行動と足跡を公開したカンパニーフリーマガジン『ライフデザインジャーナルvol.9』を発行した。

 

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コンセプトにインテグレートする価値統合の流れを踏まえながら、旧概念への依存から脱却し、今までに無かった長寿社会をどのように生ききるかを冒頭特集にしています。

対談いただいた東京大学 高齢社会総合研究機構特任教授の秋山弘子先生は、日本戦後の高齢者研究でパイオニアとして歩まれてきた方。

そこに軸足を置きながら、積極果敢に生涯現役の流れを顕在化させる。当社でも長寿社会の価値付けをメニュー化してきた。

今日のマーケティングと考えるデザインのリポートでもあり、ごらんいただければ幸いである。ご興味のある方は弊社代表番号(03-5457-3033)までご連絡を。

2016年10月 4日

マーガレット・ハウエルの「家」

今日注目に値する価値を形成しているのは、人はどのように生き、暮し、感性と思考、生活哲学に対する足跡を残したかという問いかけである。

一人ひとりが想いを高めて、社会貢献もにらんで自らの人生経営を実践していく時代とも言える。

これからは創造的挑戦に対する熱い意識が、生き方経営における最大の資産であり、セルフスタイリングが共感として広がる市場を形成する。

そして生活物語の主人公としてのビジュアルインタビューブック『マーガレット・ハウエルの「家」』(集英社 税込1728円)が出版された。

 

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マーガレット・ハウエルは非常に人気のあるクリエイターだが、単なるファッションブランドではなく彼女のライフスタイルそのものの公開と提供ということがショップを成立させている。

ロンドンで生まれ、都市のリバーサイドで育った彼女の思想と着想は時代と併走しており、自然と共生する暮しの中から色んなものを感受し、生活におけるライフデザインコレクターとして活躍している。展開されている店舗は自らの名前を冠し、ギャラリーのようだ。

洋服だけを売るのではなく、ライティングや空気感に至る細部にまで張り巡らされた生活感覚が支持されている。無人称の企業のように拝金主義的な拡大はせず、彼女自身のエイジングと重なった経営。

ロンドンというインターナショナルシティに育った一人のクリエイターの生き様としての一冊をここにご紹介する。

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